「なんか胃がムカムカ、キリキリする…」そんなとき、薬局・ドラッグストアで買える薬の選択肢が増えてるって知ってた?

仕事のストレス、不規則な食事、飲み会続き……。気がつくと胃の調子が悪くて「病院に行くほどでもないけど、何か対策したい」と思うこと、ありませんか?
実は2025年、薬局・ドラッグストアで薬剤師に相談できる市販薬の選択肢が大きく広がっているんです。その背景には「スイッチOTC」という制度により、これまで医療機関でのみ処方されていた成分が市販薬として利用可能になったことがあります。
アリナミン製薬が今年8月に発売した、国内で初めて市販薬にプロトンポンプ阻害薬(PPI)の成分ランソプラゾールを配合した胃腸薬「タケプロンs」を例に解説します。
※取材協力:アリナミン製薬
「スイッチOTC」って何? 医療機関で処方されている薬の成分が市販薬でも使用できるようになる仕組み

「スイッチOTC」とは、これまで医療機関でのみ処方されていた医療用医薬品の成分を、薬局・ドラッグストアで購入できる市販薬(OTC医薬品)に転用することです。
政府は2023年12月に「海外2か国以上で市販化されている医薬品は原則として2026年末までに国内でも市販化する」という目標を設定。また、2024年6月の骨太の方針では、スイッチOTC化の推進やセルフメディケーション(自分で健康管理すること)の推進が政策として明記されています。
「スイッチOTC化が進むことで多様なメリットがあると考えています。忙しいなど様々な状況で医療機関を受診しづらい方もいらっしゃると思いますが、必要な薬を市販で入手できるようになることで利便性が向上し、自己対処できる選択肢が広がります。一方で、医療機関の負担軽減という側面もあり、特に医師の負担が集中する地方などにおいては、より重症者への対応に集中できるようになると思われます」(アリナミン製薬)
スイッチOTC化された「PPI」って何? 従来の胃腸薬とはメカニズムが違う選択肢
そんなスイッチOTC化の対象のひとつとなった「PPI(プロトンポンプ阻害薬)」は、胸やけや胃痛の原因となる胃酸分泌の最終段階の役割を担う「プロトンポンプ」という部分に作用する薬で、従来から薬局やドラッグストアで購入できる胃腸薬とは作用メカニズムが異なります。
「従来の薬局で購入できる胃腸薬のうち“制酸薬”と呼ばれるものは、分泌された胃酸を中和する働きで、胃酸の分泌そのものを抑制する作用はありませんでした。
もうひとつ主流になっている“H2ブロッカー”は、胃酸の分泌を抑える作用をもちますが、胃粘膜にある壁細胞の胃酸分泌に関与する3つの神経伝達物質(ヒスタミン、アセチルコリン、ガストリン)のうち、1つ(ヒスタミン)をブロックすることで胃酸分泌を抑制する効果を示します。
PPI(プロトンポンプ阻害薬)はその名の通り、胃酸分泌の最終段階の役割を担うプロトンポンプ自体の働きを抑える作用があるため、強い胃酸分泌抑制作用を示します」(アリナミン製薬)

壁細胞内にあるプロトンポンプを、胃酸を胃の中に出す「蛇口」の役割に例えるならば、PPIは蛇口を閉めて胃酸の分泌を抑える、といったイメージです。
このメカニズムの違いにより、薬剤師と相談できる選択肢の幅が広がったと言えます。
「従来の市販の胃腸薬と作用の異なる医薬品なので、そういったものが自己対処の選択肢として追加されたのは大きなメリットだと思います。私たちがPPIの成分ランソプラゾールを配合した市販薬タケプロンsを発表した際、もともと医療用のタケプロンを服用していた方からは、市販で購入できるようになったことに対する反響が多く寄せられました。また、薬剤師の方々からも、PPIの登場で症状にあわせて紹介できる薬の選択肢が増えたことを喜ぶ声が聞かれました」(アリナミン製薬)
医療⽤と同じ成分を配合したPPIの胃腸薬「タケプロンs」、購入には薬剤師から説明を受けることが必要

2025年8月に発売されたアリナミン製薬の「タケプロンs」は、ランソプラゾールというPPIの成分を国内で初めて一般用医薬品に配合した製品です。

「タケプロンsは効き目の強さ、持続性、飲みやすさが特徴です。水なしで飲める口腔内崩壊錠を採用し、口の中ですばやく崩壊したあと、有効成分ランソプラゾールを胃酸から守り、胃から腸へ速やかに移行させるための特殊コーティングを施しています。1日1回1錠で24時間効果が持続するため、つらいと思った時にサッと飲めるのが特徴です」(アリナミン製薬)
タケプロンsは「要指導医薬品」に分類されており、購入時には必ず薬剤師からの情報提供を受ける必要があります。
「薬剤師側でチェックシートを用意しているので、ご自身の症状や持病、服用している内服薬などの情報をしっかりお伝えいただいたうえで、タケプロンsを服用できるかどうかを確認していただく必要があります。
また、タケプロンsを3日間服用して効果が見られない場合は別の原因が考えられるので、医師や薬剤師に相談する必要があります。効果があっても2週間連続しては服用できないため、症状が続くようであれば、医療機関を受診いただくよう説明しています。これは、タケプロンsの効果により、重篤な疾患を見過ごしてしまう恐れがあるためです」(アリナミン製薬)
胃の悩み、一人で悩まずに。薬剤師という身近な専門家に相談しよう
体調の変化を感じても「忙しいから」「そのうち治るから」と先延ばしにしてしまうことがあります。しかし、継続する不調は日常生活の質に影響を与える可能性があります。
薬局は医療機関よりもアクセスしやすく、薬剤師は薬の専門家として身近な存在です。特にスイッチOTCの選択肢が増えたことで、より幅広い市販薬について相談が可能になりました。
「薬剤師に相談することに関して心理的なハードルが高く控えてしまう方も少なくないと思います。胃の症状があるときに、なんとなくの知識で薬を選んだり、ご自身で調べたりされる方もいらっしゃると思いますが、まずはお近くの薬剤師さんへご相談いただければと思います」(アリナミン製薬)
体調管理は多くの人が日常的に意識する事柄です。一人で判断せず、まずは身近な薬局で薬剤師に市販薬の選択について相談してみてください。専門家のアドバイスを受けることが、適切な選択への第一歩になるはずです。

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