ドバイの浮かぶレジェンド高級船ホテル「クイーン・エリザベス2」でいただく「あのスープ」

英国の栄光を背負い、世界を駆け巡ったQE2の航跡

1969年、英国スコットランドのクライドバンクで建造されたクイーン・エリザベス2(以下、QE2)は、全長293.5メートルを誇る巨艦、当時の英国王室の富と技術力を象徴する存在でした。

英国の主要航海会社によって運航されたQE2は、ニューヨーク、カリブ海、オーストラリアなど世界各地への航路を開拓し、約39年間の運航期間で地球を約20周に相当する約560万キロメートルもの距離を航海しました。
その船上には、マイケル・ジャクソンやネルソン・マンデラといった歴史的著名人も数多く乗船し、まさに「動く社交場」としての役割も果たしました。

<写真:ドバイの夜景とクイーン・エリザベス2ホテル全景 Visit Dubai>

QE2の歴史は、平穏な航海ばかりではありませんでした。1982年のフォークランド紛争においては、その巨体と高速性を活かし、非武装の兵員輸送船として英国軍に徴用されるという、軍事的役割を担う緊急事態も経験しています。

また、日本でもニュースになったので覚えている方もいるかもしれませんが、2000年7月4日、20世紀最後の米国独立記念日を祝う国際観艦式が行われたニューヨーク港で係留中の海上自衛隊の練習艦「かしま」に接触するという稀有な事故も発生しました。
この際、QE2の乗員が謝罪のために「かしま」を訪問した際、「かしま」の当時の艦長が「女王陛下にキスされて光栄に思っております」と返答したというエピソードは、日英両国間のウイットに富んだ爽やかな交流として地元メディアのニュースにもなっていました。

20世紀末から21世紀初頭にかけては、航空機による国際移動が主流となり、定期的な大西洋横断航海の需要は減少の一途を辿ります。豪華クルーズ船としての新たな活路を見出したQE2も時代の波には逆らえず、2008年に現役を引退することになります。しかし、この伝説的な船の運命はそこで終わりませんでした。急速な発展を遂げる中東の経済都市ドバイが、QE2の歴史的価値と象徴性に注目したのです。

<写真:クイーン・エリザベス2ホテルの中に入るのも搭乗感>

ドバイの「浮かぶレジェンド高級船ホテル」

2008年の最終航海を経てドバイへと向かったQE2は、2018年にドバイのラシッド港に恒久的に係留され、世界でも類を見ない豪華客船ホテルとして再生を遂げました。これは、カタールでのワールドカップ期間中にクルーズ船が一時的な宿泊施設として活用された事例(MSCワールド・ヨーロッパ号)とは異なり、QE2が完全にドバイのラシッド港に固定されたドバイの常設ホテル「クイーン・エリザベス2ホテル」として再生を果たしました。

内部の様々な施設はそのままに、パブ、ビュッフェレストラン、ラウンジ、結婚式会場まで持つ「浮かぶホテル」と形容できる高級ホテルに変身することになりました。

<写真:クイーン・エリザベス2前部と取り外された巨大なスクリュー>

客室と宿泊料金帯

クイーン・エリザベス2ホテルの客室はスタンダードからスイートまで多彩で、都心部に比べて部屋の価格がそこまで金額が高くないのがポイント。なのでキャビンのスタンダードなら簡単に泊まることができます。

<写真:全力で船室気分を楽しめるホテルの部屋 ※ベッド上のブレイバーンタオルは著者の私物>

<写真:カードキーと合わせてQE2の内部詳細が読める専用冊子付き>

気になる客室とその宿泊料金帯ですが、QE2の客室はスタンダードからスイートまで多彩で、キャビンはそこまで金額が高くないのがポイント。部屋はいずれも木製インテリアに囲まれ、ヴィンテージと機能性が共存しています。

テレビやエアコンは完備され、クラブルーム以上はラウンジアクセスやバスタブもあるそうです。部屋数がすごく多いのと構造が少し複雑なため、普通のホテルよりも移動が大変かもしれませんが、船の中を探検しているかのようなドキドキ感があります。QE2の内部を楽しむことはホテルを楽しむ以上の価値があると言えます。

<写真:普通のホテルにはない狭い廊下も一つの醍醐味>

<写真:船室間を移動する階段も特徴的>

<写真:エレベーターに地球を携える獅子のロゴも見どころ>

<写真:船の前の建物はエントランスと記念館>

<写真:自由に読める本とクイーン・エリザベス2の歴史に関する数々の資料>

ホテルとしての機能に加え、QE2はその歴史を伝える博物館としての側面も持ち合わせています。ホテル受付近くにある記念館には、当時の占測器や食器、航海記録、そして寄港した国々で贈呈された貴重なコレクションが展示されています。
特筆すべきは、日本からも鹿児島県知事から寄贈された日本の甲冑が船内に展示されている点であり、QE2が世界各地と繋がっていた証となっています。

この独特の空間は、訪れる人々に非日常的な体験と、船が持つ物語への没入感を与えます。

<写真:立派な甲冑と船内に置かれるようになった謂れを知ることができます>

また複数ある入り口の中の一つは船内の車用エレベーターと高級車の展示を見ることもできます。

<写真:船内へ車を積み込む車両エレベーターと高級車>

劇場や「Golden Lion」と呼ばれるドバイ最古のパブとなった本格的な英国パブ、さらには元王室用部屋を再現した豪華なスイートルームなど、かつての豪華客船としての面影を随所に感じることができます。
静かで重厚感のある船内は、リゾートの喧騒から離れて、特別な旅の体験を求める旅行者にもおすすめの空間です。

<写真:船の模型と当時使われていた文物>

<写真:船が好きな方におすすめの展示、船体構造模型>

さてそんな素敵なクイーン・エリザベス2ホテルですが、やはりホテルといえば朝食が気にかかるところ。QE2ではどんな朝ごはんが出てくるのでしょうか?

