シリーズ最高傑作!『大脱出3』藤井健太郎Pインタビュー「メンタル的にギリいけるか?」「人は選ぶかもしれないけど、面白いを追求したい」

「ルールは、ひとつ。なにがなんでも、またまた脱出せよ。」
「水曜日のダウンタウン」藤井健太郎×クロちゃん×大人気芸人たちが織りなす、耐久ギリギリなバラエティー『大脱出』がパワーアップして登場しました。
9月3日より配信スタートした『大脱出3』(大脱出 シーズン3)はDMM TVで独占配信中となっています。
シーズン1、2では地面に埋められたクロちゃんを軸に、様々なギミックが仕掛けられてきました。

かつて『大脱出2』の配信記念イベントに登場したクロちゃんは「トラウマだから、ガチで一番つらい仕事だった。肉体的にも精神的にもピークに達した。二度とやりたくない。土の中だけは今後NG!」と断言。
https://getnews.jp/archives/3523699 [リンク]
その言葉を汲んでもらえたのか、今回埋められたのは、土の中では無く壁の中!(よかったね、クロちゃん……)

閉じ込められるのはクロちゃんだけじゃありません。特殊で難解な場所に閉じ込められる芸人たちは他にも8名が確定。バラエティー史上、最も過酷な場所は、まさしく地獄。

今回は、新たな「すごい地獄」を用意してきた藤井健太郎プロデューサーに、お話を伺いました。
メンタル的に「これぐらいだったらギリいけるか?」
──DMM TV「大脱出」シリーズはいずれも「ギリギリになった時に人はどうするか」というバリエーションが詰め込まれているのですが、「大脱出3」は本当に傑作でした。すごかったです。
藤井健太郎プロデューサー:ありがとうございます。
──藤井さんは、そのギリギリの状態を作り出すために環境をセッティングして、そのあとで“何か”が起きるのを待たれておられるかと思います。
劇中では演者さんから「鬼畜の発想」なんて言われ方もされるくらい、絶妙な加減のセッティングだと感じました。
藤井さんは、視聴者が“引いて”しまわないギリギリのラインをどうやって判断、線引きをされていますか?

藤井P:どうなんですかねえ……。視聴者のラインを明確に把握できるわけじゃないんで、結局、自分の感覚でしかないですからね。
あとは、単純に演者さんがギリ耐えうる、って言ったら変ですけど(笑)──クリアもできるし、メンタル的にも「まあこれぐらいだったらギリいけるか?」といったところは、推し量りながら、という感じですね。
──現場の反応も込みで。
藤井P:でも、「(大脱出)2」のウンコのところ(※)とかは、思いの外、ネガティブな反応が多かった印象です。僕らからしたら「え? その感じみんな嫌なの?」(笑)って。
※「大脱出2」ではウンコに関するネタが多少あるのですが、未見の方は心構えとして知っておくと安心して楽しめるかもしれません
──2のウンコはインパクトありました。
藤井P:だから、僕らの面白がってることが世間と合ってるとは全然思っていません。でも、現場でウンコ見てるスタッフと芸人たちはめちゃくちゃ笑ってましたからね。
──現場だとモザイクかかりませんよね……。
藤井P:それでも僕は全然笑えたんですけど、意外と観てる人たちには、本当に苦手な人も多いんだなぁ、って。なんなら子供とかも爆笑のやつだなと思ってたんですけどね(笑)。
──編集された映像で見る分には僕は楽しかったですが、それでも人の脱糞を見るのは嫌な人も多いんですね。
藤井P:だから、そういう意味で僕は(世間の)感覚をわかってないかもしれません。
「面白いからいい」

