アプリマーケティングの最前線を走るリバティーンズ株式会社代表取締役の山口雄大氏にインタビュー!「業界の停滞に危機感」「ビジネスを楽しむ」

アプリマーケティングの最前線を走るリバティーンズ株式会社代表取締役の山口雄大氏にインタビュー!「業界の停滞に危機感」「ビジネスを楽しむ」


Matomo

日本といえば世界有数のモバイルゲーム大国。
皆さんのスマートフォンの中にも1つや2つは“スマホゲーム”がインストールされていると思います。
今回はモバイルアプリ・マーケティングに特化したカンファレンス「App Growth Summit Tokyo 2025(以下、AGS Tokyo 2025)」タイトルスポンサーのリバティーンズ株式会社の代表取締役・山口雄大氏にインタビュー!
「AGS Tokyo 2025」を振り返りながら、これからのモバイルアプリのマーケティングなどについて伺いました。

リバティーンズ株式会社代表取締役の山口雄大氏にインタビュー!

リバティーンズ株式会社  代表取締役 山口雄大氏リバティーンズ株式会社 代表取締役 山口雄大氏 – Saiga NAK

― まずは自己紹介をお願いします

リバティーンズ株式会社の代表取締役をしています。山口雄大です。
小さい頃は内向的で、ゲームもよくやっていました。
「ドラゴンクエストII」や「ドラゴンクエストIII」「ファイナルファンタジーIII」あたりが流行ってました。
あとは三国志が好きで、すごいコアなんですけど「天地を喰らうII」はめちゃめちゃプレイしてましたね。

― マーケティングに興味を持ったキッカケはあるんですか?

もともと「これってなんでこうなんだろう」「どういうふうになっているんだろう」みたいな好奇心が強くて、人への興味とともにモノへの興味もすごいあったんです。
あとは役に立ちたい欲求も高くて、1人でも多くの役に立つっていうのは究極的には全世界ですよね。
というような自己分析をして存在意義を見つけていったという感じです。
昔から思っているのが孤独ってかなり不幸だよなと。1人でゲームをやっているなんて孤独でも何でもなくて、本当の意味で社交性を断絶するのってとても寂しいことだと思うんです。
すると、モノは自分で何かを言えないから超孤独じゃないですか(笑)
そんな想いがありつつ、好きなこと・得意なこと・大事なことを生かした“マーケティング”という役割が自分たちの存在意義の獲得にも繋がるんじゃないかなと思っています。

― そしてリバティーンズ社が誕生したんですね

実は設立当初の2007年頃は自社でゲームアプリを開発していました。
当時の日本とアメリカを比べたとき、お互い同程度のシェアだと市場規模に500倍以上の差が開いていたんです。
そこでアメリカをはじめとする英語圏に向けてアプリを開発していたのが始まりです。
さらに自社アプリの集客のためにASO対策を開始して、2011年頃には全世界1,000万ダウンロードを達成しました。
そのノウハウを生かしてアプリに特化した広告代理店事業やインハウス支援ツールの提供開始、アメリカのシリコンバレーにオフィスを開設するなどして今に至ります。

リバティーンズ株式会社  代表取締役 山口雄大氏 – Saiga NAK

― どのようにASO対策のノウハウを獲得したんでしょうか

私たちは“クレイジーなほどPDCAを行ってきたマーケティング企業”であると自負しています。
アプリストア内の個別ページにあるキーワードや画像の一つひとつが、どのようにインプレッションに影響するのかというある種の実験を365日考え続けていたという感じですね(笑)

― それらの変遷を経て「App Growth Summit」にたどり着いたと

ASO対策のノウハウが溜まったら、今度は私たちの認知度を向上させる必要があるということで、さまざまなイベントに協賛してきました。
例えば「MAU Vegas」「App Promotion Summit」などがありますが、結果的に「App Growth Summit」が一番手応えがあったんです。
「App Growth Summit」は営業色が無く業界内で知識を共有するというイベントなんですが、これが結果的にデベロッパー同士のエンゲージメントを高めることに繋がりました。

― 日本初開催の「AGS Tokyo 2025」もそのキッカケで?

