映画『クスノキの番人』伊藤智彦監督インタビュー「若い方が希望をもてるような、頑張りが報われるような作品に」
巧みなプロットや深い人間描写で知られ、ミステリーからヒューマンドラマまで幅広いジャンルで読者の心を掴んできた日本最高峰の小説家・東野圭吾。これまで数多くの名作を世に送り出し、自身の書作の累計発行部数が1億冊超を記録。映像化された作品はいずれも高い評価を受けている。そして、累計100万部を突破した小説「クスノキの番人」(実業之日本社文庫刊)がアニメーション映画化!東野圭吾 原作作品<初のアニメーション映画>となる本作が今月1月30日に公開となります。
監督・伊藤智彦(「ソードアート・オンライン」シリーズ、「僕だけがいない街」『HELLO WORLD』)を筆頭に、脚本・岸本卓(「ハイキュー!!」「ブルーロック」シリーズ)、キャラクターデザイン・山口つばさ(『ブルーピリオド』原作者)、板垣彰子(『かがみの孤城』)、美術監督・滝口比呂志(『天気の子』)、音楽・菅野祐悟(東野圭吾原作『ガリレオ』シリーズ、連続テレビ小説「半分、青い。」)をはじめ豪華スタッフが集結している本作。
伊藤監督に作品へのこだわりについてお話を伺いました。
【STORY】理不尽な解雇により職を失った青年・直井玲斗は、追い詰められた末の過ちで逮捕される。運に身を委ね、将来を思い描くことも、人生の選択を自ら決める意志もなかった。そんな彼に運命を変える出会いが訪れる。依頼人の指示に従うなら、釈放する――突如現れそう告げる弁護士の条件を呑んだ玲斗の前に現れたのは柳澤千舟。大企業・柳澤グループの発展に大きく貢献してきた人物であり、亡き母の腹違いの姉だという。「あなたに、命じたいことがあります」それは、月郷神社に佇む<クスノキの番人>になることだった。戸惑いながらも番人となった玲斗は、さまざまな事情で境内を訪れる人々と出会う。クスノキに定期的に足を運び続ける男・佐治寿明。その娘で父の行動を不審に思う女子大生・佐治優美。家業の継承に葛藤する青年・大場壮貴、彼らや千舟と関わるうちに、玲斗の世界は、少しずつ色を帯びていく。――だが、玲斗はまだ知らなかった。クスノキが持つ<本当の力>を。やがてその謎は、玲斗の人生をも巻き込みながら、彼を思いもよらぬ真実へと導いていく。
——本作楽しく拝見させていただきました。まずは監督が原作を読んだ時の感想をお聞き出来ますでしょうか。
東野圭吾さんの作品は、これまで『白夜行』や『ガリレオ』など映像作品で楽しませていただくことが多かったのですが、本作は有り体で言えば、派手ではない作品だなと感じました。それと東野さんの作品全般に言えるのかもしれませんが、あたたかさを感じました。俺はアニメ畑の人間なので、尖った作品に食いつきがちなので、地に足が着いている本作の様な作品をどうアニメ化しようかなと考えたりしました。
でも、100人中99人は好きになってくれるストーリーだと思いましたので、気を張りすぎずに、丁寧に取り組めば皆さんを最大限楽しませる作品を作れるのではないかなと思いました。
——東野圭吾さんらしい、物語の後半に気付かされる想いがあったり、とても感動的なお話ですよね。
アニメ映画だと主人公がメインになって、友達やライバルなどの周辺で話が終わりがちなのですが、しっかりと家族の話が描かれているのが良いですよね。以前、オーストリアで取材を受けた時に「日本のアニメ作品で、家族モノは珍しいですよね(『僕だけがいない街』に対して)」と言われたことが印象に残っていて、確かにそうだよなと感じました。
——原作をどの様にアニメ化しようと考えましたか?
