ニワトリ主役の異色ヒューマンドラマ『雌鶏』公開! パールフィ・ジョルジ監督インタビュー「観た後あれこれ話し合ってくれるような作品になっていればうれしい」
アカデミー賞国際長編映画賞のハンガリー代表としての経歴を誇り、国内外の映画祭で数々の賞を受賞してきたハンガリーの鬼才パールフィ・ジョルジ監督が描く異色のヒューマンドラマ、映画『雌鶏』が公開に。
搬送中に逃走した1羽の雌鶏(めんどり)の旅を通して、人間の尽きない欲望や社会の理不尽さと共にユーモラスに描出。CGI や特殊効果に頼ることなく、8羽の雌鶏の実演による撮影を敢行!
世界的に著名な動物トレーナーアルパード・ハラシュの指導のもと、CGI や特殊効果に頼ることのない実写であることから、その高い芸術性と独特な作家性で世界の映画ファンを唸らせた本作が、いよいよ全国で公開!
なぜニワトリが主人公なのか、ジョルジ監督にお話を聞きました!
●ニワトリが主役という前代未聞の着想のヒントは、何がきっかけだったのでしょうか?
このことは作家でも監督でも脚本家にも当てはまることだけれど、どんな創造物のアイデアも徐々に膨らんでいくものなので、完成するまでに小さなアイデアがあちこちに転がっているような感じなんです。
わたしの場合は、着想はまず“構造”からくるんです。ある物語にしようと思いついた段階で脚本の執筆が始まりますが、今回は雌鶏のハッピーで面白可笑しい成長物語がある一方で、人間のギリシャ悲劇的で政治的な問題を描くという対比的な構造が思い浮かんだんです。
そこで老人とニワトリをメインに、老人が経営するレストランを舞台とした、政治的・社会的なメッセージを込めた作品にしようとなりました。
●もともとギリシャ悲劇的な物語に関心があったのですか?
そうじゃないんです。チキンと人間の物語にしようとまず思いついて、その後プロデューサーがギリシャで撮影しようと言ったので、それならギリシャ悲劇仕立てにしようということになったんです。
●動物を登場させることで人間の滑稽さが浮かび上がる効果があるかと思いますが、それも狙いのひとつでしたか?
そうですね。そもそも人間も動物であり、エコシステム内で共存しているものだということがあると思いますが、狙いはおっしゃるように他者視点で人間の諸問題を描くことにあります。もちろん僕は人間側だし、映画を観に行くのも人間なのですが、人間の問題をたとえばニワトリから、豚の視点から描くことで、ありのままの人間の姿が浮きたってくるんです。
それは言葉が介在しないからなんです。言葉をかぶせると、ありのままの姿を歪曲させることになるので、そうじゃないところから照射していきたいんです。
●そしてニワトリの“演技力”もすごい! そう見えるということなのですが、映画的に成立することを知っていて“起用”したのですか?
そう思います(笑)。鳥たちは美しいパフォーマーだと僕も思っています。彼らはなんのためにこれをやっているかは分かってないけれども、“演技”をしてくれたら、食べものをあげたり、なでたり、ご褒美をあげました。でも何が素晴らしいかって、今この瞬間を生きていることが素晴らしいんですよね。僕らが捉えたいものは、そういうところなんです。
だから人間の俳優よりもそういうことを望むわけで、今を生き、この瞬間をただただ生きてほしいと。そしてその感情のドキュメンタリーを僕たちは撮っていきたいと思っているんです。
何かのフリでは、オーディエンスにも僕たち監督にもフェイクに感じられるので、その点、ニワトリは優れています。これは、子どもたちもそうだと思います。今この瞬間を生きている存在だから。なので、ニワトリも子どもたちも、カメラに真実を提供できる存在だと思っています。それが僕の好きな芝居なんです。
●今後、描きたいテーマはありますか?
創造性を枯渇させたくないので、いつも前作とは違うものを作っていこうとこれまでも作品を作ってきました。いろいろなアイデアはこれからもありまして、ひとつ考えているのは他者の視点から人間を描くことはブレないのですが、今度は人間不在の、動物さえ不在の、モノを中心に据えた映画はどうかなと思っていて、それもまた人間の多くを語ると思うんです。
なぜなら、道具などは人間が作ったものですから、人間が何のためにそれを作り、どのようにして使って、何のために使うのかなどを語りながら、人間の姿を炙り出していくという、そういうことを考えていく。ちょっとした実験的なものになるのかなと思いますが、願わくば長編になるといいなと思っているところです。
また今回の公開が上手くいけば、動物トリロジーもいいなと思っていて、ひとつ書き上げているものに、インドを舞台に猿と人間が共存している脚本も書いています。あとは資金集めがどうなるかというところです。
●日本の映画ファンの方たちにこの作品をどう受け取ってほしいですか?
気に入ってくれるとうれしいですし、エンジョイしていただきたいですし、観た後にあれこれ話し合ってくれるような作品になっていればうれしいです。チキン映画ではありますが、メッセージを掲げている映画でもありまして、それを受け取って、何がしかの対話につなげることができればと思います。
それは人間のありようであったり、これからの人間はどのような判断を下していくのかであったり、です。人間がその一部であるエコシステムについて、何か考えが浮かんでくれればと思っています。
■公式サイト:https://hark3.com/mendori/ [リンク]
■ストーリー
養鶏場で生まれ育った1羽の雌鶏が、出荷用トラックから脱走!
人生初の自由を手に入れた彼女は、刺激と危険に満ちた世界を走り抜け、ワケあり一家が暮らす家へと辿り着く。
庭に建つニワトリ小屋で新生活を送るなか、初恋を知り、初めて産んだ卵を温め育てようと決意する。ところが大切な卵は毎日人間に回収されてしまう過酷な現実に直面。
人生とは? 生きるとは? 雌鶏は我が子がヒヨコになる日を夢見る一方、飼い主一家はとある事件に巻き込まれる。そこには両者にとって思いがけない運命が待ち受けていた―。
■作品概要
監督:パールフィ・ジョルジ
脚本:パールフィ・ジョルジ、ルットカイ・ジョーフィア プロデューサー:タナシス・カラタノス
出演:雌鳥(エスティ、サンディ、フェリ、エンチ、エティ、エニクー、ノーラ、アネット)、ヤニス・コキアスメノス、マリア・ディアコパナヨトゥ、アルギリス・パンダザラス
2025年/ギリシャ・ドイツ・ハンガリー/96分/ギリシャ語、英語/5.1ch/カラー
日本語字幕:石田淳子 映倫:G区分 配給:ハーク 配給協力:フリック
©2025 Pallas Film-Twenty Twenty Vision-View Master Films-ZDF
9月25日(金)より、シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
(執筆者: ときたたかし)
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