──では「大脱出1」「2」の経験を踏まえた上で、何かしらを推し量りつつ「3」を作られた部分もありますか?
藤井P:でも、嫌われる要素があっちゃいけないとも思ってないんで。もちろん、あんまり極端に嫌われたらダメですけども。
全部が全部、受け入れられやすいように作ろうという気でもなく、「自分が面白いと思う」ラインと、「観てて楽しんでもらえそうだな」というラインをなんとなく探りながら作ってます。
──みんなに好かれる必要はない?
藤井P:別にそう強く思ってるわけではないですけど、「面白いけど、これは嫌がる人もいるからやめよう」とかって話にはあまりならないですかね。どちらかというと「多少人は選ぶかもしれないけど、面白いからいいか」っていう方で。
──あくまで藤井さんの中の面白いが基準にある。
藤井P:基本はそうじゃないですかね。

──以前に、藤井さんへ影響を大きく与えたコンテンツとして『進め!電波少年』があったと伺いました。「電波少年」今ふりかえってみるとアウトな部分もたくさんあったじゃないですか。あそこから今の世の中に合わせたっていうような視点はありますか?
※進め!電波少年:1992年~1998年ごろまで放映されたバラエティ番組
藤井P:子供の頃にあの番組を観て、その作風が好きだったから真似してる、というわけではなくて。当然、面白く観てはいたんですけど、どちらかというと作り手という存在を意識したという意味合いが大きくて。
──作り手としての視点ですか。
藤井P:そうですね。当時は中学生だったと思うんですけど「面白いことをスタッフの人が考えて実行してるんだ」ということを知るきっかけになったので。それが大きいですね。
面白いことは好きだったけど、表に出たいなんて気持ちは全くなかったので、そこに「考える方」ってのがあるんだと。だから、番組から影響を受けたというより、そのことに気づけたことが一番かなと思っています。
以前にやった事と全く同じことはしたくない

──その「考える作業」として番組を作るにあたり、仕掛けや演者さんのキャスティングをはじめ様々な準備をされると思うんですけど、環境を整えるにあたり、一番気をつけているところはどんなことでしょう。
藤井P:うーん……なんでしょうね。その質問の答えと合っているかわかりませんが、一番は「他で見たことのない何かがちゃんと入っているか」「新しいことがちゃんとあるか」っていうところですかね。
もちろん全く同じことやるのは意味がないとして、仮に過去に自分がやったことのあるパターンに近かったとしても、「少し違うところがある」「少し新しいことがある」というところがあるかどうか、というのはひとつの基準だと思います。
「一応、今回はここが新しい」ってのがないと、ちょっとやる意味がないかなと。
もちろん、全部が全部そうできてるとも思わないですけど、そこは大事にしています。
──演者さんについて聞かせてください。今回の「大脱出3」に限らず、「2」以前からエリート集団というか、“水ダウ エリート”とも言うべく、そうそうたる面々が集まって、ものすごい表情を見せてくださってます。彼らをキャスティングするにあたり、共通している特性や資質のような、選ばれた理由はありますか?
藤井P:(少し考えて)ちょっと言語化するのも、なかなか難しいですけどね。
何かされた時とか、こういう時にこう反応するんだなっていう、その人の行動の感じはたくさん見てきているので、その蓄積ですよね。「あ、この負荷をこの人にかけたら面白くなるな」っていう掛け合わせです。そういうのは、ある程度経験則でわかってきているとは思いますね。
見たことのない状態になったクロちゃん

──でも、これだけ彼らが出演し続けてるのに、まだ見たことのないリアクションが今回も観られました。
藤井P:ありましたっけ!?
──申し訳ないなあ、と思いつつもクロちゃんがあんな状態になっているのが、本当に面白いなと思いながら観てしまいました。
藤井P:(とあるクロちゃんの結果について)笑っちゃいましたね(笑)。ハハハハハ。
──大変なことだなと思いつつ。
藤井P:そう、本当は笑っちゃいけないんですけどね。はい。ずっと(※ネタバレのため伏せます※)してたら、ああなってしまう。面白いですよね、あれは。ちょっと想定外かもしれないです。でも、なるほどなと思いました。
──あと、タバコってすごいアイテムだな、と改めて思いました。藤井さんはタバコを欲しがる人とかもらった人のリアクションの面白さについて、かなり前から着目されてたんですか?
藤井P:いや、別に着目したつもりはないです(笑)。ただ、周りには本当にタバコが好きな人もいて、そういう人って何を置いてもタバコを優先する瞬間があったりするじゃないですか。そういう中に面白いエピソードがあったりはしますよね。
僕は自分が吸ったことないんで(タバコを優先したい人の)感覚がわからないですけど、「タバコが吸いたすぎて、トランジットで1回出国した」とか聞くとやっぱり面白いじゃないですか。

