ハードボイルドでやわらかい冒険的ロードムービー『チャオヤングの墓』こんにち博士監督&端栞里インタビュー

今大きな注目を集めている演劇集団「南極」の劇作家、こんにち博士による初監督映画『チャオヤングの墓』が9月18日より公開中です。

島にやってきた分類学者、テレビマン、中学生と、その弟が“墓”をめぐる、ハードボイルドでやわらかい新時代の冒険映画! 斬新でなぜかキュンとするストーリー、独特の映像美とキュートな美術や衣装が魅力的な本作。監督のこんにち博士さんと比野光役の端栞里さんにお話を伺いました!

【あらすじ】自然史博物館で働く分類学者の荒須賀南港(あらすか・みなと)は、ひょんなことから中学生の比野光(ひのひかり)とその弟・比野ぼんべとともに南に浮かぶ卵池島(らんちとう)へとやってきた。テレビマンの川田鱚太(かわた・きすた)も加わり、出会ったばかりの4人は、古いレンタル車に乗って軽快に出発する。光の目的は伝説のカウボーイ、チャオ・ヤングの墓を見つけること。卵池島には名を馳せたスターだけが埋葬されている墓地があり、そこにチャオ・ヤングの墓もあると光は信じている。化石ハンターの三兄弟に追われ、もぐらレストランが出現し、謎の博士に遭遇するうち冒険は混迷を極めていく。存在するかどうかもわからない墓をさがす中、島は夜になり朝になり、4人は、どこに、向かうのか。

──本作とても楽しく拝見いたしました!監督の初映画作品ということで、とてもセリフまわしが心地良くて面白いなと思ったのですが、劇団での戯曲と同じ様に作られていったのでしょうか。

こんにち博士:ありがとうございます。言葉の感じは割といつも劇団で書いているのに近いです。劇でやる時はもっと物語自体というか、設定もぶっ飛んでいることが多くて。今回映画を作る際に、予算も設定もあまりぶっ飛びすぎているといけないなと設定や物語のバランスを考えました。
演劇だと決まった“画”を舞台上で仕上げていくイメージが自分にはあるのですが、映画では「止まらずに常に動き続けている物語にしたいな」という前提がありました。それをどういう形でやるのがいいのだろうと考えながら、最終的にこの物語に着地したのですが、タイトルが最初に浮かんだので『チャオ・ヤングの墓』という映画を作ろう、冒険の物語にしようという2点で進んでいった感じです。

──タイトルすごいな!と思っていたので、まさか先行だったとは驚きました。

端栞里:基本いつもそうですね。演劇でもタイトルだけ最初にもらうことが多いです。

──舞台上のセットで演じるのと、ロケで撮影することでも違いますよね。

こんにち博士:演劇を作っていると「映画って色々な手法があるよな」と思うのですが、実際に映画を作るとなると、脚本に出てくるものをちゃんとカメラの中で表現しなきゃいけないんだな、現実に無いものは撮れないのだなと分かって、それが初めての経験だったから新鮮だったんです。

初稿を書いた時は「日本の島」が舞台であるけれど、まだロケ地が決まっていなくて、機会にめぐまれて九州の長島という場所で撮影することになったのですが、そこから脚本を長島舞台で書き換えて。この良いロケーションが見つかったことで映画が完成出来たので、本当にありがたいです。

──端さんは「南極」の俳優としても活動されていますが、今回映画でこんにち博士監督とご一緒していかがでしたか?

端栞里:本当にお互い探り探りというか、初めてのことだらけだったのですが、お芝居だけはいつも通りにやりました。私は映像のお仕事の経験がほとんど無いので常にパニックではあったのですが、お芝居については事前にやれることがたくさんあったので。こんにちに「俺がどれだけ忙しそうにしていても、答えるから聞いてね」と言われていたので、どんどん質問していました。

こんにち博士:芝居はめちゃくちゃ練習しました。大場さん、山脇さん、端さん、(井田)よと君で頻繁に集まって稽古させてもらったり、都度他のキャストの皆さんにも来てもらって、しっかり芝居を作った状態で島に上陸しました。
なので、実際に島に行ってからの方が、常に何かの判断を瞬時にしていかなきゃいけなくて大変でしたね。撮影期間が一週間しか無かったので、そんなに多くはないですが天候などの予期せぬトラブルもあったりして。瞬時に判断していく必要があったことは勉強になりました。

──外ロケは思い通りにいかないものですよね。

こんにち博士:ちょうど去年の今頃、9月に撮影していたのですが、とにかく暑くて常に汗、汗って感じで。キャストの皆さんは大変だったと思いますが、それで“ドライブ感”も出たと思います。山脇さん演じる川田は常にドタバタしているキャラでもありますし、光と川田が口論するシーンなんかは、本当に汗が飛び散っていて、それがとても印象に残っています。

──にんじん料理のレストランなど、撮影現場の可愛さもたまらなかったです。

端栞里:看板は私が作りました!

