映画『脛擦りの森』黒崎煌代インタビュー「環境の影響をしっかりと受けて、それに素直になる」
荒木飛呂彦の人気コミックを実写化した『岸辺露伴は動かない』シリーズを大ヒットに導いた渡辺一貴監督が手掛ける初のオリジナル作品で、主演に高橋一生さんを迎えた映画『脛擦りの森』(すねこすりのもり)が4月10日より公開となります。
タイトルにもある「すねこすり」は道ゆく旅人の足にまとわりつき離れないといわれる、岡山に古くから伝承される妖怪。特に人に危害を与えるでもなく、「ただ、人を転ばせる」という不思議な妖怪がモチーフとなった本作は、幻想的な映像とともに、目に見えない存在への想像力を無限に掻き立てます。
本作で森に迷い込む「若い男」を演じた黒崎煌代さんに撮影の思い出などお話を伺いました。
——大変楽しく拝見いたしました。黒崎さんは本作の企画やプロットを見た時にどの様な印象を受けましたか?
最初に聞いた時は、妖怪をテーマにしているので怖い話なのかな?と思ったのですが、台本を読み進めるとまさに「美しくも残酷な物語」だなと思いました。
——セリフがセリフで無い様な印象があったのですが、台本はおありだったのですね。
ありました。ただ、今まで見たことの無いほど薄かったです。セリフは本当に少ないですけれど、打ち合わせでロケ地の写真を見せてもらってイメージが膨らんだというか。言葉というよりも環境で伝える作品なのかなと思いました。
完成した作品を観た時も、我々が見た景色の美しさがそのまま写っていて、それは監督とスタッフの皆さんの凄さだなと思うのですが、スクリーンに美しさがずっと続くので圧倒されました。
——役作りはどの様に行っていきましたか?
映画では描かれていない前後の部分を渡辺監督と話しながら決めていった部分もありますが、実際にロケ地に入って、監督と老人役の高橋(一生)さん、さゆり役の蒼戸(虹子)さんと撮影をしながらその場で考えていく部分も多かったと思います。
監督の物語ですし、脚本も書かれているので、現場での指示がすごく的確で、私からの質問にもすぐ答えてくれて、その言葉で納得して演じることが出来ました。
監督がすごく楽しそうに撮影をしているので、僕ももっと楽しくやろうと思いましたし、監督の存在が拠り所になっていたと思います。
——“引き”のカットも多くて、聞こえるか聞こえないかギリギリの、つぶやきの様なセリフも印象的でした。
スタッフさんたちも遠くにいて、自分一人で普通に山を登っている感覚もあって、没頭出来る時間でした。セリフ以外にも、焚き火のパチパチという音など環境音も魅力的なので、映画館で音も楽しんでいただきたいですね。
——蒼戸さんとの撮影はいかがでしたか?
蒼戸さんは僕の6歳下でとてもお若いのですが、すごくしっかりとした魅力を持っている方で。でも現場では、今では覚えていないようなくだらない話をしていました。僕がプロデュースする架空のショートドラマに関する妄想話を延々としていて。「なんつったって芸能人」というタイトルで、とにかく芸能人に憧れていた男が夢を叶えて、友達と会っても業界用語をバンバン話しちゃう、「俺は芸能人」というのが決め台詞の、ちょっと痛い人物が主演のストーリーです。
——あの神秘的な場所でそういうお話をしていたと思うと和みます(笑)。
本当に(笑)。大切なシーンの直前でもそんな話をしていて、映画の中のクライマックスに関わるシーンの前にも「なんつったって芸能人」のポスターデザインを妄想していました。
——環境に助けられたということですが、穴門山神社はとても素晴らしい場所ですね。
神秘的で神聖で、我々が行った時は霧がかかっていて、それもさらに吸い込まれそうな魅力がありました。平安時代からある神社ということですが、どうやって建てたんだろうという場所にあって、洞窟も続いていて…。まだまだ日本には知らない場所がたくさんあるんだろうなと感動しましたし、そんな場所に撮影で行けて本当に光栄でした。
——雪も降っていましたが、寒かったのではないですか。
寒かったのですが、衣装が本当に布団をそのまま巻いているみたいなものだったので、すごく暖かくて。みんなで焚き火を囲みながら温まったことも良い思い出です。映画の中で、さゆりが作ってくれる鍋があるのですが、実際に地元のおばあちゃんが作ってくれて、めっちゃ美味しくて。一般的な撮影時にいただくお弁当などと違って、地元の方がたくさん手作りの料理を用意してくれてありがたかったです。
——ゾッとする様な怖さを感じさせる物語ですが、現代人にとってはある意味羨ましくもあるというか、この場所に行きたいと思ってしまう人もいそうだなと思いました。
そうなんですよね。僕も撮影中にずっとそのことを考えていました。いいじゃないかって。美しい自然の中で、美しいさゆりがそばにいて…。でも、やっぱり今の暮らしは捨てられないだろうな、とか。人間って誰しもがそういうことを考えると思うんですね。都会にいたら田舎がいいなと思うし、田舎にいたら都会がいいなとなる。人生ってそういうものなのかもしれないなと。
——黒崎さんは元々妖怪や、妖怪が出てくる作品はお好きでしたか?
