ゴミ屋敷に埋もれて見えない「ある病気」
物が捨てられない、家の中を片付けてもいつの間にかゴミ屋敷のようになってしまう…。
本人は、自分がズボラなせいで家が散らかっているのだと思っているかもしれませんが、実は、こういう人たちは「強迫性障害」という精神疾患を抱えている可能性が高いのです。
ゴミ屋敷の住人は、強迫性障害の一種「収集癖」と考えられます。好きなアーティストのグッズを集めて満足するなどしている程度なら心配ありませんが、「物を集める」という行動に支配されて日常生活に支障をきたす例は少なくありません。
『やめたいのに、やめられない』(岡嶋美代、原井宏明/著、マキノ出版/刊)には、「収集癖」のこんな困った事例が紹介されています。
「あとで後悔するかも」とものを捨てられない人や、「今手に入れないと二度とめぐり合えない」と必要のないものまで買ってしまう人は要注意です。
■重度の収集癖で入院、2トン以上のものを溜めこんだ主婦
早坂幸代さん(40歳・仮名)は、子どもに手がかからなくなったことをきっかけに、育児休暇を終えて仕事に復帰しました。
働き始めたことで家計的に楽になった早坂さんは、買い物が趣味になっていきます。デパートでセールをやっていれば仕事帰りに立ち寄って、洋服などを買うようになり、どんどん買物の回数は増えていきました。
そうこうしているうちに、家のクローゼットは洋服であふれかえるように。夫に怒られてひとまずデパート通いはなくなりましたが、洋服を集められなくなった早坂さんはおかしな方向転換を遂げます。
お菓子やパンの袋などに書いてある日付の数字などを見て、「111111」といった珍しい並びのものを集めるようになったのです。たとえそれがゴミ箱の中にあっても、道に落ちていたものでもお構いなしに持ち帰るようになりました。そればかりではなく、「これは今手に入れておかないと二度とめぐり合えない」と思ったものは何でも持ち帰るようになってしまったのです。こうなっては、とうぜん家の中はものでいっぱいになります。生活する場がないほど荒れ果てた家にたまりかねた夫が精神科を受診させ、しばらく入院することになりました。
その間、家の中に溜めこんだものを処分したところ、2トントラックで2回運ぶほどの量だったといいます。
そして、早坂さんの収集癖は入院しても収まりませんでした。給湯室のゴミ箱から食べかすを拾ってきたり、汚物入れから使用済みの生理用ナプキンを拾ってきては、ベッドに備え付けの棚に詰め込んでいました。その理由は「経血のシミの形が完璧なシンメトリー(左右対称)で、二度とめぐり合えないと思った」というもの。
万事こんな調子ですから、早坂さんの入院生活は長く続いたそうです。
早坂さんのケースも含め、「収集癖」は「今手にいれなければ一生後悔するかもしれない」という思いに駆り立てられるようにして起こります。そういう意味では「収集癖」とは「後悔恐怖」だと言えるのかもしれません。
本書には「収集癖」だけでなく様々な強迫性障害の事例と特徴が挙げられています。
治療のためにはメンタルクリニックに行くというのも一つの方法ですが、80%の人に有効な動療法は自宅で行うこともできます。自分や身近な人の行動に“おかしいな”と感じている人は、本書に掲載されている行動療法「エクスポージャーと儀式妨害」を実践してみてください。
(新刊JP編集部)
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