こんにち博士:南極からはキャストとして4名が出ているのですが、みんな俳優と裏方を兼ねてやりました。端栞里は映画の公式SNSも担当してくれています。

──キャラクターも皆さん愛らしいですが、端さんはご自身が演じた光にどの様な魅力を感じましたか?

端栞里:光、最高ですよね。愛らしいなと思います。常に怒っているのか、不機嫌なのか、という感じかと思いきや、実際はそんなことは無いという。中学生という年齢の持つ力もあるやろうし、“魂”がすごく魅力的なキャラクターだなと思います。その魂の可愛らしい部分を芝居で出したいなと思いました。

こんにち博士:「カウボーイになりたい」、しかも「理由無く、なりたい」という所がギリギリ成立するのはギリギリ中学生までかなと思って、この設定にしました。

──「学芸さんを利用しよう」という知恵がある感じが中学生ですよね。小学生だとそこまでは無いかなと。よと君の雰囲気とお芝居も素晴らしかったです。いつもYouTubeチャンネル 「COCHO COCHO」で拝見しているので感動しました。

こんにち博士:僕も「COCHO COCHO」が大好きで、それでお願いしたいなと思いました。こういう長編のお芝居は初めてということで、現場でも極力自由に「よとのまま」でいて欲しいということを伝えました。よとが喋るのを待っているだけの時間とか、リュックサックを空けてゴチャゴチャしているだけの時間とかもあって、編集の際にそのまま使うかどうかとか迷ったんですけど、そういう変なシーンがあった方が面白いのかなと思って極力残しています。よとは結構、神童っぽい所もあって、島でも猫を自然と手懐けていましたね。

──この年齢も環境も異なる4人のパーティが面白いですよね。

こんにち博士:現場でもこの4人は常に一緒に行動してくれていたので、その雰囲気が映画に映っているなと思います。

端栞里:ポスターにもなっている、船の上の4人良いですよね。脚本を読んだ時点ですごく好きだったシーンです。

こんにち博士:僕もこのシーンは特に好きです。セリフもなく、うん、ただただチキンを食べ、4人にカメラをズームしていくだけの数十秒間なんですけど、良い画が撮れたなあって。

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──改めて、監督はなぜ今回映画を作ろうと思ったかお聞きしても良いですか。

こんにち博士:自分が普段作っている、演劇の世界観を映画にしたらどうなるのかなという興味はずっとありました。子供の頃からずっと映画がすきで、映画ばかり観ていたので。
今後も映画は作ってみたいなと思いますけれど、『チャオヤングの墓』みたいな映画を作ることってもう無いだろうなとすごく思います。「最初だから」ということに溢れている映画だなとも思います。ずっと温めていたストーリーというわけでもなく、急ピッチで自分の「これがしたい」ということを詰めていった感じなので。自分で最近作品を見返して、なんでこれを撮ろうと思ったんだろう?と深く考えると分からなくなるんですけれど、あのときにしか描けなかった不思議なムードに溢れていて良いなと思います。

──端さんは本作でどんな刺激を受けましたか?

端栞里:めちゃくちゃありますね。初めての映画だったので、映像に残って何度も見返せるんだということも新鮮でしたし。現場ではオッケーもらった後、「もっとこうしたら良かったな」と思ったりもしましたが、時間をおいて完成したものを見たら自分が思っている以上に良かったなと思うこともあったんです。考えて芝居することは大切だけれど考えすぎてもいけないんだなというか。今回カメラの前で演じられて、すごく良い経験になったし、純粋に面白かったです。あと、この物語が純粋に好きなので、こうして関わることが出来て良かったなと思います。

──素敵な映画と、素敵なお話をどうもありがとうございました!

撮影:オサダコウジ

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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