超・貸し手市場のパリは、高年収でも賃貸物件が借りられない?! 入居基準は「エレガンス」、大家へのプレゼンも必須?!

超・貸し手市場のパリは、高年収でも賃貸物件が借りられない?! 入居基準は「エレガンス」、大家へのプレゼンも必須?!

パリって東京と似ているな――現地で暮らす私はそう感じています。
高級地が港区のようなら怪しげなエリアは歌舞伎町のよう。多様な顔を持つパリは一度は住みたい憧れの街ですが、家探しは激しい争奪戦です。そんな厳しい現実の一方で、一等地のビルでも2階以上は普通に住居という面白い特徴も。観光本には載らない、現地で暮らしてわかったリアルな住まい事情をお届けします。

渋谷や歌舞伎町にそっくり?! 東京に例えてわかるパリのリアルな住事情

(写真/坂田夏水)

(写真/坂田夏水)

パリが東京に似ている。私がそう思うのには理由があります。
パリ中心部左岸のカルチェ・ラタンやサンジェルマン・デ・プレ界隈、5区や6区の高級地は港区や中央区と同じような雰囲気だし、右岸3区、おしゃれなショップが並ぶマレ界隈は渋谷に似ている。そして、18区と19区のムーラン・ルージュ近辺のパリジャンたちも寄りつかないちょっと怪しい地域は新宿の歌舞伎町、というように、パリといってもさまざまで、美しいパリの裏には欲望の魔窟のようなパリもあります。

(写真/坂田夏水)

(写真/坂田夏水)

東京も同じだと思いますが、住んでみないとわからないこと、観光ガイドブックには書けない地域のあれこれもありますから、知らずにとりあえずパリに引越したら、周りが英語もフランス語も通じない多国籍な地域でパリが嫌いになった!という話も珍しくありません。

しかし、パリに一度は住んでみたいという方も多いでしょう。

パリは東京と比べて面積も小さいし、小さな家も少ないため賃貸の情報として一般公開される住戸の数が圧倒的に少ないのです。そのため、治安の良いエリアの家は争奪戦。大家にとって家賃を上げて貸すことはたやすいこと、貸し手が強い立場にあります。
そして日本と大きく違って面白いところは、高級一等地でも2階以上は誰かの家ということ。例えば、「銀座・和光の向かいにある建物の2階に住んでいるよ」というのはあり得ないですが、「パリのボン・マルシェ向かいの建物4階に住んでいる」という嘘のような話はパリには普通にあるわけです。反対に、パリジェンヌが、日本に旅行に行った時のこと。「銀座に行ったら ビル全部レストランで驚いたわ、みんなどこに住んでいるの?」と。 街の歴史が違えば、建物の用途も構成も違うわけで、面白いですね。

パリの大きさ、知ってますか?

ところで、パリの大きさを知っていますか? 実はパリは、東京の山手線の内側の面積より少しだけ大きいくらいなのです。パリ20区の大きさは105.4平方km。東京都23区は626.7平方kmで、パリの6倍。東京都全体では2194平方kmで、パリの20倍。パリの中心部から半径5km程度、1時間ほど歩けばパリの端に到着するので、実際に生活してみて、パリって想像以上に小さいのねと思いました。

エッフェル塔から1時間歩けばパリ外 (撮影/坂田夏水)

エッフェル塔から1時間歩けばパリ外 (撮影/坂田夏水)

しかし、家は広いのです。ファミリー用の住まいは100~150平米が一般的。旧貴族の家だと300平米というものもあって、パリの中心部の高級地はそんな家ばかり。そしてもちろんお家賃も素晴らしく(高い!)、パリに住める人は限られているのです。

小さなパリに住みたい人はたくさんいるけれど、いつも住宅不足です。
パリの家賃は2001年15.1ユーロ/平米から2024年27.2ユーロ/平米へ、今も上がり続けています。これは二人暮らし向けくらいの広さ50平米に換算すると、約14万円から25万円強へのアップ!(1ユーロ185円換算)。さらに Airbnbなどの観光客向けの民泊用住宅が増加した一方で、実際にパリに住んでいる人は減少が進むばかり。東京23 区の住人の5分の1程度の214万人(2025年)になったそうです。
とはいえ、東京23区の面積はパリの約6倍。超高層オフィスビルが立ち並ぶ東京とパリの人口密度が、実はそれほど変わらないというのは興味深いところです。

