脳梗塞治療薬の新たな可能性!創薬ベンチャーがつくる新薬とは?

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 10月29日は世界脳卒中デーとなっており、世界各地で脳卒中への意識を高めるイベントが行われています。そんな日に脳梗塞治療薬の創薬ベンチャー・株式会社ティムスによってプレス向け事業説明会が開催されました。

 急性期脳梗塞は時間との戦いで、ほぼ唯一の選択肢となる治療薬は、発症後4時間半以内の使用に限られるという状況です。そんな状況の中、投与可能時間が従来の約3倍に伸びる新薬の可能性があるということで、事業説明会では詳細が語られました。

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 事業説明会では、株式会社ティムス代表取締役社長若林拓朗氏から、脳梗塞治療薬の新薬候補「TMS-007(ティーエムエスゼロゼロセブン)」の開発を進めている同社についての概要説明がなされつつ、脳梗塞についても解説がなされます。

 脳梗塞と脳出血を合わせた脳卒中は、世界の死亡原因第2位となっており、年間発症者数は780万人ほど。日本でも第4位となり年間発症者数は約31万人を数えます。生存できたとしても片麻痺や言語障害・記憶障害など深刻な障害を引き起こす恐れがあります。

 脳梗塞治療薬は「t-PA」と呼ばれるタンパク分解酵素ものが、唯一の急性期脳梗塞治療薬となっており、原則的に発症後4時間半以内に投与しなければならず、脳出血のリスクも。そこで長年にわたって新しい治療薬が待ち望まれているという現状が語られました。

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 「TMS-007」についての詳細は、株式会社ティムス取締役会長・蓮見惠司氏より説明。「TMS-007」は、身体にもともとある血栓を溶かす機能を手助けして、必要なときだけ働き、出血も抑えることができるという。そんな「TMS-007」は、黒カビが作る新規化合物群SMTPのメンバーで、東京農工大学で蓮見氏が発見した化合物。蓮見氏によって1Lで10g程度の生産性アップを実現し、血栓溶解の促進や炎症の抑制の効果があるとのこと。

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 発症後12時間までの脳梗塞患者に対して治験を行い、有効性および安全性が示唆されていますが、現在グローバル治験が2029年末まで実施されています。蓮見氏は「多くの脳梗塞患者に適応でき、高度医療が普及していない施設でも投与できることから、後遺症を減らし多くの命を救うことにつながる」と「TMS-007」の可能性について言及されました。

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 続いて蓮見氏と、日本医科大学大学院医学研究科神経内科学分野大学院教授/日本医科大学付属病院脳神経内科部長 脳卒中集中治療科部長須田智氏を交えてのトークセッションと質疑応答が行われました。

 トークセッションでは、血管が老いるのは加齢が重要なファクターとなるが、お酒や喫煙などの因子によって血管が老いて脳梗塞になる可能性があること、日常生活で脳梗塞防止のため意識しておくことは? という質問に対して「最低限の検診を行なって、そのフィードバックを受けて行動するということが大事。お酒の飲み過ぎや禁煙、メタボ改善など気を付ける必要がある。ストレスを溜め込まないこと、運動を継続することが大事である」ことなどが語られました。

 事業説明会の終わりには、「まったく新しい薬であり、これが光明になることを信じて開発を進めていく」と蓮見氏、「脳梗塞治療のパラダイムシフトが起きるのではないか」と須田先生より締めの言葉が。脳梗塞治療薬の新たな可能性として、「TMS-007」が脚光をあびるのか、ぜひこの機会に注目しましょう。
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