GPS、本人同意なしで活用へ。期待できる効果と懸念点

GPSを活用しやすくすることで災害時の迅速な人命救助に期待

GPS、本人同意なしで活用へ。期待できる効果と懸念点

総務省は、災害時の遭難救助や犯罪捜査に携帯電話のGPS(衛星利用測位システム)による情報を活用しやすくするため、「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」を改正する方針を決めたようです。

これまでのガイドラインでは、遭難などで救助を要する者の発見のために保有する携帯電話のGPS位置情報を利用する場合は、警察や消防などの公的機関がGPS探索の要請し、「携帯電話利用者本人の同意がある」「裁判官の発付した令状がある」「その他の違法性阻却事由がある」のいずれかで、通信事業者は位置情報を提供できるとされていました。今後は、公的機関の要請があれば、本人の同意や裁判官の発布した令状がなくてもGPS探索を行えるように改定しようというものです

GPS位置情報は、基地局に係る位置情報(携帯電話がどの基地局のエリア内に所在するかという、通話や電子メールの通信を成立させるために最低限必要な情報)に比べて精密です。したがって、GPS位置情報を災害などの緊急時に警察や消防などが活用できれば、より迅速かつ実効的な人命救助が行われることが期待できます。

プライバシー性の高いGPS位置情報が悪用されないための対策は必要
しかし、懸念点もあります。ある人がどこに所在するかということは極めてプライバシー性の高い情報と考えられ、これが不適切に取得・提供されると、回復困難な被害が生じてしまいかねません。例えば、妻にDV行為を行っている夫が、逃げた妻の所在を把握するために、警察等に対して虚偽の申告をし、そのGPS位置情報を取得してしまうケースや、債権回収業者が行方不明の債務者の所在を把握するために虚偽の救助要請をするといったことが想定されます。GPS位置情報の取得・提供が許容される条件は慎重に検討されるべきでしょう。

ただ、生命または身体への危険が切迫しているなど、GPS位置情報の取得によって保護しようとする利益が、プライバシー保護の利益を明らかに上回るといえる場面で、かつ、救助を要する者の発見のためにGPS位置情報を取得することが不可欠という状況下では、本人の同意が得られないとしても推定的同意を得られると考えることには十分な合理性があります。よって、今回のガイドラインの改定は法的に妥当と考えられます。

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