QE2の朝ごはんは普遍的かつ正統なビュッフェスタイルレストラン。洋風のメニューやアラブ風のメニューをロゴ入りの食器を用いて、海辺の爽やかな朝と窓に映るデッキの風景でいただく素敵なスタイルです。

<写真:朝食をいただく船の食堂>

しかし、そんな中、そう! この大英帝国の香りがまだ残るこの豪華客船の中にまさか! のスープがありました。

そこに鎮座する大きいポットの脇にクイーンエリザベスのロゴと共に描かれた「Miso Soup」

大きいポット脇、クイーンエリザベスのロゴ横に書かれているのは、 「Miso Soup」

<写真:ポットに鎮座する味噌汁

そう、ミソスープ、おみおつけ、味噌汁です。

<写真:遠目で違和感はないが、やはり味噌汁である>

「おしゃれ豪華客船にモーニング味噌汁だと…?」若干混乱しつつ周りに目をやると“みそ汁の具材”として、キングシュガー(キング?)、ブラウンシュガー、アーモンド、フライドオニオン、チリペッパー、そしてTOFU(豆腐)が並んでいます。これらを加えることができてしまう、イギリスの味噌汁は正直、未知数。
いや、味変の幅が大きすぎるなぁ……!豊富な味噌汁の具とスパイスのラインナップに心躍ります。…いや味噌汁に砂糖とか正気か!?

<写真:味噌汁用?の数々の調味料>

ここで日本人としては勝手な使命感を持って、この味噌汁を飲むべきではないでしょうか?
──いや、ここは飲むべき。

<写真:おしゃれなロゴ入りの食器に注がれた味噌汁>

おしゃれな器に味噌汁を掬(すく)ってみたところ、まぁ香りは味噌の香りがします。具材は一旦シンプルに豆腐のみ。そのままの味をいただこうと思います。(初手からブラウンシュガーとアーモンドを味噌汁にぶち込む選択肢はないよね)
イギリスの味覚が世界でどう思われているのか、などを思い出しながら味噌汁をいただいてみましょう。いただきます!

さて、実食!!……うん、お味ですが……なんかこうお味噌汁…全体的にもったりしているような…とろみが強く言うなれば片栗粉をちょっとだけ溶かしたようなスープの食感。

味噌の味は全体的に薄め。なるほど、味変をして調整する前提のMiso Soupなのかもしれない。異国には異国の味噌汁がある、色々と考えさせられる味でした。
その一椀の味噌汁に、歴史も文化もつながり漂う時間、味噌汁を啜りながらデッキの風景を見ながら優雅な時間を食堂で過ごしました。
とろみのある薄い味噌汁……正直そこまで美味しくは(以下略)。

どんな経緯を経て味噌汁にチリやフライドオニオンを入れる発想になったのかわからないですが、QE2の中でいただくその一椀の味噌汁に、長い豪華客船の歴史と文化の繋がりを感じる朝の爽やかな朝食会場でした。

<写真:素敵な味噌汁でした>

<写真:食堂の窓から見えるデッキ、季節によっては外でも食事が可能>

こちらのホテル、またドバイの中心地からやや離れていることで、喧噪を避けた静寂と特別感も味わえます、ただ同時に街から少し離れていることから買い物や街中に出るのは一苦労あるかもしれませんが一風変わった空間を楽しみたい、船が好きな方、など様々に多くの人たちが楽しむことができる「クイーン・エリザベス2ホテル」、こちらドバイをご訪問する際にモーニングのお味噌汁と合わせてぜひ宿泊いかがでしょうか?

朝食はさておき、静かで重厚感のある船内は、リゾートの喧騒とはちょっと違う旅を楽しむには最適。またドバイの中心地からやや離れていることで、喧噪を避けた静寂と特別感も味わえます、ただ同時に街から少し離れていることから買い物や街中に出るのは一苦労あるかもしれない、そんなホテルのご紹介でした。

<写真:こちらのホテル、航海気分を味わいたい方はぜひ!>

最後に、ホテル内には豪華客船が辿った航路の中で訪れた各港で贈呈されたコレクションがありますが、その中に鹿児島県知事から寄贈された日本の甲冑も船内にあるのでぜひ見ていただければと思います。甲冑に関する歴史も読むことができますし、当時の写真なども調べることができます。歴史好きの方、船が好きな方、一風変わったホテルを楽しみたい方、皆さんきっと楽しむことができるホテルクイーン・エリザベス2ホテル、ぜひいかがでしょうか?

クイーン・エリザベス2
伝説の水上ホテルに乗船してタイムスリップ体験

ドバイ観光局より:https://www.visitdubai.com/ja/places-to-visit/queen-elizabeth-2 [リンク]

(執筆者: 鷹鳥屋明)

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