今年日本一に輝いた銘柄も!今飲むべき広島の日本酒を厳選して7種実飲レビュー

広島グルメを語るうえで欠かせないカテゴリーが日本酒。呑兵衛にはおなじみですが、“日本三大酒都”のひとつは広島の西条(ほかは京都の伏見と兵庫の灘)なんです。

その広島で2026年5月末、世界最大級の酒類品評会『IWC』(※)のSAKE部門審査会が開催され、実は日本開催は8年ぶりでした。本稿では栄誉に輝いた銘柄をはじめ、西条以外の酒どころや蔵元を紹介していきます。

▲取材は、芸能界屈指の日本酒通で、酒の著書や番組出演も多数の橘ケンチさん(EXILE)とご一緒させていただきました!

※インターナショナル・ワイン・チャレンジの略。今回のSAKE部門では過去最多の1738銘柄が世界中からエントリーされました

ひとまず今年の受賞酒3本を抑えましょ

まずは、カテゴリーの最高賞『トロフィー』受賞酒から紹介。11部門あり、広島から『トロフィー』に輝いたのは呉市・林酒造の『三谷春 梅酒 潤』で、『フレイバー・サケ部門』での受賞となりました。

▲『トロフィー』受賞酒11本。手前が『三谷春 梅酒 潤』

ただ、こちらは口にすることができなかったので……『IWC』SAKE部門の広報アンバサダーも務めるケンチさんのコメントで紹介。「最初は酸味ですけど、あとから甘味と酸味がうまく絡み合って、長く余韻が続くような感覚ですね」

また『トロフィー』に次ぐ『ゴールド』に輝いたのが、呉市・相原酒造の『特別純米 雨後の月 十三夜』と、東広島市(西条を有する)・金光酒造の『賀茂金秀 特別純米』。ともに純米酒部門での受賞です。

試飲レビューとしては、『特別純米 雨後の月 十三夜』は、やさしい米の甘みと爽やかな酸が心地よく、クリアでスイスイいけるきれいな味わい。アルコール度数13%で、比較的おだやかなボディも特徴です。

『賀茂金秀 特別純米』はキリッとした辛口ですが、ほんのりと梨を思わせるような果実味もあって実にフレッシュ。スペックの特徴としては、麹米に岡山の雄町、掛米に広島の八反錦を使った瀬戸内クオリティで、アルコール度数は16%としっかりめです。

受賞したてのタイムリーな酒ですし、広島の日本酒は、まずこの3本からチェックするといいでしょう。

広島市には日本初のマンション地下蔵がある!

広島が誇る日本酒の特徴といえば、多様性。穏やかで晴天の多い瀬戸内海沿岸から、厳冬期に雪が降り積もる山間部まで、起伏に富んだ気候と土壌が、同県の多彩な酒の源泉です。ユニークな造り手も多く、そのひとつが1805年創業の原本店。『蓬莱鶴(ほうらいつる)』が有名銘柄です。

こちら、広島市の中心部に現存する唯一の老舗酒造ですが、なんと地上10階建ての自社マンションの地下で酒を造っています。理由は、もともと蔵を閉めた跡地のマンションで不動産経営をする計画だったところ、現代表の原純さんが廃業に待ったをかけたから。

当時大手の酒類メーカーで働いていた原さんは、六代目として継ぐことを決意。躯体の設計を変更して地下に醸造所をつくり、1995年から新たな酒造りがはじまりました。日本初のマンション蔵だそうです。

ただし広さも天井高も十分なスペースを確保できないため、大きな醸造設備は置けません。そのためタンクと櫂(かい)の代わりに寸胴鍋とお玉を使ったり、使う時だけ出せるように移動式の機器を用いたり。狭小環境ならではのアイデアが、この蔵には詰まっています。

特にユニークなのが、おそらく日本唯一となるゴアテックスの麹室(こうじむろ)。一般的に麹室は、室温や湿度が高い木製の密室空間ですが、マンションの地下では設置が困難です。とはいえ、製麹(せいきく)は味の個性を司る大切な工程ですから譲れない。

そのとき原さんが思い出したのが、「雪山のテントでコーヒーを飲んでも結露しない」という友人の話でした。そこで防水透湿性素材のゴアテックス麹室を発案、実現させたのです。

ちなみに同蔵はコンパクトな設備ゆえに大量生産ができず、保管場所もありません。しかし、だからこそ完成次第すぐに瓶詰めして出荷するため、広島市内でも希少な銘柄となっています。さらに四季醸造(一年中造る)なので、常時フレッシュな新酒を堪能できる点も大きな魅力。特別に飲ませてもらいました。

味わったのは、『蓬莱鶴 純米吟醸 奏 ~harmony~』(写真右。ここでは720mlが1815円)。広島を代表する酒米『八反錦(はったんにしき)』で醸しており、ふくらみのある旨みとフルーティーな香味が印象的。後口はスッキリして、文字通りの調和とバランスのよさが絶妙です。

竹原の日本酒も県内トップレベル!

