外国人の賃貸トラブル率はわずか1.5%? 高齢者・LGBTQなどの「入居拒否」をなくす画期的な工夫とは|100mo! 第3回イベント開催
高齢者、障がい者、外国人など、民間賃貸住宅への入居が困難な人への取り組みを広げているSUUMO(リクルート)のプロジェクト「100mo!(ひゃくも)」。2025年11月20日に、第3回のイベントを開催しました。支援を担う企業や団体の担当者が一堂に会し、最新事例を共有。それぞれの取り組みが響き合い、次のアクションへのつながりを予感させた、当日の様子を詳しく紹介します。
■関連記事:
第二回:車いすメジャーなど、取り組みが次々と形に。高齢者、外国人など、住まいの支援が必要な人への支援をムーブメントに「100mo!(ひゃくも)」第2回イベント開催!
第一回:高齢者、障がい者、外国人など、住まいの配慮が必要な人たちへの支援の最新事情をレポート。居住支援の輪広げるイベント「100mo!(ひゃくも)」開催
2025年は「LGBTフレンドリー物件」の拡大に向けた施策を強化
「100mo!(ひゃくも)」は、「あなたも。私も。みんなも。百人百通りの住まいとの出会いを♪」をコンセプトに、高齢者、外国人、障がい者、ひとり親世帯、LGBTQ+、生活保護受給者など、住まいの確保に配慮が必要な人たちの課題に向き合うSUUMO(リクルート)のプロジェクトです。
リクルートでは、SUUMO「100mo!」プロジェクトを2021年から開始。年に1回実施してきたイベントも今回で3回目となり、会場・オンライン合わせて200人以上が参加した(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)
2025年は取り組みの一環として、6月にプライド月間「みんなで増やそうLGBTフレンドリー物件」キャンペーンを実施しました。LGBTフレンドリーのタグをつけて物件を掲載した不動産会社に対し、店頭に貼付できるステッカーやレインボーフラッグを持つスーモくんのぬいぐるみを提供。あわせて、来店時の対応から案内・契約に至るまで、LGBTQ+の当事者が安心して相談できる環境づくりのポイントをまとめた実践マニュアルを配布。現場での接客・コミュニケーションの質を高める後押しを行いました。
キャンペーンに参加した企業に配布されたレインボーフラッグを掲げるスーモくんのぬいぐるみ(写真撮影/唐松奈津子)
イベント当日は、キャンペーンを通して得た調査の結果や推進効果について共有。さらに、不動産管理会社・仲介会社など賃貸住宅に関わる企業に向けて、住まいの確保に配慮が必要な人たちが入居前・入居中・入居後にどんな問題を抱えているのかを知るためのウェビナー動画を配信していることや、全国の取り組み事例を紹介するSUUMOジャーナルの連載「百人百通りの住まい探し」についても触れました。
高齢者や外国人の入居を支える3社の取り組みを紹介!