主催者に「東京でやらないんですか?」って聞いてみたら「君たちが主催するなら良いよ」というお話をいただいて、今回の開催に至ったという感じですね。
これまでのイベントは1,000人規模の大きなものか、さらに大きなものでいうと「アドテック東京」のようにWeb領域まで含めたものばかりだったんです。
そこでアプリのグロースに特化したイベントにしようと考えました。
具体的には「PLATFORM(プラットフォーム広告の最新動向や事例)」「ADNETWORK / DSP(DSPやリターゲティングの最新トレンドや事例)」「MONETIZATION(海外発マネタイズ最新事例)」「STORE MARKETING(オーガニック獲得のために何をすべきか)」「CASE STUDY(豪華ゲストスピーカーによるケーススタディやインサイト)」「IMPORT & EXPORT(アプリのインポートとエクスポート)」という要素を取り入れています。

リバティーンズ株式会社  代表取締役 山口雄大氏 – Saiga NAK

― かなり網羅的ですね

約18年この業界を見ていて、市場は大きくなるもののやってることは変わらないという停滞感に問題意識を持つようになりました。
業界のために何かしたいというモチベーションでしたね。

― 業界の停滞感ですか

今までマーケティング手法にアップデートや再定義があったかと言われると、何もないんじゃないかと。
Google AdMobは昔からありますし、いくつか画期的な動きがあっても淘汰されてしまったりとか、ここでは言えない話も色々あったり・・・(笑)
とにかく、形は変わっても本質的な部分が変わっていないんだと思います。
例えばオーガニック(※広告表示ではなく検索結果から自然に集まる流入や集客のこと)という考え方は昔からあるのに全然注力してないよね、みたいな。

― どの企業も半分諦めている部分があるんでしょうか

「結果が測れない」「どうしたら良いか分からない」という意識があるのであれば、それは私たちの責任なのかなとも思いますね。
オーガニックという言葉自体は浸透したと思うんですが、そこを突き詰める人が圧倒的に少ない、というか少なくとも私は1人も知らないんです。
業界全体の意識を変えていくというのは私たちの使命とも言えますね。

リバティーンズ株式会社  代表取締役 山口雄大氏 – Saiga NAK

― 御社の広告代理店事業でもその考えが生きてきそうですね

私たちは“全部やる”というのを基本にしています。
オーガニックでいくら、広告でいくら、コンサルティングでいくら、というように分けると100点満点のテストで30点しか取ってはいけません、って言われている感じがするんですよね。
そこまでやってあとは知りませんというスタンスだと本当の価値をお客さんに提供することができないので、戦略立案でも制作でも運用でも全部やるというのは前提になっています。

― お客さんの説得に難儀することもありそうだと思いました

そうですね。厳密には担当者の頭では理解していても組織構造として変われないことがあります。
それでも「それは会社の問題なので終わり」ではなく、関係者に認めてもらうためにテストプロセスを組んで、しっかり説明してというのが私たちの努力で解決できる部分です。

― 話が戻りますが「AGS Tokyo 2025」の手応えはいかがでしたか?

とても良かったです。
約300人の方に来場していただき、Googleやドコモ、ペアーズ、タイミー、PayPay、メルカリといった各社からゲストスピーカーをお招きして興味深いセッションが数多く展開されました。
ゲーム業界からはMIXI、ポノス、Metacoreといった皆さんに参加していただきました。

リバティーンズ株式会社  代表取締役 山口雄大氏 – Saiga NAK

― 特に印象に残ったお話はありますか?

TimeTree(※全世界6,000万ユーザーのカレンダーシェアアプリ)の深川泰斗さんのお話は良かったですね。思わず終わったあと握手しに行ったくらい(笑)
特に感銘を受けたのは尋常じゃない一次情報の取り方ですね。
例えば「A国で集客が上手くいっています」というとき、普通はできる範囲で要因を見つけて仮説を立てて終わりなんですよ。
でもTimeTreeの場合はその国のインフルエンサーまでたどり着いて、同地域のマーケティングに活かせそうな話を聞いて、バイトに雇用するという。

― 尋常じゃないですね

ゲーム会社でもユーザーの解像度が高いところとそうじゃないところがあります。
例えば一番課金している人が誰で、どこに住んでいて、職業は何で、好きなことは・・・。みたいなステータスが特定できていると、施策は組みやすいですよね。
MIXIの大槻さんも「AGS Tokyo 2025」で話していましたが、ユーザーに対する愛情みたいなものは大事な要素だと思います。

― 次回開催も視野に入っていますか?

フィードバック次第でもあるので明言はできませんが、AGSという形でもそうでなくてもシリーズ化はしていきたいですね。
ゲーム関連だとMIXIの大槻さんのほかにポノスの佐野さん、進行として佐藤基(@MOTTOI)にも協力いただいたんですが、彼らが話していたのはもちろん表面のアプリやマーケティング施策もそうなんですけど、最終的には「ゲーム業界をどう盛り上げていくか」という本質的な話に帰着するんです。
第一線で活躍する人が何を思っているのかというのはもっと聞いていただきたいなと思いますし、私たちのやり方で業界全体を盛り上げていければと思っています。

リバティーンズ株式会社  代表取締役 山口雄大氏 – Saiga NAK

― 少し話題が変わりますが、日本はモバイルゲーム大国と言われています。山口さんもそう思われますか?

