映画『パリに咲くエトワール』當真あみ×嵐莉菜インタビュー/110年前の空気感を宿す「声と身体」の表現

110年前のパリという、華やかでいて激動の時代を舞台に、自分らしい生き方を模索する少女たちの姿を鮮やかに描いた劇場アニメ『パリに咲くエトワール』が大ヒット上映中です。

本作では、瑞々しい感性で夢を追うフジコと、静かなる情熱を秘めた千鶴。まるでそこに実在するかのような彼女たちの繊細な演技と「生きた呼吸」に、既に心を引き込まれてしまったファンは多いのではないでしょうか。

そんなフジコを演じた當真あみさんと、千鶴を演じた嵐莉菜さんのお二人へのインタビューが実現しました。演技へのこだわりをはじめとした作品に対する愛情やアフレコ現場で起きたエピソードをお届けします。

自然な演技を支えた「現場外での試行錯誤」

アニメーションという表現技法を生かし、そこに実在するかのような生々しい呼吸や存在感が感じさせる本作 。そのリアリティを生み出すために、當真さん、嵐さんは独自のアプローチで役に向き合いました。

──アニメーションならではの自由な演出が盛り込まれてる一方で、人物描写に対してはものすごく切り詰めた表現というか、ギリギリのところまでリアルに表現されている作品でした。
本当にその人物がそこにいるような、呼吸をするような自然さが、フジコからも千鶴からも伝わってきました。自然な演技をするために、お二人が気を遣った部分というのを教えてください。

當真あみさん:実写作品と一番違うのは、やはり声だけで表現するという点ですね。たとえばフジコが実際に走るシーンの息遣いなんかは、実際に収録現場で走るわけではないので、自分でアフレコ前に走って息遣いを確認してから現場に行くようにしていました。

嵐莉菜さん:私は千鶴のなぎなたのシーンが苦戦した部分です。なぎなたって技術と経験が伴わないと「出ない声」があるんですね。最初は本当にお腹から声を出して、出したことないぐらい最大級の声量でやってたんですけど、それでも全然ダメで。「全然良くないな……」って思っていたら、監督が実際になぎなたと木刀をスタジオに準備してくださったんです。素早く振って、いきなり止めるというのをやってみたら、そういう時に自然に出る声を体感することができました。それからはもう、なぎなたのシーンが全然怖くなくなり、やりやすくなったのでものすごく感謝しています。

──お二人とも、体の動きありきの声が現場で出せるように訓練もされていたと。

當真さん:実際には収録時にも動きたいんですけど、マイクから口がブレちゃいけない。走るシーンひとつにしても、本当はめっちゃ動きたいけど動けないので大変でした。やっぱり自分で事前にシミュレーションしないと、なかなか出せないんだなと実感しています。

──実際の演技と声優としての演技の違いは?

嵐さん:今までの演技の場合、表情や声のトーン、仕草など、表現の幅は広いのですが、声優となると本当に声だけに全てを乗せなきゃいけない。台本に細かく心情や今の状況が記されているのも新鮮でした。

當真さん:自分が思っている以上に、声に感情を乗せなきゃいけないというのは難しかったです。泣くお芝居でも、映像なら涙を出したり表情を変えたりと、視覚的な部分を使えますが、声だと「声を震わせる」ということを意識しないといけない。そこがやっぱり難しいし、普段のお芝居と大きく違う部分だなと思いました。

一シーンの作り込みに対するこだわり

──キャラクターの品の良さや芯の強さ、誠実さというものがうんと伝わってきました。お二人の力量があってのこととは思いますが、それに加えて良かった点などがあれば教えてください。

嵐さん:特に難しかったのが、千鶴が映ってない情景の映像に、千鶴の声だけが乗るシーンです。バレエで自分がダメだったところを「はっ」と閃いたというか、皆さんに教えてもらって気づけたところのセリフがあるのですが、そこって説明っぽいんですけれど、やっぱり千鶴から出た言葉なので、ちゃんと感情を乗せないといけない。それがすごく難しかったのですが、一度お家に持ち帰らせていただけたんです。
その場で終わらせるのではなく、一シーン一シーンを本当に大切にするというか、どのシーンも本気でやるという現場の姿勢にすごく感動しましたし、難しいシーンは一度持ち帰らせてくれる監督の優しさ、この作品への思いがすごく伝わってきました。

──別のところで監督も「全部説明するんじゃなくて、余白を大事にしたい」ということをおっしゃっていたので、持ち帰りも重要な時間だったんですね。

嵐さん:本当に大事な時間でしたね。全てを教えてくれるというよりは、寄り添いながら「やりやすい方法で」と一緒に考える時間をいただけました。

──當真さんはいかがでしたか。

當真さん:時代背景をいろいろ、監督のご説明や台本からいただけたというのが大きかったと思います。言葉遣いや女性の所作をはじめ「あぁ、現代とは違うな」って感じるところがいっぱいあったのですが、それを最初に説明いただけたのでイメージがしやすかったです。

──110年前ぐらいの時代背景を想像して、演技も作らなければいけないわけですもんね。

嵐さん:あみちゃんのセリフだと「日本(にっぽん)」っていう言い方だったり。今は「日本(にほん)」じゃないですか。私は「オーディション」のイントネーションの違いとか、時代によって違う部分も「あ、こうやって言ってたんだ」みたいな学びがいくつかありました。

當真さん:たくさんあったのでちゃんと(全部は)覚えてはないんですけど、何度かそういう場面がありましたね。難しいと思う反面、より時代を感じられるような緻密な設定があるからこそ、演技の面でも助けられたのかな、と思いました。