さらに、住まい探しに困難を抱える人たちに向けて、日々の現場で実践を続ける3社を表彰し、その取り組みを紹介しました。いずれの企業にも共通していたのは、入居をためらう賃貸物件オーナーや管理会社の不安を丁寧に取り除きながら、住まいに困っている人たちの暮らしに寄り添う姿勢です。
最初に紹介したのは、愛知県を中心に高齢者の受け入れに取り組むブルーボックス。同社では、2015年頃に相次いだ高齢者の孤独死をきっかけに、オーナー側の不安が顕在化。さらに第2回100mo!イベントに参加したことが取り組みを加速させるきっかけになったそうです。
消費電力データを活用して生活パターンの異変を検知する見守りサービス「テラシテ」を導入し、カメラを使わずに入居者に万が一のことが起きた際の早期発見を可能に。孤独死保険とセットでサービスを提供することによって家主の金銭的負担や心理的不安を軽減。年間50件以上の高齢入居者の仲介を実施し、空室率の改善にもつなげています。
ブルーボックスの杉原勇樹(すぎはら・ゆうき)さん。第2回のイベントに参加して「不動産市場としても今後、居住支援が大きな潮流になるという空気感に背中を押され、当社でも自信を持って取り組めた」と話す(写真撮影/唐松奈津子)
ブルーボックスでは、見守りサービスと孤独死保険をセットで提供する仕組みを構築(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)
続く今野不動産(宮城県仙台市)は、東日本大震災後に「高齢の方がみなし仮設住宅を出た後の住まいを見つけられない」という地域課題に直面したことをきっかけに、本格的に高齢者の入居支援に着手しました。
オーナーや管理会社が高齢者の入居をためらう理由を「居室内での死亡リスク」「保証人不在」「家財処分の負担」の3つに整理し、それぞれに対応する仕組みを整備。見守りサービスと告知ガイドラインの周知による不安軽減、ニッポンインシュア社との連携による家賃債務保証・保険・見守りの一体提供、そして死後事務委任契約の締結による退去時の負担軽減など、実務に落とし込んだ解決策を構築しました。また、仙台市・リクルートと共に勉強会や交流会を開催し、他の居住支援法人(※)や不動産会社との連携を通じて、地域で支える仕組みづくりも進めています。
※居住支援法人:住宅セーフティネット法に基づき、住宅の確保に配慮が必要な人が賃貸住宅にスムーズに入居できるよう、居住支援を行う法人として各都道府県をはじめとする自治体が指定する団体等
今野不動産の本田勝祥(ほんだ・かつよし)さんのスピーチでは「リクルートが仙台市や不動産会社との間に入って動いたことで取り組みが促進された」と嬉しい言葉も(写真撮影/唐松奈津子)
仙台市やリクルートと共に勉強会や交流会を開催することで居住支援の拡大と推進に注力。エリアの課題を起点にステークホルダーをつないできた(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)
■関連記事:
東日本大震災後、仙台で高齢者の賃貸入居拒否が多発。”みなし仮設住宅”から5万人退去後、居住支援や見守りに不動産会社が奮闘 今野不動産
東日本大震災から14年ぶりの海開き、子どもたち「海遊び知らない」。仙台市唯一の海水浴場にもう一度にぎわいを、地元不動産会社の挑戦「深沼うみのひろば」
3社目は、外国人の入居支援に長年取り組む不動産会社、イチイ(東京都新宿区)です。創業者である荻野政男(おぎの・まさお)さんの経験を原点に、多言語スタッフの採用や国籍・文化差を踏まえた契約・生活ルールの説明、重要事項をまとめた覚書の作成など、入居者・オーナー双方の不安を取り除く取り組みを積み重ねてきました。
入居後も、不動産管理会社と入居者の“通訳役”として他社の管理物件にも対応するなど、トラブルの早期予防に注力。実際は外国人のトラブル発生率は1.5%と低いにも関わらず、入居問い合わせの段階で断られる現状を変えるべく、不動産会社やオーナーに向けた情報提供やセミナーを開催し、受け入れを後押ししています。
イチイの瀬谷徹平(せや・てっぺい)さんは、創業者の荻野政男(おぎの・まさお)さんと共に、外国人や高齢者など、住まいに困る人たちの支援を不動産業界全体に広げていく取り組みも行ってきた(写真撮影/唐松奈津子)
イチイは、自社で外国人の入居支援に取り組むことはもちろん、不動産業界全体に向けてマニュアル作成やセミナー開催などを通じ、ノウハウ共有に寄与してきた(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)
■関連記事:
外国人の賃貸トラブルTOP3「ゴミ出し・騒音・又貸し」、制度や慣習がまるで違う驚きの海外賃貸実情が原因だった!