パリの中心部の建物は築100年以上が当たり前

フランスと日本の建築物には大きな違いがあります。
パリの中心部は築100年以上は当たり前、古い地域になると建物のほとんどが築100年以上という場所も珍しくないのです。
実際に私が今住んでいる家は1760年築なんですよ! 日本では葛飾北斎が生まれた年で、そんな時代に建てられた築266年の家に住むなんて、日本では想像できませんね。266年の間、改築や改装を重ねて今の姿になっているんです。
もちろん古い建物ならではの問題として、エレベーターが設置できないことや給排水管の劣化などはあるのですが、住居内部はリノベーションされており、屋根や窓の断熱、床の防音、キッチンやお風呂などの設備、使われている建材も日本よりも格段にレベルが高いです。例えば、日本では木目調のプリントシートを使った床材が普及していますが、パリでは組み木のオーク無垢材が主流。サッシも複層ガラスが当たり前です。また、日本のお風呂や洗面所などの水回りにはプラスチック系の建材がよく使われますが、フランスで水回りにプラスチック建材が使われているのを、私は見たことがありません。

なぜ古い建物が残るのか、もちろん地震がないことは大きな理由ですが、建物オーナーが建て替えをしたいと思っても、景観を保つ法律で古い建物が守られているため、実際のところ建て替えはとても難しいのです。

1760年築の今住んでいる家(撮影/坂田夏水)

1760年築の今住んでいる家(撮影/坂田夏水)

これにはパリのすさまじい歴史がありまして、今から150年以上も昔、第二帝政期1852~1870年のナポレオン三世の時代、当時セーヌ県知事のジョルジュ・オスマンによって行われた「パリ改造」はとても大規模で、強制的にパリの街を大きく変えました。オスマンの政策により、小さく古い木造の家を軒並み壊して街に大通りを通し、石造の大きな美しい建築物に建て替えました。

オスマンのパリ改造時代に建てられた建物(撮影/坂田夏水)

オスマンのパリ改造時代に建てられた建物(撮影/坂田夏水)

現在の美しいパリができた裏側では、家を壊され、パリから追い出された住人たちが犠牲になりました。彼らがパリの城壁の外に出されて新しい街づくりをしたことで、パリが12区 から20区まで大きくなりました。新しく広がったパリの外周20区までの場所に、築100年以下の建物 が多いのはこの歴史があるからなのです。
日本からシャルル・ド・ゴール空港に到着して電車やタクシーで移動すると「あれ?これはパリ?」と日本のような団地や超高層ビルもパリの郊外では見られます。

富裕層と駆け出しアーティストが同じ建物に住んでいる

パリの家は階数によって仕様が大きく異なり、住人の階級で住む階数が分けられていました。かつて貴族が住んでいた2~3階は天井や窓が高く、室内の内装グレードも床が大理石だったり天井の装飾が美しかったりと、上質なものを使い、区画も大きく200平米程度あります。住戸の価格は、立地はもちろんですが、古く歴史がある建物の方が高い場合もあり、内装材に高級なものが使われているかにもよります。多面的に価値があるものを評価する文化がありますので、たとえ賃貸の小さな家だったとしても、ビニール壁紙にビニールの床材を選ぶ大家はいません。そこは日本と大きく違うところですね。
そして、パリの家は階数が高くなるほど住戸が小さくなっていくのが面白いところです。

最上階の家は一番区画が小さく、かつては貴族の家のお手伝いさんが住む共同トイレの家だったそうで、今では学生やアーティストの部屋になっています。なので、同じ建物の中に、200平米以上の高額な家と15平米の学生やアーティストの部屋が混在しているのです。入り口は同じなので興味深いですよね。フランス革命の時に「Liberté, Égalité, Fraternité (自由、平等、博愛)」の標語ができましたが、一つ屋根の下に分け隔てなく多様な人が住んでいるのもまたフランスらしいですね。

パリ屈指の高級地、サンジェルマン・デ・プレの超高級物件にも、最上階には今もこうした元・使用人部屋が存在します(撮影/坂田夏水)

パリ屈指の高級地、サンジェルマン・デ・プレの超高級物件にも、最上階には今もこうした元・使用人部屋が存在します(撮影/坂田夏水)

気になるパリ中心部のお家賃

例えば、私が住んでいる6区は売買物件の相場が1平米あたり1万3040ユーロですから、日本円の坪単価に換算すると約800万円。東京・銀座の中古マンションと同等の水準ですね。賃貸はというと6区の平米あたりの平均価格は38.8ユーロで、80平米の家で想定すると3100ユーロ、日本円換算で60万円弱程度です。物件の購入価格の高さに比べると、賃貸は「意外と安い」という印象を持たれるかもしれません。
しかし、パリでファミリー向けの家を探す場合、80平米ではなかなか見つからないのが実情です。というのも、80平米の家には寝室が一つしかないことが多いため。なので、家族用の寝室がいくつかある家を求めると、120平米程度で家賃4500ユーロ(日本円で約75万円)あたりが一般的になります。