キャラクターの関係性の妙

──劇中、お互いが出会ったからこそ成長して変化していく様が描かれていますが、その二人の関係性はどうご覧になっていましたか。

當真さん:まずは行動のフジコと、ちょっと慎重派な千鶴という、本当に真逆な二人だからこそ、お互いのない部分を補い合っているような関係ですよね。誰かと仲を深めていく上で、同じところがたくさんある人も良いですけど、ないものを持っている人と出会うと尊敬が生まれる。この二人は友情だけじゃない、お互いに対するリスペクトがある、その関係性がとても素晴らしいし素敵だと思いました。

嵐さん:二人の関係性がすごく好きです。大事なオーディションの時に、顔を見るだけで安心できる存在って、なかなか作れるものではないじゃないですか。家族とは違う特別な存在というか。千鶴はフジコに背中を押してもらって夢を叶えているところもあるので、二人の掛け合いにおいて好きなシーンは多いですね。

──自分自身と演じたキャラクターとの共通点、相違点はいかがですか?

當真さん:性格の明るさで言うと、すごく私は自分に似てるキャラクターだなと思います。私自身、結構ポジティブなタイプだと思っているので、フジコのとにかく明るく前向きな姿には共感できます。……でも、あの行動力、「好きなものを好き」と言って「やりたい!」と言える強さは自分に無いものなので、尊敬できる部分ですね。

嵐さん:私は負けず嫌いで、諦めるのが結構悔しいタイプなので、好きなものや自分の夢を叶えるために努力しようとするところは、似たところを感じています。千鶴の努力の量はすごいですけれども。
性格面で言うと、千鶴を演じる時にはちょっと抑えめにしたりしました。嬉しいと思う時、普段の私はすごく感情が出ちゃうのですが、千鶴を演じる際は嬉しいことがあっても、ちょっと抑えめにしたりしていましたね。そこはちょっと性格が違うかなと思いました。

足のサイズからホラー映画まで? 共通点だらけの二人

──フジコと千鶴は夢を追いかけているという共通点がありますが、當真さんと嵐さん、お二人の実際の共通点はありますか?

嵐さん:趣味とかも一緒の部分が多いし、共通点が多くてびっくりしました。でも、一番衝撃だったのは足のサイズでした(笑)。

當真さん:アニメが好きですし、結構すぐ誘いに乗ってくれる。「映画観に行こう」って言ったらすぐに「いいよ」って返ってきたり。そして足のサイズが一緒(笑)。

嵐さん:気軽に連絡できるというか。私もお芝居を初めてからの俳優友達が初めてだったので、嬉しくて。観たいと思いながらなかなか観られていなかった映画を、一緒に観に行きたいと思える相手って、これまでなかなかいなかったんで。

當真さん:でも、最初に見に行ったのがね……。

嵐さん:そう、最初に一緒に観に行ったのがホラー映画で。ホラー、別に得意じゃないのに観に行っちゃって。

當真さん:ミステリー系だと思ったら。

嵐さん:がっつり、ホラーで!(笑)二人で「大丈夫?出る?」とか言いながらね。意外と一緒のところがあります。

當真さん:逆に、莉菜ちゃんは周囲と打ち解けるのが本当に上手で、(以前に一緒になった)ドラマの現場でも最初から皆さんとどんどん話して仲良くなっていて、尊敬しています。私は仲良くなるのに時間がかかるタイプなんですけど、そんな私のことも気にかけてくれて、今ではとてもリラックスして話せる存在です。

嵐さん:私は0-100で考えちゃうところがあるんで、最初にがっつり話しかけても反応が良くなかったら「ダメなのかな」って考えちゃうんです。でも、あみちゃんは話していくと私以上に話してくれる時がある(笑)。そういう関係性が私は初めてで、どんどん心の距離が縮まっている感覚が新鮮だったのも、「もっと仲良くなりたいな」と思わせてくれるポイントでした。

──お二人の連携や信頼感が、スクリーンにも表れていました。今日はありがとうございました。

當真さん・嵐さん:ありがとうございました!

『パリに咲くエトワール』ストーリー

20世紀初頭のパリ。
そこに日本からやってきたふたりの少女が暮らしていた。

一人は、夫を支えるよき妻となる将来を望まれながらも、画家を夢見るフジコ。

もう一人は、武家の家系に生まれ、ナギナタの名手ながらバレエに心惹かれる千鶴。

ある日、トラブルに巻き込まれたフジコを千鶴が偶然助けるが、それは幼い日に横浜で出会ったことがあるふたりの、運命的な再会だった。
千鶴の夢を知ったフジコは、同じアパルトマンに住む青年ルスランの母オルガが、ロシア出身の元バレリーナであることを知り、レッスンを依頼する。

東洋人であることで様々な壁にぶつかりながらも、ふたりは夢に向けて歩き出すが、
ある日フジコの保護者である叔父さんが、失踪してしまう。

フジコと千鶴、ふたりはそれぞれの夢を掴むことができるのだろうか ――

當真あみさん
ヘアメイク:SAKURA(makiura office)
スタイリスト:Tatsuya Yoshida

嵐莉菜さん
ヘアメイク: Yukie Tsujimura(ende)
スタイリスト:UCHIDA RINA
衣装クレジット:ワンピース¥20,900/リリー ブラウン その他/スタイリスト私物

撮影:周二郎

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オサダコウジ

慢性的に予備校生の出で立ち。 写真撮影、被写体(スチル・動画)、取材などできる限りなんでも体張る系。 アビリティ「防水グッズを持って水をかけられるのが好き」 「寒い場所で耐える」「怖い場所で驚かされる」 好きなもの: 料理、昔ゲームの音、手作りアニメ、昭和、木の実、卵

TwitterID: wosa

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