続々・言葉で伝えにくいものの正体(メカAG)
今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
続々・言葉で伝えにくいものの正体(メカAG)
人間は同時にできることとできないことがある。テレビを見ながら食事することは楽勝だ。テレビを見ながら本を読むというのも可能。子供の頃テレビを見ながらマンガを読みながら食事をして、親に怒られたものだ。どれか一つにしなさい!と。
さすがに最近は脳の働きが衰えてきて、テレビと本を同時に見るのは辛い。テレビを消さないと本に集中できなくなってしまった。子供の頃は簡単だったんだけどね…。
テレビや本を見ながら会話することもごく普通だろう。込み入った話は集中しないとできないし、ついうわの空になってしまうこともあるが、基本的には両方同時に出来る。
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ところがチャットと会話は同時にできないんだよね。チャットで会話しつつ他の人間と音声で会話するというのは非常に難しい。この場合の同時というのは本当に同時。手はキーボードを打ちながら口も同時に動かす。キーボードを打ち終わって会話をし、またキーボードを打つなら簡単。
インプットは複数でもアウトプットはひとつしかできないのだろうか。でもプログラムのコーディングなら複雑なものでなければ会話しながら可能だ。ゲームのキャラの操作も可能。食事だって会話しながら手を動かしてるわけだし。
人は言語化する作業は1つしかできないのだろうか。プログラムのコーディングは脳の中では言語化に入らないのか。あるいは使用する脳の記憶領域の問題だろうか。確かに人間と会話する場合、かなり全面的に脳を動かしているように思う。
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それは相手をシミュレートし、その差分を会話で伝えようとするからかもしれない。それまで自分が相手に喋ったことを覚えていなければならない。自分の思考のみならず他人の思考もシミュレートしなければならないとなると、脳にとってはかなりの負荷だ。
プログラミングのコーディングはこのシミュレート作業がいらないか、極めて原始的なのだろう。確かに人間の思考をシミュレートするのに比べれば、自分が書いているプログラムの動作をシミュレートする負担は軽い。その意味ではプログラミングもしょせんは「運動」の部類に属するのかもしれない。
「人間同士の会話」と「食事」と「プログラミング」をペアにすると、「食事」と「プログラミング」が近い関係になるわけだ(笑)。もちろん本当に複雑なアルゴリズムを考える時はまた別だ。この場合ほとんどの作業をやめて思考に集中しないとならない。
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逆に言えば人間は人間同士の「雑談」のために、必死にアルゴリズムを考えている時に匹敵するほど、脳を使ってるのかもしれない。アルゴリズムを考える時の方が難しいのは単なる慣れの問題だろうか。雑談は子供の頃からやってるし。
よく雑談の中からアイディアがひらめくというが、雑談自体が、自覚がないだけで、脳をかなり酷使しているのかも。雑談の気楽さでアルゴリズムを考えられるようになりたいものだ(笑)。雑談の場合、話題がコロコロ変わる点と、相手がいるので負荷分散になっている可能性が、一人で黙々とアルゴリズムを考える場合ほど、表面的には疲れを感じない理由だろうか。
これがメールなど文章の場合、話題が特定の者に限定される。とりあえず自分一人で全部考えなければならない、という点が、アルゴリズムを考える作業に、より近いように思う。リアルタイムの会話、もしくはリアルタイムのチャットと、メールなどの文書作成では後者の方が脳にとって負担を感じるのも、同じような理由かもしれない。
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このあたりにリアルの会話とメールなどネット越しでのテキストのやりとりのギャップを埋めるヒントがあるような気がする。すなわちメールなどではそれぞれの人間の脳内に相手をシミュレートする回路を設けなければならない。
Aの脳内にはBをシミュレートする回路b。
Bの脳内にはAをシミュレートする回路a。
つまり
(A+b) <-データ授受-> (a+B)
これが直接の会話だと密結合になり互いに相手のシミュレータを省略できる。
(A) <-データ授受-> (B)
これがメールよりも会話の方が楽な理由。会話の冒頭では互いの知識をすり合わせる必要があるが、それが終わってしまえばシミュレータ抜きでやりとりできる。
シミュレータが必要なのはレスポンスがかえってくるまでの時間が長いからだ。紙の手紙はもちろんのこと、電子メールでさえ送信してから返事が帰ってくるまで一定の時間がかかる。会話やチャットなら(twitterとかでも)、この時間はゼロに近くなる。
関連記事:
「続・言葉で伝えにくいものの正体」 2014年04月11日 『ガジェット通信』
https://getnews.jp/archives/548559
執筆:この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2014年04月09日時点のものです。
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