日本で優秀な人が海外で無能と呼ばれる理由
今回は谷本真由美(May_Roma)さんのブログ『英語虎の穴』からご寄稿いただきました。
日本で優秀な人が海外で無能と呼ばれる理由
ワタクシは海外で働き始めてしばらくの間は日本の人が優秀だと思っていました。なにせお店では腐った物は売っていない、バスや電車は時間通り、遅刻はしない、言った事はやってくれる。アメリカでインターンしていた頃はそれはすべて正反対。イタリアで働き始めた頃は本当に最悪で、物は届かないわ、ビザの書類は無くなってるわ(そう、役所が書類を無くすの)で「ありえねえ!!!」と毎日叫んでいたのでした。
しかしですね、数ヶ月して「日本人優秀」の確信はボコボコと崩れ落ちて行きました。今は怠惰で仕事が嫌いな人ばかりのイギリスにおりますけども、やっぱり「日本人=優秀」に関しては懐疑的です。
まず、日本人の優秀さが発揮されるのは、いわれた事や決まっている事を、命令通りにやる場合ですね。極めて真面目に遂行する。これ管理者だと物凄く助かります。しかも細かいところにも目を配ってやってくれる。安心です。物は盗まないし手抜きもしない。本当に真面目です。その点では極めて優秀です。多分世界一レベル。日本人が参謀とか将軍になったら師にますが、兵隊としては優秀だということがよくわかりますね。
ところが、臨機応変な対応にはことごとく弱い。例えば、お店でお客さんが「アレルギーがあるからこれを取り除いて欲しい」といった場合。対応してくれる店員さんはもの凄く少ない。「マニュアルで決まっているので。。。」と繰り返すばかり。別に料金ごまかすとかそういう話じゃないんです。取り除くだけ。でもダメ。なぜなら、自分の頭で考えて「ここまでなら平気だしロジカルだ」って考えないから。経営者的には従順だから助かりますけど、これってどうなの?ですよね。
一方、命令に従うのが嫌いで、怠惰で適当な人々が多いイタリアはちょっと違う。あそこは杓子定規とは反対。ある時イタリアのLCC(激安航空会社)に乗った時に、チケッティングシステムがぶっ壊れたのですが、なんとカウンターにいた人々は「おらよ!」とチケットをその辺の紙に殴り書きして「良かったね(ハート)」とウインクして我々を乗せてくれたのでした。席は適当に選べ、人数が大体あってればいいべ、というノリです。まあ、飛行機というのはバスみたいなもんだから、こんな感じでいいのかもしれないですね。席は座れりゃいいわけだし。
日本でも全く同じ場面に遭遇した事がありましたが、係員の方は「上の者にきかないとちょっと」と繰り返すばかりでいつ乗れるのか分からずじまいでした。お客さん的にどっちが嬉しいかと言ったら、時々遅延したり飛ばない事もあるけど、こういう緊急時にウインクしながら臨機応変に対応してくる会社の方が、なんだか人間的でいいじゃないですか。
ワタクシが、イタリアでひどい目にあっても、絶対にイタリアを嫌いになれない理由がこれ。人が人間的で臨機応変。対応が人ぞれぞれで面白いわけですよ。腹はたつんだけど。でも、色々起こった方が面白いじゃないですか。どうせ普段の生活なんて、劇的なこともドラマもなくてつまんないんだから。
創造性が必要な場面では、日本人の従順さや、上の人に逆らわない、杓子定規にやる、というキャラクターがマイナスの方向に作用します。
例えばワタクシの知り合いのあるイギリス人営業マンは、時間にはルーズだわ、出勤態度は悪いわ、勝手に自宅勤務にするわと、これ日本だったら問題児として人事部に通報されるレベルで、多分上司とも大げんかになります。
ところが、この人、他人が考えつかない仕組みを考えだして、超大型契約をゲットしてきます。上司のいう事なんか聞かないし、同僚の意見と違うとバンバン反論。でも結果だすから周りは「ま、いんじゃね。結果がいいしさ。あいつ面白いよね。すげー優秀だわ」といっております。
同じ組織にいる日本人は、時間は正確、物はなくさない、上司には従順なんだけど、でかい契約は取ってこない。突拍子もないことを言うわけでもないし、提案も平凡。ホームランゼロ。真面目だけど周囲からの評価はサイアクです。この人、日本では超有名大学を出た人で、日本では超優秀で通っていたのに、全く違う評価軸の社会にきたら「最低最悪のダメな奴」という烙印を押されてしまうわけです。
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神奈川県生まれ。ITベンチャー、コンサルティングファーム、国連専門機関情報通信官などを経てロンドン在住。
専門分野はITサービス管理、プロセス改善、 ITガバナンス、通信業界市場調査。
著作:
『ノマドと社畜』(朝日出版社)
(http://www.amazon.co.jp/gp/product/4255007055)
『日本が世界一貧しい国である件について』(祥伝社)
(http://www.amazon.co.jp/gp/product/4396614519)
『日本に殺されず幸せに生きる方法』(あさ出版)
(http://www.amazon.co.jp/gp/product/4860636074)
『キャリアポルノは人生の無駄だ』(朝日新聞出版)
(http://www.amazon.co.jp/gp/product/4022735082)
海外居住経験、職業経験に基づく深い知見をもとに、@May_Romaとして舌鋒鋭いツイートで好評を博する。
Twitter:@May_Roma
メルマガ:「週刊めいろま」 http://magazine.livedoor.com/magazine/80
ウェブ連載:ケイクス (Cakes) https://cakes.mu/r/rFdl
ウェブ連載: ロンドン電波事情 http://wirelesswire.jp/london_wave/
ブログ:英語虎の穴 http://eigotoranoana.blog57.fc2.com/blog-entry-80.html
CNN English Express: 「London Calling ――イギリス英語に耳をすませば」http://ee.asahipress.com/eeclub/mm.html
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執筆: この記事は谷本真由美(May_Roma)さんのブログ『英語虎の穴』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2014年01月27日時点のものです。
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