──僕は元喫煙者なので、作中でタバコに関する描写があると、共感する部分もありつつ、笑ってしまいます。
藤井P:タバコが何かに優先されるエピソードってやっぱり聞いてる分には愉快ですよね。「水曜日のダウンタウン」でも「愛煙家 喫煙所までの道のりがどんなに困難でも向かっちゃう説」っていうのをやりましたけど、見てる分には滑稽でよかったです。
「踏み越えなきゃ面白いものが作れない」とは全然思ってない
──先ほどの話と少し重なりますが、今の世の中って合言葉のように「コンプライアンス」という単語が飛び交い、ことあるごとに規制を叫ぶような風潮に感じられます。モノを作る視点からすると、そうした圧力のラインより外側に踏み出さないと、面白いものも作りづらいのではないかと思うところがあります。「不謹慎でけしからん」みたいなことを言う人のラインがあったとしても、そこから踏み出すための基準があるとしたら、それは先ほどおっしゃられた「面白いかどうか」みたいなところでしょうか。
藤井P:差別的なこととか、そういう意味で踏みこえてるのは全然違うなと思うんですけど、「見ていて不快だ」とか、さっきの話じゃないですけど「ウンコが出てきて不快!」とかは知ったこっちゃないっていうか(笑)。まぁ、実際はそこまでバッサリと割り切ってもないですが、難しいところですよね。
でも別に「踏み越えなきゃ面白いものが作れない」とは全然思ってないです。(ある枠を指定されたとしても)その枠の中でやれるなと思うし、この枠だったらこれぐらいのことができる。
で、その枠が小さいほどつまらないっていうことでもないかなとは思います。まあ、広い方がいろんなものが見れるなとは思うんで、狭くならない方がいいはずなんですけれど、ただ、別にそこ(枠の大きさ)に対して強い思いがあるとか、「コンプライアンスで窮屈で困ります!」っていうのは別にないですね。言われた範囲の中でやりますよ、という気持ちでいます。

──藤井さんにとっては、枠がどうであろうと、その範囲内でベストな面白いものを作るだけ。
藤井P:うん。そう思ってますよ。誰に何の配慮をしてるのかよく分からない無意味な枠もあるとは思いますけど。
──終わったばかりでなんですが、“次”はきっとあるんでしょうか?
藤井P:基本は想定してないですね。もうパターン的にもどうなんだろうなって感じですよね……。
──可能な限り、また次が見たいなという風に思っております。何かがあるのであれば、楽しみにしています。ありがとうございました。
藤井P:はい。

大脱出3、傑作です
言葉を選びつつ淡々と答えてくれた藤井P。比較的、静かに進んだインタビューでしたが、本当に面白かった時のことを話すときの“笑い”を含め、クリエイターとしての裏表の無さを感じました。
「大脱出3」は、シリーズ通して最大のアイデアとリソースが詰め込まれた傑作です。誰かと共有したい仕上がりになっていますので、是非、ご覧ください。演者さんたちには、まあまあ地獄ですけど。
大脱出3
DMM TVで独占配信中
https://tv.dmm.com/vod/detail/?season=tiv6x7c4rpz4zfk1x4qkvpjp8 [リンク]【キャスト・スタッフ】
◆メインMC
バカリズム
小峠英二(バイきんぐ)◆出演
クロちゃん(安田大サーカス)
森田哲矢(さらば青春の光)
東ブクロ(さらば青春の光)
みなみかわ
高野正成(きしたかの)
井口浩之(ウエストランド)
お見送り芸人しんいち
みちお(トム・ブラウン)
岡野陽一 など◆企画・演出・プロデューサー
藤井健太郎
©DMM TV

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