生成AIの活用が広がる一方、中小企業では、AIを導入していても業務の自動化まで進んでいない企業が多い。こうしたなか、株式会社クラウドワークスは、企業とAI技術者・専門家をつなぐマッチングサービス「AIクラウドワークス」の提供を開始。中小企業におけるAI活用の現状や導入事例を紹介する発表会を開催した。
中小企業のAI活用、8割が「チャットどまり」 導入を阻む課題とは?
クラウドワークスが576社の中小企業を対象に実施した調査では、AIを利用している企業は全体の約6割。しかし、そのうち8割は個人での活用やチャット利用にとどまっており、多くの企業がAIを業務に実装する段階には至っていないことが明らかになった。
発表会では、慶應義塾大学総合政策学部准教授の清水たくみ氏を交え、中小企業のAI活用の現状や課題について株式会社クラウドワークス 執行役員 AIクラウドワークス責任者 九鬼隆剛氏によるクロストークを実施。清水氏は、2025年の総務省の調査でも業務でAIを活用している割合は55%程度である一方、アメリカ、ドイツ、中国では9割を超えていることに触れ、日本のAI活用が海外に比べて遅れている現状を紹介した。
では、AIの導入や実装を阻む要因は何なのか。クラウドワークスの調査では、AIを導入していない企業の8割弱が「費用対効果がわからない」と回答。すでにAIを利用している企業でも、「セキュリティ対応」や「AIに詳しい推進リーダーの欠如」が障壁として挙げられた。なかでも推進リーダーの不足は、AIの導入状況にかかわらず共通する課題となっている。
実際に、AI推進者が十分に足りていると回答した中小企業はわずか11.1%。さらに、AIを業務システムに連携する段階になると、自社人材で対応できる企業は2割程度にとどまり、その理由として「時間がない」「そもそも人材がいない」が上位に挙げられた。
AIへの関心や利用が広がる一方、チャットでの利用から業務への実装に進むための人材をどう確保するかが、中小企業にとって大きな課題となっている。こうしたAI実装における人材不足を背景に誕生したのが、「AIクラウドワークス」である。
企業とAI人材をつなぐマッチングサービス「AIクラウドワークス」
「AIクラウドワークス」は、AIを活用したい企業と、AIエンジニアや各分野の専門知識を持つ人材をつなぐマッチングサービスである。サービス開始前には1万人を超えるAI人材が事前登録。33業界・17領域に対応し、5万円から2,000万円規模まで、企業の課題やニーズに応じた案件を依頼できる。
同サービスでは、具体的に何をAI化すればよいかわからない企業から、実現したいことはあるものの導入方法がわからない企業まで、AI活用に関する相談に対応。実際に企業と話をするなかでは、「そこまでできるんですね」「こういうことできるんですね」といった声も多く、九鬼氏は、まずAIでできることを知ってもらい、活用への気づきを生み出すことも重要だと語った。
一方、AIの導入・実装に必要な専門人材は数が少なく、大企業でも採用が難しいほどで、中小企業が自社で確保するのはさらにハードルが高い。加えて、中小企業では一人の従業員が複数の役割を担うケースも多く、AI推進のための人材を新たに配置することも容易ではないという。
そこで九鬼氏は、自社ですべてを抱え込むのではなく、専門性が必要な実装部分には外部人材を活用することが現実的だと説明。導入後の運用は自社で担うことでAI活用のノウハウを蓄積し、次にAI化できる業務の着想につなげていくという考えを示した。
AI導入で業務はどう変わる?具体的な活用事例と成果
発表会では、「AIクラウドワークス」を活用した具体的な事例も紹介された。
建築資材の小売会社では、従来の電話やFAXによる受注をLINEに集約。AIが注文内容を過去の受注実績や在庫情報と照合し、資材や金額を算出して見積書を作成する仕組みを構築した。最終的に人が内容を確認して顧客へ送付することで、受注業務全体の工数を20%削減したという。
また、複数の集客用サイトを運営する外壁塗装会社では、アクセス解析から記事ネタの提案、記事作成、投稿までの一連の流れをAIで自動化。担当者による最終確認を挟みながら、週10時間以上かかっていたブログ運営業務を約2時間まで短縮した。
さらに、マンションの修繕計画を手がける建設設計事務所では、約2カ月を要する計画更新業務のうち、特に工数のかかる修繕履歴情報の入力と概算工事費内訳書への転記をAI化。2つの業務にかかる期間を約15日から2日まで短縮した。
こうした事例を踏まえ、九鬼氏は「AIクラウドワークス」を通じてAI活用の効果をわかりやすく発信し、より多くの中小企業の生産性向上につなげていきたいと展望を語った。
一方、清水氏は、AI導入の成果は作業時間の削減だけで捉えるものではないと指摘。削減によって生まれた時間を別の業務に充てられたか、新たなビジネスや顧客開拓につながったか、さらに従業員満足度や離職率、収益性への影響など、複数の段階で成果を捉えていくことが重要だと語った。
また、今後のAI活用については、技術が進化するスピードに比べ、人や組織、社会が変化するスピードは遅いと説明。技術と組織、人材をどのように結びつけながら変化していくかが、今後の企業経営における重要なテーマになるとの見方を示した。
AI時代だからこそ「人材」が必要に
AI活用による業務効率化が期待される一方、その実現にはAIを導入・実装するための人材が欠かせない。
発表会の最後に、株式会社クラウドワークス 代表取締役社長兼CEOの吉田浩一郎氏は、これまでAIの普及によって「人がいらなくなる」と考えられてきた一方、すでに事業を展開している企業がAI活用を進めるためには、むしろAI人材が必要になると強調。「AIクラウドワークス」を通じて、企業にAI人材を提供するプラットフォームを構築していく考えを示した。
さらに、AI時代には会社のあり方も変化していくとし、人が集まり、協力して物事を成し遂げる場としての会社の役割が、改めて意味を持つのではないかと語った。最後は「AIならクラウドワークス」を掲げ、AI時代の人材プラットフォームを目指していくとして発表会を締めくくった