【ライブレポ】宮世琉弥が昇華した「俳優」と「アーティスト」の二面性──〈Live Tour 2026 “Illusionist”〉

2026年7月19日、
俳優とアーティスト、その二面性をテーマに制作されたアルバムの世界を、ライブという空間で作品世界を体現する。この日のステージは「イリュージョニスト」宮世琉弥が描く幻想を、観客一人ひとりが現実として体感するようなライブとなった。
開演前、暗転したフロアにSEが鳴り響く。そこへ宮世琉弥が姿を現すと、客席のボルテージは一気に跳ね上がる。ライブは“GRAVITY”の冒頭フレーズを皮切りに、「横浜! 暴れるぞ!」という力強い咆哮を響かせ、その勢いのまま“SUPER!!”で幕を開けた。
疾走感あふれるナンバーでフロアを一気に熱狂へと導くと、続けて“曼荼羅”、“Lightning”を立て続けに披露。ダンサーを従えたキレのあるダイナミックなパフォーマンスで観客を圧倒。冒頭から会場を熱気で包み込んだ。


MCでは、「こんにちは。僕の地元の宮城の方が声出てるな。横浜、そんなもんですか?」と笑いを誘いながら客席を挑発。会場を左右、中央のエリアごとに「左、上がってますか?」「真ん中、負けないでしょ。盛り上がってますか?」と次々に声をかけ、それぞれの歓声を引き出した。さらに「じゃあ全員で超えましょう。りゅびーず(ファンの総称)、盛り上がってますか?」と会場全体に呼びかけ、一体感を高める場面も。
さらに「歯が欠けるぐらい盛り上がっていきましょう」と力強く呼びかけ、横浜の観客から大きな歓声を浴びた。ツアーの終盤戦にふさわしい熱気のなか、ライブはさらに勢いを増していった。
次のブロックでは、“Flower chord”を披露。色彩豊かなサウンドのなかで歌われる〈花〉のモチーフは、アルバム全体を象徴する重要な一曲。宮世の柔らかな歌声が照明演出と重なり、会場は幻想的な空気へと染め上げられていく。
そこから“ブラウンシュガー”、“Goodbye, Lover”、“Bad Blood”、“Higher”と、異なる表情を持つ楽曲が続く。ダンサブルなナンバーではキレのある振り付けで魅了し、エモーショナルな楽曲では一転して繊細な歌声を響かせる。その振り幅の大きさこそ、『Illusion』という作品が持つ多彩な色彩を、ライブで表現するうえで大きな鍵となっていた。
俳優として培ってきた表現力は、ライブでも大きな武器になっている。ただ歌うだけではなく、一曲ごとに表情や視線、身体の動きまでも変化させながら、楽曲ごとに異なる主人公を演じ分けていく。その姿は、まさにアルバム『Illusion』が掲げる「二面性」というテーマを体現するものだった。
次のMCでは、ライブ序盤から全力でパフォーマンスしていることを振り返り、「今日、最初の3曲で僕の足はもう痙攣しています」と笑顔で告白。ダンスナンバー「SUPER!!」のジャンプについて触れ、「バレー部だったんです。だから1人だけちょっと高く跳んでます(笑)」とユーモアを交えて会場を和ませた。


続いてのアコースティックコーナーでは、ステージ中央に腰掛けた宮世が、バンドメンバーとともに毎公演異なる楽曲を披露するリクエスト形式を展開。観客とのコミュニケーションを交えながら、ライブハウスならではの親密な空気を作り上げていく。
宮世は、これまでの公演では観客の反応を見ながらセットリストを決めてきたことを明かし、「今日は“猫がいびきで”、“接吻”、“Candy”を持ってきました」と候補曲を発表。しかし、“接吻”のタイトルが挙がると、客席には「そんな曲あったかな?」という空気が広がる。すると宮世は、「これはOriginal Loveさんのカバーです」と説明し、その冒頭を口ずさむと、会場からは大きな歓声が上がった。
そのまま披露された“接吻”では、原曲のムードを大切にしながらも、宮世ならではの艶やかな歌声が会場を包み込み、観客を魅了した。さらに宮世は、この日の“接吻”の披露について「今日の朝に決めました」と舞台裏を明かし、「テクニカルチームの皆さん、そしてバンドメンバーの皆さん、本当にすみません。僕のわがままでやらせていただきました」と笑顔で感謝を伝える場面も。急きょ決まったとは思えない完成度の高いパフォーマンスに、会場からは大きな拍手が送られた。
アコースティックコーナーでは、さらに“猫がいびきで”を披露。派手な演出を削ぎ落とした空間だからこそ、歌詞と言葉がより真っ直ぐ胸に届き、彼のアーティストとしての一面が強く印象付けられた。
続く“Candy”では、「サビが来たらみんな歌えるよね?」と呼びかけ、「サビに入った瞬間から皆さんに歌ってもらうプログラムになっています」と笑顔で宣言。観客との大合唱によって、温かな一体感が生まれた。