2025年のパリの売買平均価格(PAP(Particulier a Particulier:パップ)のHP「

2025年のパリの売買平均価格(PAP(Particulier à Particulier:パップ)のHP「”Paris : en 2025, les prix baissent (encore), 12 arrondissements”(2025年におけるパリの不動産価格の下落傾向を分析したニュース・市場レポート記事)」より)

パリ6区の賃貸の平均単価(Meilleurs Agents(メイユール・アジャン)のHP「

パリ6区の賃貸の平均単価(Meilleurs Agents(メイユール・アジャン)のHP「”Prix immobilier Paris 6ème arrondissement (75006)”(パリ6区(75006)の不動産価格)」より)

パリの賃貸市場は、驚くほど完全に貸し手市場です。パリの良い家に住みたい人はたくさんいますから、不動産オーナーはたくさんの応募の中から選ぶことができます。そのため、フランスで働いて家賃の3倍以上の収入を証明する納税書類がなければ、大家さんの審査の土台にすら乗せてもらえないことも珍しくありません。

東京23区と同様、パリにも高額な地域と比較的安い地域があります。この価格差の理由は明快で、治安の良い場所が高く、悪い場所が安いということ。治安の良し悪しは子どもの学校(学区)の環境にも関係しますので、子どもがいるファミリーにとってのエリア選びは、日本以上に重要になります。

全ての窓に誰かが住んでいるパリの風景(撮影/坂田夏水)

全ての窓に誰かが住んでいるパリの風景(撮影/坂田夏水)

私もパリでの家探しの時に、治安と子どもの学校(学区)の環境が気になり、パリ中心部に絞って家探しをしましたが、審査に通るのがとても難しかったです。パリには美しい窓がこんなにたくさんあるのに、「誰も貸してくれない!」と落ち込んだ時のことを思い出します。

面白い話がひとつ。パリで不動産屋さんに問い合わせをしていた時のこと、130平米程度で5000ユーロの家を勧められました。「そんな予算はないので、こちらのもう少し小さい方で大丈夫です」という話をした時に、「あ!そうか君たちは日本人だしね!」と言われたのです。彼らにとって、日本人は「小さな家でも住める人たち」と認識されているのでしょう。

パリの不動産屋さん

パリの街中を歩いていると、ブティックのような雰囲気のおしゃれな不動産屋さんを多数見かけます。日本と同様、物件情報を通り沿いのウィンドーから見ることができますが、日本と大きく違うのは、まず物件情報そのものが魅力的で、まるでインテリア雑誌を見ているようなこと。
そして、店舗の中を覗くとさらに驚くのが、モデルのように洗練されたスタッフの方々が仕事をしていること。日本の不動産屋さんの“会社です”というようなかしこまった敷居の高さとは異なり、その美意識の高さに圧倒されます。不動産に限らず、高級で良いものを売るためには、空間も人も美しくエレガントであるべき、というのがフランスなのでしょう。

パリの不動産屋さん(撮影/坂田夏水)

パリの不動産屋さん(撮影/坂田夏水)

基本的に賃貸の内覧申し込みは「誰でもどうぞ」という感じで、まず電話で物件名と内覧したい旨を伝えます。ただ、担当者が電話に出ると「この日の何時から何時の間で。来られないなら内覧はできません」と、ピンポイントな日時指定があり驚きました。なぜならば、内覧希望が多数あり、担当者は一日中、予約が入った内覧客の相手をするからなのです。物件の担当者は無駄な営業をしないし、内覧対応も最小限で済ませたい雰囲気。「君たちの時間は30分。そのあとは別の人が来るから自由に見て、質問があったら聞いてね」という感じで、日本の至れり尽くせりな接客と比べると、かなりドライな印象です。

その後、物件の担当者は数多く集まる入居申し込みのメールを審査し、条件に合う人にしか 返事をしません。なんという効率の良さ! そして、立地が良ければほとんどの物件が決まりますので、1日の内覧会で募集終了ということも少なくないでしょう。そんなわけで、内覧をするのはそんなに難しいことではないのです。しかし、家を借りるとなると全く簡単ではありません。

自分がどれほど借主(入居者)として素晴らしいのかを証明する必要があり、人によっては家賃をプラスで払うとオファーしたり、オーナーにプレゼンテーションをしたりする人もいるそうです。

