オーディションで選ばれたtimeleszがもたらした「旧ジャニーズ体制」からの脱却
今、エンタメ界で最も勢いのあるアイドルグループの一つがtimeleszだ。今年2月に5名の新メンバーが加入して8人体制となった彼らは、わずか数ヶ月で民放キー局に3つの冠番組を獲得するなどテレビ界を席巻している。
躍進の最大の要因は、オーディション「timelesz project」という新しい加入システムにある。応募者は1万8922人にのぼり、昨年5月の一次審査から今年2月まで約9ヶ月をかけ、寺西拓人、原嘉孝、橋本将生、猪俣周杜、篠塚大輝という5名が選ばれた。狭き門をくぐりぬけて新メンバーとなった過程を知るファンにとっては「自分たちが見出した」という実感があるはずで、その熱量は従来のグループとは明らかに違う。
かつてはSTARTO ENTERTAINMENT(旧ジャニーズ事務所)といえば、創業者だったジャニー喜多川氏の一存でグループが結成され、メンバーが選ばれていた。だが2019年にジャニー氏が87歳で死去し、事務所が解体・再編された今、timeleszのこの選出方法は新時代の象徴と言えるだろう。
注目すべきは新メンバーの顔触れだ。原嘉孝、寺西拓人の2人はもともとSTARTO所属だが、橋本将生、猪俣周杜、篠塚大輝の3人は一般参加から選出された新人で、ファンから「ひよこ組」と呼ばれて親しまれている。特に篠塚は現役の大学生である。この「未知の才能」という要素が、テレビ局にとって魅力的なのだ。つまりは成長過程を視聴者と共有できるコンテンツとしての価値がある。
実際、各局の動きは目覚ましい。フジテレビは4月から『タイムレスマン』、日本テレビは10月から『timeleszファミリア』、TBSは10月に初のゴールデン特番『timeleszの時間ですよ』第2弾を放送。まさにTBS、フジ、日テレが競うようにtimeleszを囲い込んでいる。そうした冠バラエティ以外の露出も急増している。2月の『ニノさん』で8人全員がバラエティ初出演を果たすと、『上田と女が吠える夜』には新メンバーが3月以降何度も出演。『ザ!鉄腕!DASH!!』にも篠塚が登場するなど、着実に認知度を高めている。
商業的な成功も見逃せない。6月リリースのアルバム「FAM」は64万枚以上を売り上げ、ビルボード総合アルバムチャート1位を獲得。10月には原、篠塚が、先輩で前任のKing & Prince永瀬廉に代わり健栄製薬「ヒルマイルド」のCMにも起用されるなど、順調な滑り出しである。
背景には、他グループの伸び悩みという事情もあるだろう。Snow ManやSixTONESはそれぞれレギュラー冠番組を持つものの、WEST.、Kis-My-Ft2、Hey! Say! JUMPといった先輩グループは停滞気味である。テレビ局側も新しい風を求めていたタイミングだったのではないだろうか。
いずれにしてもtimeleszの躍進は、オーディションという参加型システム、未知の才能への期待、そして新時代のエンターテインメントへの需要が重なった結果と言える。この勢いがどこまで続くのか、今後も注目である。
(執筆者: 田中周作)
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