3人と“冷蔵庫”の不思議な旅 映画『トランジット・イン・フラミンゴ』山下リオ・細川岳・祷キララ インタビュー
3人ぷらす1個の、フラミンゴを探すヘンテコな旅。ひょんなことから始まった、笑って迷って、少し前に進む。映画『トランジット・イン・フラミンゴ』が公開中です。
<ストーリー>一緒に移住してきた恋人に置いていかれたサエ。地元から離れられないまま日々を過ごすリュウタロウ。冷蔵庫を背負い、親友キョンちゃんとの思い出を探しにきたアカリ。見知らぬ3人が偶然出会い、1台の冷蔵庫と共に、フラミンゴを探すことに。銭湯に行ったり、スーパーに行ったり、あてもなく歩きながら過ごすうちに、3人は少しずつ本音をこぼしていく。迷って、笑って、ときどき立ち止まりながら、それぞれの停まっちゃった時間が少しずつ動き出す。偶然が重なって始まった、ちょっとヘンテコであったかい、人生のちいさな交差点での物語。
本作の主人公で、一緒に移住してきた恋人に置いていかれたサエを演じた山下リオさん、地元から離れられないまま日々を過ごすリュウタロウ役の細川岳さん、冷蔵庫を背負い、親友キョンちゃんとの思い出を探しにきたアカリ役の祷キララさんにお話を伺いました。
──とても素敵な映画をありがとうございます。プロットや脚本を最初に読んだ時はどの様な印象でしたか?
細川:かなり会話劇だなと思いました。笑いに振り切っているわけでもないけれど、面白い、ユーモアのある会話なので、その面白さを芝居で増幅させるべきなのか、ナチュラルにいくのかどちらが良いのかなと思いました。
なんでもない時間、なんでもない会話をたくさんしている映画なので、ちゃんと“拾う”ところを拾わないと流れてしまうかもな、と。何となく心地良いまま終わってももったいないと思ったので、「ここは、こうしたらどうですか?」という確認を含めて監督とたくさんやりとりをしました。
山下:私もどこを物語のトリガーにするのかという所が気になって。映画にするからには何を伝えたいのかという核が必要だと思っていたし、こういう映画だからこそ、リアルな息遣いを感じられることが重要だと思っていました。色々提案しましたが、監督は頑固なところもあったので、そのこだわりを信頼しつつ、サエはずっと“受け”の芝居なので、とにかく全部受けて、現場で噛み砕いていけばどうにかなるかなと思って現場にインしました。
祷:私は結構楽観的で、何とかなるんじゃないかと思って撮影に入りました。監督と一番近いキャラクターって私が演じたアカリなのではないかなと思っていて。アカリには堀内さんが生活で感じたこと、考え方が投影されているんじゃないかなと。アカリが物語を引っ張っていくというか、かき乱していくキャラクターだったので、お2人よりはストーリーラインを追いやすかったのだと思います。
あとは、振り返えるとこの撮影の時期ってあんまり忙しくなくて。自分自身の時間の流れもゆっくりで考える時間がたくさんあったのだと思います。この作品に出てくる人たちの温度感と、その時の自分が割と近い部分もあって、脚本の世界観にすっと入っていけたのだのだと思います。
──映画の中に心地良い“間”がたくさんあったのですが、この“間”は脚本に描かれていたのですか?