高齢者の”孤独死”なくしたい! カギは「シェアハウス」「二拠点居住」、不動産会社イチイが孤独・孤立に挑む
現場のリアルとノウハウが飛び交ったトークセッション
イベント中盤は、受賞した3社によるトークセッションを実施。「取り組みのきっかけ」「ビジネスと社会課題解決の両立」などのテーマに対し、現場の経験に裏付けられた言葉が次々と飛び出しました。
トークセッションでは「取り組みのきっかけ」を皮切りに、支援を担う参加者が課題とする「支援とビジネスの両立」などについて3社の経験が語られた(写真撮影/唐松奈津子)
外国人の入居支援に長年取り組むイチイの瀬谷徹平(せや・てっぺい)さんは、「トラブルの多くは“外国人だから”ではなく“初めての日本での一人暮らしだから”起きるもの」だと強調。生活ルールや慣習の違いによる行き違いは、母国語での事前説明や覚書の工夫で大幅に減らせると語りました。また、「実際のトラブル発生率は1.5%程度なのに、検討段階で断られてしまうことが多い」と、偏見と実態のギャップに向き合う重要性について訴えました。
ブルーボックスの吉川裕一(よしかわ・ゆういち)さんは、賃貸オーナーが抱える漠然とした不安に触れながら「孤独死が“事故物件”として扱われることへの不安を、見守りサービスと保険でどう解消するかが鍵だった」と振り返ります。消費電力データを活用した見守りサービス「テラシテ」により、カメラを使わずに入居者の異変を早期察知できる仕組みを整備。また「見守りと保険をセットにすることで、家主さんの心理的な壁が一気に下がった」と、取り組みが具体的な成果につながった背景を明かしました。
行政や居住支援法人との連携を深めてきた今野不動産の本田勝祥(ほんだ・かつよし)さんは、「不動産会社だけでは支えきれない課題がある。だからこそ地域でつながることが大切」と語り、震災後にみなし仮設住宅を退去した後の入居対応で苦労した気づきから、行政・福祉・不動産の連携に発展していった経緯を紹介しました。また、「困ったときに相談できる先があると、オーナーも安心して高齢者を受け入れやすくなる」と、地域全体で支える仕組みづくりの重要性も強調しました。
3社を交えたトークセッションでは、会場からも「国籍を理由に断られるケースへの対応は?」「高齢者が亡くなった後の手続きは?」など実務に踏み込んだ質問が相次ぎ、現場のリアルと温かいエピソードが交じり合う、活発な意見交換の時間になりました。
トークセッション後の質疑応答では会場からの質問が次々と寄せられた。登壇した3人は、和やかに笑いも交えながら回答(写真撮影/唐松奈津子)
制度改正のポイントを踏まえ“これからの居住支援”を語り合う
後半では、国の政策として居住支援を推進する国土交通省と全国居住支援法人協議会の視点から、これから目指す居住支援の方向性について語られました。
まず登壇した国土交通省 住宅局 安心居住推進課 課長の田中規倫(たなか・のりみち)さんは、2025年10月に施行された改正住宅セーフティネット法のポイントを整理。「大家さんと要配慮者が安心して利用できる市場環境をどう整えるかが重要」と強調しました。相続手続きの簡素化や残置物の処理、家賃債務保証の認定制度、そして新たに創設される「居住サポート住宅」など、民間賃貸住宅を活用しやすくするための制度の中身が紹介されました。
2025年10月に改正、施行された住宅セーフティネット法の目玉の一つ「居住サポート住宅」は、見守りなどをセットにし、必要に応じて福祉サービスにつなぐ住まい(資料/国土交通省)
国土交通省 住宅局 安心居住推進課 課長の田中規倫(たなか・のりみち)さん(写真撮影/唐松奈津子)
田中さんの講演後に行われたNPO法人抱樸の理事長・全国居住支援法人協議会 共同代表副会長の奥田知志(おくだ・ともし)さんとのトークセッションでは、 “不動産会社が制度をどう活用できるか”をテーマに意見が交わされました。「1住戸から始められるのが居住サポート住宅の使いやすさ」(国交省 田中さん)、「居住サポート住宅は、20戸のうち1戸が要支援者向けの専用住宅なら建物全体が改修補助の対象になる」(抱樸 奥田さん)など、実務上のメリットを具体的に紹介したことで、会場全体が納得感に満ちた空気で包まれました。
