発達障害の中学受験、賛成? 反対? 愛する我が子を追い詰めない選択のポイント

発達障害の中学受験、賛成? 反対? 愛する我が子を追い詰めない選択のポイント

 あなたは中学受験に賛成の立場でしょうか。それとも反対の立場でしょうか。「教育虐待」や「教育格差」といったキーワードがメディアを賑わせる昨今、当たり前のように中学受験をする地域と、そうではない地域では情報格差が著しくなっています。お受験ブームを横目で見つつ「自分の子にさせようとは思わない」あるいは「日々の子育てに精一杯で、受験だなんて先のことは考えられない」という人のほうが多いかもしれません。

 何を隠そう、今回ご紹介の本書『発達障害っ子の中学受験』の著者・モンズースーさん自身も、そんな受験ブームとは縁遠い親の一人でした。本書の「あとがき」で以下のように打ち明けています。

「中学受験には、『賛成派』『反対派』など、さまざまな意見がありますが私にとって、中学受験は『都会に住む勉強ができるお金持ちの子が受けるもの』…良くも悪くも自分とは無縁の別世界の話でした」(本書より)

 前著『生きづらいと思ったら 親子で発達障害でした』では、画一的な公教育に息苦しさを覚えた自身の過去も描いたモンズースーさん。本書では「私は中学受験を『推奨したい』というわけではありません。ですが、子どもが過ごす居場所の選択肢は多いほど良いと考えています」(本書より)と述べ、4つの家庭の受験ストーリーを紹介しています。

 例えば、療育手帳を所持しているユイトのケース。小学校入学時は知的級(知的障害特別支援学級)の判定だったため、「診断されたのに受け入れられない私はダメな母親なの?」(本書より)と、ユイトのママは不安を募らせた日々だったといいます。しかし手厚い環境を選んだことが好循環を生み、知的にもグンと成長したことから、知的級から情緒級(自閉症・情緒障害特別支援学級)に転籍し、やがて学習面も周囲に追いついていきます。

 受験をする決め手となったのは、小4のときに担任教諭が言った「このままなら中学は普通級も検討できそうですね」(本書より)という一言でした。以前に先輩の療育ママから聞いた、支援級から中学受験を突破して私立中に行く子どもも珍しくない、という話を思い出したママは、さっそく調べ始めます。「入試が突破できてもその後の授業についていけないと困るから」(本書より)と、本人のモチベーションを上げる学習方法を模索し伴走、みごと第一志望の私立中に合格したのです。ユイトの場合は、目先の合格・不合格よりも、入学してからの学校生活を見据えて能力を見極め、とにかく無理のない偏差値帯の学校を選んだことが奏功したと言えるでしょう。

 実際に、本書の「教えて!発達のこと」と題した医療コラムでも、以下のように書かれています。

「いわゆる『いい学校』に行っても、下位をさまよって6年間過ごすのはなかなかつらいものです。学校選びの際に親御さんはよく『この子が行きたいって言うんです』とおっしゃるのですが、子どもは親に忖度します。『勉強して〇〇中に行きたい』などとは言うものの、それが果たして本当に本人の願いなのかは、よく考える必要があるでしょう。ですから、迷ったら楽なほう。成績でいうならば真ん中よりも上にいられて、余裕をもってニコニコして過ごせる学校に行くことをお勧めします」(本書より)

 受験に対して真摯になればなるほど、我が子への期待は大きくなるばかり。自分でも気づかないうちに親は子どもを追い詰めてしまいがちです。しかし、子どもの立ち位置を、ときにシビアに見つめ、世間でいうところの「いい学校」ではなく、仮に偏差値を数ポイント下げたとしても、子どもがありのままで通える学校を選ぶことが、成功のカギと言えるのではないでしょうか。

 本書では、薬物療法をすべきか夫婦で意見が割れるケースや、思春期の不安定さも相まって抜毛症になったケースなど、深刻な事例も取り上げています。登場するどの家庭も、受験に対して貪欲に情報収集し、困難な壁も乗り越えることができた、いわば情報強者と言えます。

 とかく生きづらさを抱える発達障害児の進路選択に当たっては、親が多様な価値観を許容し、より多くの情報を集めることがリスクヘッジになります。中学受験を駆け抜けた親子の素顔に迫った本書は、受験に限らず発達障害児の子育てに悩む家庭にとっても、羅針盤となる一冊と言えるでしょう。

[文・山口幸映]

  1. HOME
  2. 生活・趣味
  3. 発達障害の中学受験、賛成? 反対? 愛する我が子を追い詰めない選択のポイント

BOOKSTAND

「ブックスタンド ニュース」は、旬の出版ニュースから世の中を読み解きます。

ウェブサイト: http://bookstand.webdoku.jp/news/

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。