そんな感じで、良い場所の家を借りるのは難しいので、「もし本当にパリに住みたいのであれば、現金で物件を購入するのが一番」という冗談のような話もあるほどです。ただし、賃貸でも売買でも、物件のオーナーは住む人の品位を見ていることを忘れずに。もしオーナーが住人選びをしくじってしまうと、同じ中庭を共有する他のオーナーからクレームが入ります。パリのアパルトマンではコミュニティの調和やマナーに厳しいので、立ち振る舞いがエレガントであることが重要なのです。

パリの家は歴史があり美しい建物ばかり、で、さらに素敵な家具付きだったりするので、「この家に住めたら!」と妄想を膨らませるだけでもワクワクします。しかし、内覧できたからといって、オーナーの審査を通過できるかは全く別問題なのです。

セーヌ川が見える家は特別に人気(フランスの仲介会社・不動産ポータルサイト「Daniel Feau」HPより)

156平米、家賃9000ユーロ/月の美しい家(フランスの仲介会社・不動産ポータルサイト「Daniel Féau」HPより)

パリで人気の家は?

パリで家探しをしている時、さまざまなWebサイトから物件情報を探しては内覧をしました。その時に強く実感したのは、公園の近くやセーヌ川が見える家が圧倒的に人気なのだということ。もちろん人気の場所は家賃も高くなりますが、募集ページのトップ画像が「窓から見た外の景色」ということも少なくありません。室内はもちろんですが、窓からたっぷり光が入り、美しい景色が見えることを何より重要視するのはパリならではだと思います。

セーヌ川が見える家は特別に人気(フランスの仲介会社・不動産ポータルサイト「Daniel Feau」HPより)

セーヌ川が見える家は特別に人気(フランスの仲介会社・不動産ポータルサイト「Daniel Féau」HPより)

あとは、家具付き物件も人気ですが、そのクオリティは二極化します。人気があるのは、インテリアコーディネーターがこの家のためにスタイリングした家具や調度品がついている家。一方で敬遠されがちなのは、オーナーの古い家具がそのまま残されているような、統一感のない部屋です。
高級物件の売買の現場では、インテリアコーディネーターによるスタイリング(日本でいうホームステージング)が必須とされています。良いものを売る時にはしっかりと手とお金をかけるのがパリ流です。

階数も非常に重要です。パリのアパルトマンは建物の構造上エレベーターがない物件も多く、あったとしても小さくてよく壊れるので、パリジャンたちは2~3階を好みます。2~3階はかつて貴族が住んでいた歴史もあり、建物の天井が高く内装の仕様のレベルも高いからです。反対にエレベーターのない建物の5階以上は家賃も安くなります。毎日階段を上らないといけないので、住める人も限られてきますからね。

その5階以上よりもさらに不人気なのが地上階(日本での1階)です。通りに面しているため防犯やプライバシーの面で敬遠されやすいほか、フランスでは「地上階はネズミが出やすい」とも言われており、地上階の家は家賃も安いことが多いです。

そして、日本では新築か築浅が好まれますが、中心部の古い家の方が評価が高く人気なのはパリならではのこと。パリ外周側の家には築浅物件もありますが人気ではありません。

皆さんがパリで家探しをする時のためにおすすめのサイトをお知らせします。

bien’ici
現在市場に出ている賃貸物件、分譲物件が地図上で見えるもの。パリ市内の住宅はもちろん、郊外のお屋敷のような住宅も出てきており、見ているだけでも楽しい。

■PAP
Particulier à Particulierは個人から個人という意味で個人の売買や賃貸の物件を探せるサイト。 不動産会社を介さず、オーナーと個人が直接やり取りをするサイトです。

■leboncoin
日本でいう「メルカリ」のような個人間取引(クラシファイド)サイトなのですが、実は不動産の取り扱いも非常に活発です。個人売買なのでリスクはありますが、「お宝物件」が見つかる可能性もあります。

■meilleursagents
こちらはフランス政府の情報に基づいたデータが見られるサイト。住所を入れれば今までの取引履歴も見られます。いつ、どんな広さの部屋がいくらで取引されたかがわかると同時にその地域の物件を扱う不動産会社も表示されます。

■Etalab
フランス政府が管理しているデータサイトで、2014年からの不動産売買価格(実際の成約価格)を調べることができます。日本では不動産会社しか見られない、物件情報ネットワーク「レインズ」のようなサイトですが、こちらは一般の方でも誰でも自由に閲覧できます。

私も最初はパリに住んで「街並みは美しいしおしゃれだしー!」と浮かれ気味でしたが、日本とは違う不便さや厳しさもあります。まだパリに住んで4年目ですが、古い建物の歴史や美意識と多様性を愛するパリの住文化には、いつもハッとさせられます。
皆さんがこれからの住まいや「暮らしの豊かさ」を考える、小さなきっかけになれば幸いです。

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