【ライブレポ】CYNHNが描く、新たな“青”のカタチ──「CYNHN ONE MAN LIVE 2025 November First -111」

2025/11/08 12:00 OTOTOY

CYNHNはこの夜、新たな“青”を描いた。

2025年11月1日（土）、恵比寿ザ・ガーデンホールを包んだのは、静寂と熱狂のあいだに揺らめく“青”の空気だった。CYNHNのワンマンライブ「CYNHN ONE MAN LIVE 2025 November First -111」。その名が示すように、“1”が三つ並ぶ特別な日、4人はこれまで描いてきた青の物語を、さらなる深度へと更新してみせた。

会場が暗転すると、オープニング映像が流れ始める。メンバーがひとりずつ登場するなか、中央に置かれたのはブルーのケーキ。誕生日か記念日のような光景が、どこか寓話的に見えた。だが、そのケーキを食べようとした瞬間、突如としてグリッチノイズが走る。デジタルの歪みの中から、CYNHNのライブは静かに、しかし確かに始まった。

【ライブレポ】CYNHNが描く、新たな“青”のカタチ──「CYNHN ONE MAN LIVE 2025 November First -111」

オープニングを飾ったのは「飴玉」。正面に張られた紗幕にはリリックが映し出され、歌詞が視覚的に浮かび上がる。まるで楽曲に込められた想いをそのままスクリーンに投影したかのように、言葉と音が共鳴していく。続く「サファイア」では青い宝石の意匠が映し出され、美しく輝く。高速BPMに乗る4人のボーカルは、もはや“青の結晶”そのもののようだった。

そして綾瀬の咆哮とともに紗幕が降り、ステージにはCYNHNとバンドメンバーが姿を現す。この瞬間、恵比寿の空間は音の奔流に変わった。「イナフイナス」では観客の声を巻き込み、「Tokyo stuck」、そして「ごく平凡な青は、」と続くブロックで、序盤にしてクライマックス級の盛り上がりを作り出した。

MCを挟み、青柳透が「これからも一緒にわるいことしましょう」と微笑み、そのまま突入したのは「わるいこと」。ポップなリズムのなかに、切なさを感じさせるヴォーカルの絡みが印象的だ。続く「アンフィグラフィティ」ではキュートな表情を見せ、ファンを柔らかく包み込む。そして、バッキバキのスラップベースが炸裂する「キリグニア」へ。音の鋭さと歌の強さがせめぎ合う、CYNHNの“攻め”の部分が全開になったブロックだった。

【ライブレポ】CYNHNが描く、新たな“青”のカタチ──「CYNHN ONE MAN LIVE 2025 November First -111」

ライブは中盤、「インディゴに沈む」をバラードアレンジで披露。4人それぞれの歌声が丁寧に重なり合い、息遣いまでが音楽の一部になる。CYNHNの音楽において“歌う”とは、感情を表現する行為であると同時に、感情そのものが音へ変換されるプロセスなのだと感じた。しっとりとした「バニラ」に続き、「AOAWASE」ではクラップが会場を包み込み、光が交錯する中で熱い一体感が生まれる。切なさやエモーショナルさに定評のある彼女たちだが、この熱いライブパフォーマンスもまた、CYNHNの魅力のひとつだった。

バンドセッションでは、全ての楽器がぶつかり合うような即興的アンサンブルが展開。驚くべきは、そのメロディーラインの強さと構築性だ。「この瞬間から新しいCYNHNの音が生まれている」と感じさせる、熱く実験的な時間だった。セッションの熱が残る中、メンバーが再び登場。チェック柄の新衣装に着替えた4人が披露したのは、世に溢れる「カワイイ」に対するCYNHNなりの解答を提示する最新曲「もうだいじょうぶ」。ダークな世界観のなかに、愛の重さを表現する力はさすがのひとことだった。

【ライブレポ】CYNHNが描く、新たな“青”のカタチ──「CYNHN ONE MAN LIVE 2025 November First -111」

後半戦、「ノミニー」でミラーボールが輝くと、イントロからオーディエンスのボルテージは最高潮に。「ここにいるメンバーと皆さんで、ひとつになりましょう！」という呼びかけに、客席から大きなレスポンスが返る。さらに「水生」「ラルゴ」と続くキラーチューンで、CYNHNは青い情熱を最大限に解き放った。

そして、青柳の「この場所を選んで、ここに集まってくれたこと、そして、私たちがここに立って歌っていること。当たり前じゃないなって改めて感じています。9年目の私たちに、こんな素敵な宝物がでいっぱいの景色を見せてくれて本当にありがとう。これは、私たちと、あなたの歌です。」という熱いメッセージを経て、「いいおくり」へ。会場全体を包むような大シンガロングが起こり、続く「くもりぎみ」では、その余韻を優しく引き継ぐように歌い上げる。「最後の一曲、あなたの呼吸で歌います。」という綾瀬志希の言葉とともに始まった本編ラスト「息のしかた」では、4人の歌声がひとつの呼吸のように重なり合い、静かな余韻を残した。

【ライブレポ】CYNHNが描く、新たな“青”のカタチ──「CYNHN ONE MAN LIVE 2025 November First -111」

アンコールでは「2時のパレード」、そしてラストナンバー「楽の上塗り」をパフォーマンス。軽やかで幸福なサウンドの中、会場全体がハッピーオーラに包まれていく。青の深淵を見せながらも、最後には明るい光で締めくくる――それが今のCYNHNらしさなのだと感じた。

痛みも、迷いも、希望も、すべてを抱きしめて輝く色。それが、CYNHNが描く青だ。そして、この青は、まだ終わらない。これからも、CYNHNとともに呼吸し続けるのだ。

【ライブレポ】CYNHNが描く、新たな“青”のカタチ──「CYNHN ONE MAN LIVE 2025 November First -111」

ライブ情報

「CYNHN ONE MAN LIVE 2025 November First -111」セットリスト
2025年11月1日 @恵比寿ザ・ガーデンホール

01. 飴玉
02. サファイア
03. イナフイナス
04. Tokyo stuck
05. ごく平凡な青は、
06. わるいこと
07. アンフィグラフィティ
08. キリグニア
09. インディゴに沈む
10. バニラ
11. AOAWASE
12. もうだいじょうぶ
13. ノミニー
14. 水生
15. ラルゴ
16. いいおくり
17. くもりぎみ
18. 息のしかた
＜アンコール＞
19. 2時のパレード
20. 楽の上塗り