さらに奥田さんは「家族に代わる“気づき”と“つなぎ”の仕組みを地域でどうつくるかが問われている」「困っているのは困窮者だけではない。“見守りが必要な人すべて”が対象となることがこの制度の強み」といった居住支援そのものの意義やポイントも共有。住宅と福祉の連携、行政との関係づくり、見守り体制のつくり方など、現場に直結する示唆が多く、これからの居住支援の広がりを予感させる時間となりました。
NPO法人抱樸 理事長、全国居住支援法人協議会 共同代表副会長の奥田知志(おくだ・ともし)さん(写真撮影/唐松奈津子)
「現場の負担が増えないか?」リアルに向き合う人同士の気づきと連携
会場を移動して催された懇親会では、現場で支援を行う立場だからこそ出てくる率直な声が多く聞かれました。「万が一の不安に寄り添う姿勢が大切だと気づいた」「外国籍の人の入居受け入れを全社方針として強めるきっかけになった」(いずれも不動産管理会社)など、今回の学びを実務に活かしたいという前向きな意見が相次ぎました。
一方「支援に踏み込むほど現場の負担が増えるのでは、という懸念もある」(不動産仲介会社)、「制度は理解できたが、実務を誰が担うべきかがまだ整理しきれていない」(福祉系事業者)といった不安や課題を指摘する声も。前向きな期待と共に実務的な悩みも語り合うことで、次の一歩を進めるための具体的なヒントを模索する機会となったようです。
懇親会では、賃貸オーナーや不動産会社のほか、NPO団体や福祉事業者などさまざまな立場で支援に関わる人たちが一堂に会した(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)
イベントの締めくくりには、リクルート 賃貸Division Vice Presidentの安藤萌(あんどう・めい)が、今回のイベントやこれまでの取り組みについて振り返りました。
「住まい探しに不安を抱える人の“百人百通り”の状況に向き合うことが、このプロジェクトの原点でした。高齢者でも健康状態はさまざまで、外国籍の人も日本の生活に慣れた人から初来日の人まで幅がある――そうした個別性への理解が、100mo!の方向性をつくったと言えます。
そして各社が持つ強みを発揮しながら課題に向き合い、ビジネスチャンスとして捉えて取り組むことが、不動産業界全体の発展につながります。力を持ち寄れば大きな力になる、配慮が必要な人への取り組みは結果的に“みんなが嬉しい”につながる、ということを信じてSUUMOとしてもできることを増やし続けたいと思います」(リクルート 安藤)
当日の出展ブース。リクルートも一丸となって「SUUMOとしてもできることを増やし続ける」意気込みだ(写真撮影/唐松奈津子)
今回のイベントでは、改正住宅セーフティネット法の要点や受賞3社の取り組み事例、そして現場からの率直な声が集約され「住まいに不安を抱える人への支援をどう広げるか」を前向きに考える場となりました。実務における工夫や課題について相互に語り、不動産と福祉とが連携する意義が一層クリアに。次のステップとなるアイデアや新たなつながりが自然と生まれる空気が広がりました。
この場で共有された気づき、そして全国で日々、支援に取り組む人びとの努力と工夫が、住まいに困る人の“安心して暮らせる明日”につながっていくことを心から願います。
●取材協力
・株式会社ブルーボックス
・今野不動産株式会社
・株式会社イチイ
・国土交通省
・全国居住支援法人協議会
・認定NPO法人抱樸
~まだ見ぬ暮らしをみつけよう~。 SUUMOジャーナルは、住まい・暮らしに関する記事&ニュースサイトです。家を買う・借りる・リフォームに関する最新トレンドや、生活を快適にするコツ、調査・ランキング情報、住まい実例、これからの暮らしのヒントなどをお届けします。
ウェブサイト: http://suumo.jp/journal/
TwitterID: suumo_journal
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。
