“伝える”から“伝わる”へ。654作品が集結「Visual EXPO」で見えた映像表現の現在地

近年は誰もが動画を発信できるようになった一方、企業やブランドにとっては「どうすれば見てもらえるのか」「どうすれば心に残るのか」が、これまで以上に問われる時代になった。
そんな映像コミュニケーションの現在地を探る「Visual EXPO by BRANDED SHORTS 2026」が9月28日、29日の2日間、東京・赤坂で初開催された。
29日には、国内外のブランデッドムービーを審査した5人によるトークセッションとアワードセレモニーを実施。世界各国から集まった654作品の中から、「Branded Shorts of the Year」をはじめとする各賞の受賞作・受賞者が発表された。
11年目の「BRANDED SHORTS」が新たなステージへ

「Visual EXPO by BRANDED SHORTS」の母体となる「BRANDED SHORTS」は、国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)」と連動し、企業やブランドによるブランディング映像を紹介・表彰してきた。
11年目となる2026年、これまで培ってきた知見を発展させ、「Visual EXPO by BRANDED SHORTS」へと拡張。作品を表彰するだけでなく、クリエイティブやテクノロジー、ビジネスなど、異なる領域の人々が映像について語り合う場として新たなスタートを切った。

エグゼクティブプロデューサーの別所哲也さんも、映画・映像業界だけにとどまらず、さまざまな事業者が映像コミュニケーションについて議論し、出会える場所を目指してVisual EXPOを立ち上げたと語った。
「伝えた」と「伝わった」は違う 審査員が語る映像の変化

アワード発表に先立つトークセッションには、審査委員長の樋口景一さんをはじめ、天野千尋さん、大槻 timo 光明さん、宮田裕章さん、吉兼啓介さんが登壇した。
議論の中で見えてきたのは、企業が自らを大きく見せるのではなく、見る人の日常に寄り添う表現への変化だ。
樋口さんは、以前は競合と比較しながら自社の立ち位置を示す作品も多かった一方、近年は企業が「自分たちらしさ」に立ち返る作品が増えていると分析。さらに、企業が「すごい組織」として振る舞うよりも、「素敵な隣人」のような存在としてメッセージを届ける方向へ変わってきたと指摘した。

こうした変化には、スマートフォンで映像を見ることが当たり前になったことも関係しているようだ。大きなテーマを一方的に掲げるのではなく、見る人の感覚に寄り添いながら、どう心に残すのかが重要になる。
樋口さんが強調したのは、「伝えたと思うこと」と「伝わること」の間には大きな開きがあるという点だ。企業側が言いたいことを詰め込むのではなく、受け手のリアリティから考える。映像があふれる時代だからこそ、その視点がより重要になっている。
654作品から選ばれた2つの「Branded Shorts of the Year」

アワードセレモニーでは、654作品のうち25作品がノミネートされた「Branded Shorts of the Year」の受賞作が発表された。
インターナショナル部門は、Check Your Breast Todayの『触ってみて』。ナショナル部門には、公益社団法人Marriage For All Japanの『誰も悪くないのにね』が選ばれた。

『誰も悪くないのにね』は、同性カップルの結婚をテーマに、全国から寄せられた当事者のエピソードをもとに制作された作品だ。
樋口さんは、強い主張を相手にぶつけるのではなく、隣の人からそのまた隣の人へと「波紋」のように広がっていく伝え方を評価。さらに本作については、乳がんの触診を啓発するテーマを、「触れること」そのものへの意識へと広げた点に触れた。

両作品に共通していたのは、社会的なテーマそのものではなく、「これまでにない視点から価値をどう届けるか」という部分だった。
観光、採用、ライブへ広がるブランディング映像

会場ではこのほか、「第15回観光映像大賞 観光庁長官賞」に福島県の『ふくふくの地図』、「HR Best Short Award」には株式会社ティアの『最後のありがとう 鬼の目にも涙』が選ばれた。

さらに、話題賞を受賞したのはSEKAI NO OWARIの15周年ドームツアー「THE CINEMA」。楽曲に合わせて制作したショートフィルムを巨大スクリーンで上映し、生演奏や照明、ステージ演出と融合させたプロジェクトだ。
ショートフィルムの映像監督とライブ全体の総合演出を担当した池田大さんは、映像を単なる背景にはせず、一つひとつに企画とストーリーを持たせる一方、観客が「映像を見せられている」と感じない構成を意識したと明かした。
企業広告だけでなく、観光や採用、ライブ体験まで。映像が「ブランドを伝える」領域は大きく広がっている。
映像があふれる今だからこそ問われる「どう伝わるか」

クロージングで別所さんは、スマートフォンを持つ誰もがクリエイターになった時代に触れながら、映像があふれているからこそ、何が未来に残り、今という時代を映し出すのかを考える場が必要だと語った。
映像を作り、発信すること自体は以前より身近になった。だからこそ重要になるのは、「何を伝えたいか」だけではなく、その先にいる相手へ「どう伝わるか」まで考えることだ。
初開催となったVisual EXPOは、映像が身近になった今だからこそ問われる、コミュニケーションのあり方を改めて考えさせる場となった。
SHORTSHORTS公式サイト:https://shortshorts.org/
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