今の主流のアニメの作り方をやっても面白くないよなと思っていたので、アート寄りのクリエイターさんたちに参加していただきました。美術監督の滝口比呂志さんに、アート寄りの背景を描いてくださいとお願いしたり、俺の考えを汲み取ってくださって素敵な映像になっていると思います。
キャラクターの描き方としては、“マンガ的”な振り幅を作ろうと思って、リアルにしすぎない様にしていました。やたら小さいおじいさんがいてもいい世界にするのが良いかなと。原作がマンガの場合、キャラクター造形は準拠しなくてはいけないですが、本作の様な小説原作で普遍的なストーリーの場合、マンガっぽさがある方が面白さに繋がる瞬間が多くなるのではないかなと思い、キャラクターデザインの山口つばささんにお願いして、板垣彰子さんにまとめていただいています。
——TVアニメーションと、劇場アニメーションでは編集の違いも大きそうですね。
90分くらいの尺では意外とそれは考えなくていいのですが、100分を超えると色々な工夫が必要になりますね。たまに「映画はわざと寝る場所を作れ」みたいなことを言う人もいますけれど、それは俺はあまり信じていないので(笑)。(アンドレイ・)タルコフスキーの様な作品が好きな方ばかりではないですから、エンターテイメントとして所々に盛り上がりを入れる必要があるなと思って作っています。
——キャラクター造形の愛らしさや美術の美しさで、エンタメ性が高くなっていると感じました。幅広い年齢の方が共感出来る作品だなと感じました。
特に刺さるのは、主人公が21歳なので、同世代の方以上かなと思いますね。あと、俺はよく平日の午前中に映画館に行くのですが、ご年配の方が多いんですよね。映画館を支えているのはこの人たちだなと思う所もあり、上の世代の方にも楽しんで欲しいなという気持ちもあります。
——主人公・玲斗を演じた高橋文哉さんのアフレコについてはいかがでしたか?
今回は自分が音響監督もやっていますので、一緒に作らせていただきました。収録ブースに入っては色々な話をして、声を録って、ということを繰り返して。結果4日間収録したのですが、天海祐希さんたちとの掛け合いのシーンは、実際に2,3人で収録をして、1人のシーンは何回か粘って録らせてもらいました。日にちが経てば経つほどフィットしていく感じもあって、高橋さんご本人も「もう1日やりたいです」と言ってくれたり、とても頑張ってくださいました。
基本的にアフレコって体を止めたまま喋らなきゃいけない部分がありますが、本作では玲斗が男に取り押さえられるシーンでは、実際に同じ様な動きをしながらお芝居をしてもらったり。その様子をカメラで撮影して、その高橋さんの動きを参考に作画するということもやっています。ブースの中で自由に動きまわって収録出来たことが良かったなと思います。
——監督はこれまでいくつもの原作モノをアニメ化していますが、一番気をつけていることはどんなことですか。
俺自身が原作の大ファンになることです。その上で「遠慮しない」という心がけもあります。本作も、原作小説の中で印象に残ったセリフがいっぱいあるのですが、どうしてもシーンにハマらない場合は思い切ってカットしましました。これは入れたいね、というセリフもありましたが、あまりにも違和感がある場合には、映画としての収まりの方を大切にしようと思っています。テーマ的にそのセリフが無いと成り立たない場合はもちろん別ですけれどね。
——ありがとうございます。観た後に良い気分で映画館を出られる作品だなと感じましたので、寒い冬に暖まって欲しいなと思います。
「良い気分で映画館を出て欲しい」というのは本作を作る上で、一番そうなったら良いなと思っていたことなので嬉しいです。若者に厳しい社会になってきているなと感じることもあり、若い方が希望をもてるような、頑張りが報われるような作品にしたいなと思って映画を制作していました。楽しんでいただけたら嬉しいです。
——今日は貴重なお話をどうもありがとうございました。
『クスノキの番人』
1月30日(金)全国公開
【CAST】
高橋文哉/天海祐希
齋藤飛鳥 宮世琉弥/大沢たかお
【STAFF】
原作:東野圭吾「クスノキの番人」(実業之日本社文庫刊)
監督:伊藤智彦
脚本:岸本卓
キャラクターデザイン:山口つばさ 板垣彰子
音楽:菅野祐悟
美術監督:滝口比呂志
美術設定:末武康光
色彩設計:橋本 賢
衣装デザイン:高橋 毅
CGディレクター:塚本倫基
撮影監督:佐藤哲平
編集:西山 茂
スーパーヴァイジングサウンドエディター:勝俣まさとし
リレコーディングミキサー:藤島敬弘
制作:A-1 Pictures / Psyde Kick Studio
配給:アニプレックス
【主題歌】
Uru「傍らにて月夜」
作詞・作曲:清水依与吏
編曲:back number
(c)東野圭吾/アニメ「クスノキの番人」製作委員会
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