それでも謎多きうなぎ

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それでも謎多きうなぎ

今回は鹿野 司さんのブログ『くねくね科学探検日記』からご寄稿いただきました。

それでも謎多きうなぎ

こちらの記事は、
「暗雲立ちこめるうな丼の未来」 2013年08月16日 『ガジェット通信』
https://getnews.jp/archives/398800

「サバ食文化が維持できてるのはヨーロッパの規制のおかげ」 2013年08月17日 『ガジェット通信』
https://getnews.jp/archives/398818

の続きとしてご覧ください。

うな丼の未来シンポジウムでは、勝川さんに続いて東京海洋大学の田中英次さんによる「ウナギの資源評価」という公演があった。

これがちょっとビックリするような内容だったんだよね。

田中さんは、うなぎの資源量を、今得られるデータをもとに統計的シミュレーションを行って推定した結果を発表しているんだけど、それによると、うなぎの資源量はあまり減っておらず、漁獲が少なくなっているのは漁業者が高齢化して減っているからではないかというものだった。

さらに、うなぎのしらすは死亡率が非常に高いので、採ってきていけすでほとんどを成魚にして、ほんの一部を海に帰せば理論的には資源は枯渇しないという事も述べていた。

でも、それよりも驚いたのは、シンポジウムの司会者が、こういううなぎの資源のことで数値計算するような研究ははじめてではないかと思いますが……と言ったことだった。我々の持っていた感触とは全く違っていて、この齟齬というのはどうしてでてくるのかと感想を言っていたんだけど。

その後の議論を聞いていて解ったのは、まず第一に、日本では漁業の資源量の調査が、各地域の漁協の許可を得なければできなかったり、熱心な研究者の個人的な努力で短期間だけデータがあったりと言う感じで、あまり組織だってできていないことがあるらしい。

この点も、ヨーロッパではかなりしっかり資源量を把握できる体制が作られていて、日本の研究者が羨ましがっていた。

こういうのって、おそらく日本人の中に、魚は野生動物で、野生動物を現代のテクノロジーで食べていけば簡単に絶滅に追い込めるって感覚がとぼしいからなんだろう。きっちり資源量の調査をして管理をしないと、枯渇してしまうという危機感があまりないので、調査をしやすくする制度もなければ、予算も付きにくいってことがあるみたい。

つまり、根拠となるデータにあまりいいものがないので、シミュレーション結果が多くの専門家の実感と解離するのかも知れない。

もうひとつ、養殖に関しては、いけすで飼って成魚になったうなぎを、海に放して行動を観察する研究をしているひとが、いけすで育ったうなぎは、海に帰すとすぐに死んでしまうと言っていた。

どうもいけすで飼っているうちに、うな丼に適した個体だけが選別されて、野生環境に適した個体は淘汰されてしまうようだ。

まあ、オレの感触では、うなぎのシラスは減っていないというシミュレーション結果があるとしても、やっぱり規制は必要だろうとは思う。

うなぎは養殖はされているけれど、卵からの完全な養殖ではなくて、シラスを捕ってきて大きくしているだけだから、実質的には資源量がよくわからない野生動物を採っているだけだからね。

まあ、うなぎを末永く食べていくためには、うなぎはまた昭和の昔のハレの日の食べ物という位置づけに戻さなくてはならないだろうけど、それもまあしょうがないんじゃないかなあ。

執筆: この記事は鹿野 司さんのブログ『くねくね科学探検日記』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年08月16日時点のものです。

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