『サヨナラの引力』ク・ギョファンインタビュー 俳優として、クリエイターとして語る“恋愛映画”の表現
韓国で2025年の公開後に3週連続週末興行ランキング1位に輝き、観客動員数260万人を突破した映画『サヨナラの引力』が、7月3日(金)より日本で封切られる。中国映画『僕らの先にある道』(原題:后来的我们/2018年公開)のリメイクにあたる本作でメガホンをとったのは、『82年生まれ、キム・ジヨン』のキム・ドヨン監督。普遍的な恋愛映画の形式を下敷きにしながらも、不器用で誠実な工学部生・ウノ(ク・ギョファン)と厳しい現実の中で建築家を目指すジョンウォン(ムン・ガヨン)の出会いと別れを、韓国社会の現在を切り取った独自の視点を加え、見事に描き切っている。
主演をつとめたク・ギョファン(『脱走』『D.P.-脱走兵追跡官-』『寄生獣 -ザ・グレイ-』など)は、インディペンデントから大作商業映画まで、様々なフィールドで俳優として縦横無尽に活躍する一方で、キャリア初期から監督・脚本・編集・製作を手がけるクリエイターでもある。本作への出演を決めた理由から創作論まで、来日インタビューで語ってくれた。
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キム・ドヨン監督の「“ディティール”を活かすことができる」実力
――キム・ドヨン監督らしく、本作は普遍的なラブストーリーでありながら、恋愛映画のステレオタイプなイメージから脱却した作品になっていて、非常に感心しました。どのような点を気に入られて、本作への出演を決められたのでしょうか?
まずは、素敵なコメントありがとうございます。本作は正統派のロマンスではあるんですが、その中でも“ディティール”を活かすことができるキム・ドヨン監督の実力を知っていましたので、選ばせていただきました。なぜ、監督がそのような演出ができるのかと言えば、それは彼女が素敵な演出家でありながら、素晴らしい役者・俳優でもあるからだと思います。早い編集が要求される、そういったモンタージュの作業の中でも“ディティール”を逃さないんです。私もムン・ガヨンさんも、その“ディティール”を逃さないように一生懸命に努力しましたので、そのように見ていただけて、本当にありがとうございます。
――出演する作品や演じる役を決める際の、基準があるのでしょうか?
選ぶ基準は、作品ごとに違ってきます。シナリオの場合もありますし、演出される監督さんの場合もあります。色々な要素があるのですが、今回の作品に関しては監督(キム・ドヨン)さんと、相手役の俳優(ムン・ガヨン)さんです。
――ク・ギョファンさんご自身も監督・脚本・編集を手がけるクリエイターということもあり、現場で生まれる“偶然”の面白さを大切にされているとうかがいました。本作の撮影で“偶然”は生まれましたか?
今回も“偶然”の面白さというものは生まれたんですけど……そういったシーンは、リハーサル、撮影に入る10分前くらいの段階で生まれることが多いんです。演技の最中に生まれることは、なかなか難しいんですね。ですので、撮影が始まる前に一度、監督さんと私とムン・ガヨンさんで動いてみるんです。そうやって色々やっているうちにアイデアが湧いてきて、それを撮影に反映させることがあります。今回もそうでした。私は“10分前の集中”をとても大事にしていますし、(撮影の)10分前は非常に集中しています。
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――監督さんや共演者さんとのやり取りの中で、アイデアが降りてくるんですか?
そうですね。撮影に使われるプロップ(小道具)もそうですし、その日のロケーションもそうですし、相手役の俳優さん(とのやりとり)からアイデアが生まれてくることもあります。あらゆる環境的な要素から、インスピレーションを得ることができるんです。ですので、これは私のスタイルなんですが、現場に行くときには、いつも意図的に“半分だけ”準備をして行きます。決して、なまけているわけではないですよ(笑)。
――(笑) ムン・ガヨンさんとの息がぴったり合っていて、本当に自然体の恋愛という印象を受けました。恋愛映画の相手役として、ムン・ガヨンさんとどのような関係性を築いていかれたのでしょうか?