後半戦は“Rebel”から再びギアを上げる。観客を巻き込みながら、会場の熱量は最高潮に達した。会場では観客全員が身体を揺らし、手を掲げ、ステージと客席の境界が消えていくような感覚が生まれていた。
そして本編ラストは“Voice”。「最後の曲は、僕の人生としての核となっている曲です」と紹介。その“Voice”について、「僕は東日本大震災を経験していて、その経験がこの曲を書くきっかけになりました」と、自身の原点を明かした。
続けて、「つらい過去は、きっと皆さんもそれぞれ持っていると思います。そういう人たちを励ましたいという思いで、僕は歌を歌っています」と、自身の音楽活動の根底にある信念を語る。「どう表現すれば自分の気持ちを歌詞に落とし込めるのか、そして皆さんの背中を押せる曲を作れるのかを考えて、ようやく完成した曲です」と、楽曲制作に込めた思いを丁寧に伝えた。
さらに、「この曲は皆さんと一緒に歌える場所があります」と説明し、「“Voice”を知っている方はもちろん、初めて聴く方も周りの皆さんに合わせて、ぜひ一緒に歌っていただけたらうれしいです」と客席へ呼びかけた。「最後の曲なので、悔いのないように。皆さん、いいですか。それでは一緒に歌いましょう」と語りかけると、会場は大きな歓声に包まれた。
この楽曲で宮世が目指したのは、観客とともに楽曲を作り上げること。客席からの歌声を受け止めながら歌う宮世の表情には、確かな充実感が浮かんでいた。観客とのシンガロングによって届けられた“Voice”は、宮世自身の原点とファンの思いが重なり合う、この日のライブを象徴するフィナーレとなった。


アンコールでは、“雨に唄えば”で、バンドサウンドに乗せながら伸びやかな歌声を披露。そして石崎ひゅーいとともに制作を手がけた“美貌録”を壮大なバンドアレンジとともに歌い上げると、ラストはフルサイズで届けられた“GRAVITY”。オープニングで冒頭のみを披露した楽曲が、最後にフルコーラスとして帰ってくる構成は、このライブ全体を一本の物語として完結させる演出だった。「重力」というタイトルが示すように、宮世自身が描いてきた幻想は、最後には確かな現実として観客一人ひとりの心へ着地していく。
俳優として高い評価を受けながらも、自ら作詞・作曲に携わり、ライブで完成する楽曲を生み出し、ファンとともに作品を育てていく。その姿勢から見えてくるのは、「アーティスト・宮世琉弥」という存在をさらに確立させようとする強い意志だった。
約2年ぶりとなった全国ツアー〈Illusionist〉は、『Illusion』という作品をライブで昇華させると同時に、宮世琉弥自身がアーティストとして新たなフェーズへ踏み出したことを証明するライブだった。この日、ライブハウスいっぱいに響いた歓声とシンガロングこそが、その何よりの証だった。


取材&文 : ニシダケン
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プロフィール
「宮城から世界へ」という想いがこめられた「宮世琉弥」で活動中。2019年俳優デビュー。若手の登龍門といわれるCMに大抜擢され、TBS系『恋する母たち』や『君の花になる』など数々の話題作に出演。フジテレビ系めざましテレビでは当時史上最年少のマンスリーエンタメプレゼンターに抜擢。2025年には国立代々木競技場第一体育館でのLiveイベントを2days成功させ、映画『顔だけじゃ好きになりません』で映画単独初主演を務めた。近作にはフジテレビ系月9ドラマ『ヤンドク!』、テレビ朝日系木曜ドラマ『未解決の女 警視庁文書捜査官 Season3』など。今後も待機作が多数控える。
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