市内を飛び出して、もうひと蔵。東に車や電車で最短1時間ほどの場所にある、竹原市へ向かいました。かつて塩田で栄えた竹原は、南は瀬戸内海に面し、北は山々に囲まれた好環境。酒造は3蔵があり、歴史的建造物が並ぶエリアも魅力です。

▲竹鶴酒造は、ニッカウヰスキーの創業者であり“日本のウイスキーの父”と呼ばれる竹鶴政孝(朝ドラ『マッサン』のモデル)の生家としても超有名

その中から訪れたのは、五代目が竹原市観光協会の会長も務める藤井酒造。同蔵は、第1回全国清酒品評会(1907/明治40年開催)で日本一に輝いた超名門。そこから100年後の2007年には、『IWC』に新設されたばかりの『SAKE部門』で『龍勢 純米大吟醸 黒ラベル』が世界一を受賞しています。

拠点に隣接した『酒蔵交流館』では、有料試飲や商品購入が可能。ここで五代目・藤井善文さんから話を聞きながら、代表銘柄の試飲をさせてもらいました。ちなみに現代表は、六代目の藤井義大さんです。

▲藤井善文さん

藤井酒造は伝統的な日本酒造りへの原点回帰を進めており、2021年からは業界でも珍しい全量生酛(きもと)仕込み・酵母無添加の酒造りへと舵を切りました。自然の恵みを最大限に生かし、蔵の菌と職人の感性とが共創し合う、個性に富んだおいしさが魅力です。

▲大正時代に作られたという、貯蔵用の巨大な木樽

そして試飲は夏酒『龍勢 涼風生生<山田錦>』をレビュー。すがすがしいフレッシュな酸に続く、青リンゴやラムネを思わせる爽快な果実味がすこぶるイイ! キレもよく、しっかり冷やして飲むのがマストですな。

さらに『IWC』で世界一に輝いた『龍勢 純米大吟醸 黒ラベル』も飲ませていただきました。こちらはどっしりとしたうまみとボディがあり、リッチな吟醸香が華やぎつつもすっきりした辛口のフィニッシュ。スペック的にも味わい的にもエレガントです。

なお、『酒蔵交流館』では『龍勢 涼風生生<山田錦>』が2200円、『龍勢 純米大吟醸 黒ラベル』が3630円でした。試飲もできますし酒器なども買えるので、竹原を訪れた際にはぜひどうぞ。

竹原で宿泊や特別なランチなら『ニッポニア ホテル』が推し

この地でもう1カ所紹介したいのが、『NIPPONIA HOTEL(ニッポニア ホテル) 竹原 製塩町』。同ホテルは歴史的建築物を活かすことに加え、複数の建物で展開し“まち全体をホテル”に見立てた設計が特徴です。

この竹原は、元は銀行や料亭だった建物などを保存・改修して2019年に開業。また、食材の地産地消に加え、地元由来の塩と3蔵の銘酒にフォーカスした料理も独自のポイントです。ここでは藤井さんの案内で、日本酒と楽しむペアリングランチをいただきました。

▲同館の『LE UN(ルアン) NIPPONIA HOTEL 竹原 製塩町』では、瀬戸内食材×フレンチのコースを、3カ月ごとに一新して旬を提供。宿泊者以外でも楽しめます

味わったのは、メインが選べる全5皿の『デジュネA』(3800円/税・サ別)と、『お酒ペアリング』(3500円/税込サ別)。中でも、本取材の限定メニューとして用意してもらった一皿が『ファームスズキ産 牡蠣のポワレ 春キャベツとチョリソーオイル』です。

▲牡蠣料理は通常提供のない、この日だけのメニュー

合わせた日本酒は『龍勢 ゆらぎの凪 -八反35号-』。スルリとなめらかなタッチのあとに広がる、やさしい酸と米のふくよかな甘みがたまりません。クリアで繊細な酒質は魚介類と実にマッチし、ミルキーな牡蠣のうまみとも調和。杯も進みます。

▲『龍勢 ゆらぎの凪 -八反35号-』は、藤井酒造の『酒蔵交流館』で1980円

もうひと皿紹介したいのが、竹鶴酒造の『純米 秘傳』と『瀬戸内の鯛と海藻のヴィエノワーズ 竹鶴酒造大吟醸のソース』のペアリング。この銘柄は広島における純米酒の先駆けかつ、竹鶴の定番。蔵内熟成による琥珀色と豊かなうまみが多幸的で、料理に使われた大吟醸のソースともドンピシャでした。

酒どころ、広島。出張や旅行で訪れた際は、もみじ饅頭やあなごめしなどと一緒に日本酒もお土産にぜひ。竹原には駅からの徒歩圏内に3蔵が点在していて、西条はさらに多く7つも蔵があるので、酒造巡りも楽しいですよ。

(執筆者: 中山秀明)

(執筆者: 中山秀明)

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