被災地の日常と現実の温度をリアルに描く『宣誓』柿崎ゆうじ監督インタビュー「作品そのものはフィクションですが、1個1個のエピソードは全て事実です」
映画『陽が落ちる』で武士の妻、夫婦の覚悟に焦点を当てた重厚な人間ドラマを描き高い評価を得た柿崎ゆうじ監督が描く、震災で家族を失った自衛隊員と少年の“喪失”と“再生”の物語、映画『宣誓』が3月6日(金)より劇場公開中です。
陸上自衛隊の全面協力のもと制作された本作は、被災地の日常と現実の温度をリアルに映し出し、喪失を越えて人が再び生きようとする瞬間を丁寧に描き出すヒューマンドラマとなっている本作。柿崎監督に作品へのこだわりについてお話を伺いました。
——本作は監督以外にもプロデュース、脚本も担当されていますが、どの様に企画が進んでいったのでしょうか。
東日本大震災より15年ということで、どんどん風化されていく事実を止めたいなと思っていました。僕は東北出身なので、東日本大震災という出来事は歴史的なものすごい大きな出来事ですので語り継いでいきたいと強く思っていました。悲しいことに今って世界的にも紛争が多いじゃないですか。そんな中、自衛隊というものを身近に感じたり、疑問に思う機会も増えているかと思います。国民と国のためにその身を捧げるという事にもっと感謝と敬意を持たなければいけないと思い、作品作りを企画しました。
——何年も前から温めていたのでしょうか?
陸上自衛隊を主人公にした作品というのは今まで無かったと思うので、それを撮りたいというのは5年ぐらい前から思っていました。具体的なことを考え始めたのはちょうど撮影の1年ぐらい前なので、2023年の年末くらいですね。
——作品を拝見して、緻密なディテールがいっぱい散りばめられているなと感じたのですが、どの様な取材やリサーチをしましたか?
現役自衛官の方、OBの方、かなりたくさん取材をしました。医官というお医者さんにも取材をして。映像を提供していただいて劇中で使ったものもありますし、自分自身が発災直後に7回にわたって被災地に行きましたので、鮮明に覚えている出来事や経験も組み込んでいます。
——悲しい出来事が軸になっていますが、その中に希望も感じられました。脚本を書く上でどの様なことを工夫しましたか?
一つ言えることは、作品そのものはフィクションですが、1個1個のエピソードは全て事実ということです。見たこと、聞いたことの事実で構成されているので、それを一つの作品に落とし込むことは大変ではありましたけども、果敢にチャレンジしました。リアリティのないことは描きたくなかったので、次官の持っている装備もそうですし、被災者の方々が当時どんな暮らしをしてたのかっていうことも克明に、記録に基づいて再現しています。
——各自衛隊の方々にも個性を感じました。
自分のお付き合いのある現役自衛官の方とかがやっぱりモデルになったりしています。災害派遣=自衛隊というイメージを持たれる方があまりにも多いですよね。記憶に新しいものですと、昨年熊被害があった時に、自衛隊が派遣されました。ただ、本来の自衛隊の主たる目的は国防なんだということを知っていただきたいと思いました。
実は描きたい確信ってそこにあって、そうなるとなかなかここの部分で作品にするのは難しいので、佐賀派遣というものを通じて、それでも国を守るために我々はあるんだと、存在しているんだということを強く印象づけるために、様々なセリフや場面を通して伝えたというところですね。
——主演の前川さんとは前作『陽が落ちる』に続いてのタッグとなりましたね。
『陽が落ちる』で初めてご一緒して、作品への理解、役への寄り添い方が非常に深い方だと思いました。視点も非常にこう、人間くさいんですね。自衛隊の方々の血の通った頑張りを描きたいと思ったので、前川さん以外には考えていませんでした。
もちろん自衛官も人間ですので、自衛官だけがいる場所では感情を爆発させることもあります。ただ、被災者の前では苦しいこと、悲しいこと、辛いことは一切見せずにという姿を徹底的にやっていただきました。
——素晴らしかったです。たくさんの方に観ていただきたいと思いました。今日は貴重なお話をどうもありがとうございました。
『宣誓』全国公開中
配給:NAKACHIKA PICTURES
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