解説・ヒッグス粒子とは
今回はNHK科学文化部のブログ『NHK「かぶん」ブログ』から転載させていただきました。
※この記事は2013年10月08日に書かれたものです。
解説・ヒッグス粒子とは
ヒッグス粒子は、宇宙空間すべてを満たしている素粒子として、1964年にイギリスの物理学者ピーター・ヒッグス氏や、ベルギーの物理学者フランソワ・アングレール氏らが存在を予言しました。
もし、ヒッグス粒子が存在しなければ、私たちを含め、宇宙を構成するすべてのものが生まれないことになるため、「神の粒子」とも呼ばれています。
ヒッグス粒子が担っている最も大きな役割は、宇宙のすべての物質に「質量」、つまり「重さ」を与えることです。
およそ138億年前、宇宙が誕生したビッグバンの大爆発によって生み出された大量の素粒子は、当初、質量が無かったため、高速で自由に飛び回っていました。
ところが、その後、ヒッグス粒子が宇宙空間をぎっしりと満たしたため、素粒子はヒッグス粒子とぶつかることで次第に動きが鈍くなり、物質が構成されていったというわけです。
ヒッグス粒子にぶつかることで動きが鈍くなる、この「動きにくさ」が、物質の質量そのものだと考えられています。
ヒッグス粒子は私たちの身の回りも含め、どこにでも存在していると考えられていますが、見つけ出すのは簡単ではありませんでした。
私たちの宇宙は、1960年代以降まとめられた現代物理学の標準理論で、17の素粒子から成り立っていると予言されました。
このうち、物質を形づくる「クォーク」や「レプトン」など16については、20世紀のうちに存在が確認されましたが、最後の1つ、ヒッグス粒子だけが今世紀になっても見つかっていませんでした。
その理由は、ヒッグス粒子は非常に小さく、空間にぎっしりと密集しているため、見つけ出すには、宇宙が生まれたときと同じような大きなエネルギーを使って空間から取り出す必要があったからです。
このため、CERN=ヨーロッパ合同原子核研究機関は1周が27キロある巨大な「加速器」と呼ばれる実験装置を建設し、人類史上、最大のエネルギーで、原子を構成する陽子どうしを衝突させ、宇宙の誕生直後を再現する実験を5年前に始めました。
衝突させる陽子は光と同じぐらいの速さまで加速して、生まれた無数の粒子の中に、ヒッグス粒子が無いか探しました。
その結果、日米欧などの国際的な研究グループは、去年7月、新しい粒子を発見し、その後、ヒッグス粒子であることが分かりました。
この発見によって現代物理学の標準理論が予言した17の素粒子がすべて発見されたことになり、今後、ヒッグス粒子の性質を詳しく調べることで、宇宙の成り立ちの解明につながる研究がより一層、進展すると期待されています。
執筆: この記事はNHK科学文化部のブログ『NHK「かぶん」ブログ』からご転載いただきました。
転載記事は2013年10月22日時点のものです。
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