素晴らしい恋愛というのは“最高の友人に会うような関係”が、ひとつの姿なのではないかと思っています。ですので、二人の間の友情ですとか、演技に対する情熱、そういったものが、私たちが出演している姿をそう見せてくれたのではないかと思います。ムン・ガヨンさんは、彼女のフィルモグラフィーを見ても、ロマンスにおいては私よりもずっと先輩なので、色々な演技指導をしていただきました(笑)。というのは冗談で、感情的に、お互いに準備されたセリフを言いあうだけではなくて、自分たちの心が動いたときに新しいセリフが生まれることもありました。また、行ったり来たりして言葉を交わすよりも、時にはお互いに見つめあうそのまなざしが、相手のことを思う演技になる。そういうこともありました。
“ふたつの時代”を演じ分ける表現
――ウノは、ゲームクリエイターになる夢と現実の間で苦しみながら、恋愛もします。ク・ギョファンさんご自身とウノに重なる部分があれば、教えてください。また、ウノにもどかしく感じる点はありましたか?
もどかしいと思ったところはないです。私自身は演技もしていて、演出もしているんですね。私は、自分の好みを、自分の趣向で観客のみなさんにプレゼントしたいという思いがあるんです。ウノもまた同じで、自分の好みを、自分の趣向のゲームでユーザーに届けたいという思いを持っています。そういったところが似ていると思い、深い感銘を受けました。
――大学生時代(20代前半)と、現代(30代)の姿を違和感なく演じ分けられていたことに驚かされました。二つの時代の姿の仕草・話し方・佇まいなどを表現するために、具体的にどのようなアプローチを行われたのか、教えてください。
2つの年代は、私が実際に経験した時代ではあるので、必ずしも演技的に不利なものではありませんでした。(20代から30代へ)衣装のコーディネートを変えながら、落ち着いていく様子を見せるように演じました。話すときの速度もそうですし、動きのスピードや表情もそうです。歳月を重ねることによって変わっていく姿を見せようと、努力しました。
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――型にはまらない複雑な役柄を演じるうえで、どのようなことを心がけて演技されているのでしょうか?
非常にシンプルなことで、作品を愛する思い、気持ちだと思います。私は自分の作品を誰よりも愛することができますし、その自信があります。
――本作では、ウノとジョンウォンが、男女それぞれの立場で社会から強いられる役割に悩み、葛藤し、成長していく姿も描かれていました。ふたりの姿に共感する部分はありましたか?
ご覧になった観客の皆さんもそうだと思いますが、私も「非常にもどかしいな」と思いました。ああいった状況が、ふたりに影響しなければいいのに……と感じながら演技をしました。ただ、シナリオでそうなっているんだから、仕方がないですよね(笑)。
――それはそうですね(笑)。印象に残っている、撮影時のエピソードがあれば教えてください。
沢山あるんですが、その中でひとつ申し上げるのであれば、監督さんが沢山泣いてくださったことです。監督さんは、現場でモニターを見ながら泣いてくださったんですよ。私たちの演技を、最初の観客として観て、沢山笑ってくださり、泣いてくださったということが、非常に記憶に残っています。
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――ク・ギョファンさんは、監督・編集・脚本・プロデューサーとしても活動されていらっしゃいます。クリエイターとして現在準備されている作品があれば、教えてください。
『あなたの国(仮題)』(イ・オクソプ監督と共同演出/チャン・ドヨン主演)という映画を公開する予定です。これについては、ミジャンセン短編映画祭(『MSFF2026』)にトレーラーを出したところです。作品(の一部)は、YouTubeでご覧いただけますよ!
第22回ミジャンセン短編映画祭公式トレーラー『最高の観客(최고의 관객)』(YouTube)https://youtu.be/gUalVFfXCM4
『サヨナラの引力』は7月3日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。
インタビュー・文=藤本洋輔/撮影=オサダコウジ
映画『サヨナラの引力』
(2025年/韓国/韓国語・英語/115分/ユニビジウム/5.1ch/カラー・モノクロ)https://youtu.be/5WoSgxufPp0
原題:만약에 우리 英題:ONCE WE WERE US
監督:キム・ドヨン『82年生まれ、キム・ジヨン』
出演:ク・ギョファン『脱走』『キル・ボクスン』「寄生獣 ーザ・グレイー」、ムン・ガヨン「瑞草洞<ソチョドン>」「女神降臨」
字幕翻訳:福留友子
提供:KDDI 配給:日活/KDDI映画『サヨナラの引力』クーポンサイト:https://kddi-l.jp/BQ1
ムビチケ販売サイト:https://ticket.moviewalker.jp/film/092642?from=official
公式サイト:https://sayonara-inryoku.jp/
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(執筆者: 藤本 洋輔)
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