そうですね。『ゲゲゲの鬼太郎』と、水木しげる先生の妖怪図鑑みたいなのも家にありましたし、子供の頃から自然と触れていたと思います。「すねこすり」については今回知ったのですが、「道ゆく旅人の足にまとわりつき、離れない」という説明を聞くとあまり怖く無い部類なのだなと思いつつも、よくよく考えると一番怖いかもしれないという。なんか、じわっと怖いですよね。
——目的が何なのか分からない怖さがありますよね。
そうですね。それでいてただただ人間を脅かす存在では無いというか感情や心情を感じられるところも魅力的だなと思います。『ゲゲゲの鬼太郎』のねずみ男なんかも、半分妖怪ですけれど誰よりも人間くさいというか、ダメな所が愛おしくて憎めない存在だと思うので面白いなと思います。
——「すねこすり」も本作で知る方がたくさんいると思います。
この映画をきっかけに、またこれまでとは違う妖怪ブームが起こったら嬉しいです。
——本作での経験を今後どう活かしていきたいですか?
環境の影響をしっかりと受けて、それに素直になる。ということを学びました。今後も環境は味方なんだということを心に留めながら、色々な役柄にチャレンジしていきたいと思います。
——今日は素敵なお話をありがとうございました。
撮影:たむらとも
『脛擦りの森』(すねこすりのもり) 全国公開中
■配給:シンカ
©『脛擦りの森』プロジェクト
【ストーリー】
人里から離れた深い森で、足に傷を負った若い男(黒崎煌代)は、女の甘い歌声に導かれ、古めかしい神社にたどり着く。そこには謎の男(高橋一生)と、若く美しい妻・さゆり(蒼戸虹子)が暮らしていた。傷の手当てを受けながら、若い男はこの場所で夢のような、時の止まったような時間を過ごす。繰り返される穏やかな日々、すべては永遠に続くかに思えたが……
『脛擦りの森』作品情報
高橋一生 蒼戸虹子 黒崎煌代
監督・脚本:渡辺一貴
エグゼクティブプロデューサー:川村岬 平賀督基 スージュン 伊藤義彦 北原豪 中村高志 プロデューサー:岡本英之 土橋圭介
人物デザイン監修・衣裳デザイン:柘植伊佐夫 ヴァイオリン演奏:福田廉之介
撮影:大和谷豪 照明:岩木一平 録音・整音:高木創 美術・装飾:佐藤綾子 坂口大吾
スタイリスト:羽石輝 ヘアメイク:荒木美穂 小林雄美 特殊メイク:梅沢壮一 制作担当:基山絢子
編集:鈴木翔 VFXスーパーバイザー:白石哲也 サウンドデザイン:荒川きよし
製作:『脛擦りの森』プロジェクト(Roadstead・モルフォ・シンカ・JR西日本コミュニケーションズ・Sunborn・NHKエンタープライズ)
製作幹事:Roadstead 制作プロダクション:CULTBLAN 撮影協力: 岡山県フィルムコミッション協議会 配給:シンカ 61分
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