山下:ロケ地である奈良県・宇陀市での時間を“宇陀タイム”と呼んでいたのですが、他の撮影ではやらないほど間が伸びている部分もあって。がっくん(細川さん)に、一回「私、間とりすぎかな?」と聞いたくらいでした。カットがかからないから素で喋っている所が使われていたりして。
細川:3人で食卓を囲みながらふりかけについて話すシーンがあって、「これ私食べたことないんですよね」「そうなんだ」「あ、やっぱり食べたことありました」とか、台本には書かれていない部分の会話が採用されていたので、完成した作品を観た時は驚きもありました。
──ひきのシーンもかなり多いですよね。
山下:堀内さんに「こんなに正面から顔を撮ってくれないことあります?!」と言ったほどでした(笑)。近くで映っても横顔とか。一応正面からのカットも撮っておいたけれど、やっぱり使われていなかったですね。よく「鳥の目(全体像の俯瞰)虫の目(細部への視点)」などという言い方をされますけど、本作での堀内さんの演出は、俯瞰で撮っていながらもミクロな視点を持っている、両方の感覚がしっかりとしているんだろうな、面白いなと思いました。
細川:監督らしい面白さを感じることは随所にあって、僕は脚本をもらった時に、冷蔵庫やフラミンゴの描写が、「脚本では面白いけれど映像ではどうなんだろう?」と疑問に思っていた部分もあって、「こういう言葉を言った方がいいんじゃないか?」といった提案をしたこともあったんです。でも、観終わった後に「本当に言わなくて良かった」と思って。人とは違うセンスや面白さを持っている方だなと。
祷:現場で私たちが笑っていると、堀内さんがめちゃくちゃ嬉しそうで。完成した作品で使われているシーンも、そういう素で笑っている本当の瞬間の連続を切り取っていて。柔らかい感性を持った監督だけれど、最初から最後まで貫いているこだわりを感じました。芝居でどう見せるとかじゃなくて、俳優がニュートラルな状態で映画が成立しているということをやりたかったのかなと思いました。
──本作での3人の関係もそうですが、知らない者同士だからこそ本音を話せることって、現実世界でも結構あるんじゃないかなと思いました。皆さんはそういった経験はありますか?
山下:私はめちゃくちゃあって。20歳の時にフィリピンで出会った70歳の方と今でも会ったりしますし、30歳の誕生日に、たまたま隣に座っていたおっちゃんと綺麗なお姉さんに祝ってもらって、野毛のスナックに連れて行ってもらったこともあります。あとは隣に座ったスイス人の方が家に泊まりに来たりとか。
細川:すごすぎる!
祷:グローバルですね!
山下:お互いのことをよく知らないからこそ受け入れられるというか、知らない気楽さというのがあるのかもしれないですね。一発の花火!みたいな。
細川:確かに、誰にも話していない家族の話とか、ふっと知らない人に言えたりすることがあって、あれって何なんでしょうね。
祷:私は中高で受験勉強していた時に、勉強のログみたいなものがタイムラインに出るアプリを使っていたんです。ニックネームでやっているし、お互いの名前も知らないのですが、同い年の大阪の女の子とアプリ上で仲良くなって。学校も違うし、志望校も違うし、年齢一緒で、同じ受験生っていうだけなんですけど、友達に言えない相談をたくさんし合っていて。その子の存在にすごく支えられていたなと思い出しました。
──不思議と自分の気持ちが吐露出来る、そんな時間ってありますよね。物語としても素敵な作品なのですが、「こういう時あるよな」と自分と重ねるシーンがたくさんある映画でした。
山下:そうですね。初対面同士の、あの独特な空気感ってみんな一度は経験したことがあるような気がします。そこから段々その人に色がついていく過程とか、お互いの距離感が近すぎず、遠すぎず、優しいまなざしだけで会話をしているような。「その冷蔵庫なんなん?」って、すぐに聞けないからこそ、この3人の不思議な旅が始まるのだなと思います。
──本当にそうですね、面白いです。今日は素敵なお話をありがとうございました!
撮影:たむらとも
山下さん
ヘアメイク:牧野裕大
スタイリスト:町野泉美
衣装クレジット
ワンピース¥74,800 /BASICKS([email protected])
靴/スタイリスト私物
細川さん
ヘアメイク:上地可紗
祷さん
ヘアメイク:山口恵理子
スタイリスト:和田ミリ
(C)2026 “Transit in Flamingo” NARA INTERNATIONAL
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