そうですね、やっぱり日本は公共交通機関の利用者が多くて1人の時間がすごい多いですよね。
アメリカに行って思うのが、シリコンバレーの余暇の過ごし方って家族かハイキングかスポーツかお酒かくらいしかないみたいな(笑)
ゲームは家でやるもので、外では家族とかコミュニティを大事にするという傾向がある気がします。
あと私はゲームは感情の受け皿だと思っていて、ムカつくことがあったとか嫌なことがあったとか、日常の嫌なことがゲームをしている間は忘れられるというのは大きな存在意義なのかなと思います。
逆に言うとそれだけ日常的に本音が言えず自分で抱えてしまっているということでもあると思うんですが、そういう意味でとても価値ある市場だというポジティブな捉え方をしていますね。

― 日本とアメリカを比べるとマーケティング手法にも違いはあるんでしょうか?

一般的に違いは無いんですが、組織構造には大きく違いますね。
例えば日本のマーケティング担当って1から10までいろんな媒体を見なければならないんですが、アメリカだとASO担当者みたいな細かい分類があって、ジョブディスクリプションに定義されている仕事以外はやりません!みたいな。
なので1つのことに対する知識の深さはアメリカのほうが優れていて、日本は全体を横断的に見る力はあるけど、専門性の部分で代理店などが入り込む余地があるのかなと思います。

― リバティーンズ社が提供するアプリ広告自動配信SaaS「V.O.X」はゲームアプリの成長にどのように寄与するのでしょうか

アプリマーケティングの大きな課題として、広告費の高騰が挙げられます。
例えるならこれまで500円で買えた牛丼を1000円になっても買い続けてるみたいな。
原因の1つにはIDFAの規制があるんですが、各企業がそれでも甘んじて受け入れてしまっているのが現状です。
アプリのトラフィックって58%がオーガニックで42%がペイド(広告)と言われているんですが、すべてのモバイルマーケターの責任範囲はペイドの42%だけなんですよ。広告代理店さんもお金にならないからやらない。やらないから浸透しないという悪循環ですね。
ペイドを使うことでオーガニックにどれだけ影響したか、どうやってオーガニックを取るかという58%にもしっかり着目したアドバイスをくれるツールが「V.O.X」です。

リバティーンズ株式会社  代表取締役 山口雄大氏 – Saiga NAK

― AIの成長も凄まじいですが、現場でも影響は大きいですか?

かなり大きいですね。
特にユーザー分析などに関しては積極的に使うべきだと思いますし、弊社のプロダクトにも初期から導入されています。
また、今後大きく変わるのは企業のマネジメントなんじゃないかなと思ってるんです。
私もAIを使いながら経営を行っていますが、あるとき「あなたみたいに優秀なAIがいたらマネージャーはいらないですよね?」って質問したら「私は責任を取れません」って返ってきたんですよ(笑)
つまり責任さえ取れればAIで良いじゃん!みたいな。
こういうツールがあるからこそ、自分で考えて問い続ける体力みたいなものは必要になるのかなと思いますが。

― これからのアプリ業界はどうなっていくんでしょうか

個人的に正直思っているのは日本の企業にもっと頑張ってほしいなと。
日本と海外を比較すると、海外はKPIのレンジが年単位であるのに比べて、日本だと90日みたいな短期間で成果を期待されてしまう傾向にあると思っていて、それだと投資額にも差が出てきて結局勢いのあるアプリは海外のものばかりになってしまう。
「AGS Tokyo 2025」でTimeTree(株式会社TimeTree)やskyticket(株式会社アドベンチャー)、マージマンション(Metacore Games Ltd.)といった方々に登壇いただいたのは、海外水準を日本に取り入れていきたいという裏テーマもあったりします。
やはり日本国内だけでどうこうする、という時代ではないので。

― 最後にリバティーンズ社の展望を教えてください

弊社のパーパスに「ビジネスを楽しみたい」というものがあるんです。
ビジネスをしていて各社が「楽しいんですよね」って状態って理想じゃないですか。
そのために私が大切にしているのは、理想を共有してその実現に向けてどうするのかを逆算して一緒に考えることです。
単純に「これだけの予算なのでこれしてください、あれしてください」ってとても退屈だし絶対に良くない。
一方で、理想は何ですかと聞かれてパッと答えられる人も多くはないのが現状です。
であれば、その理想も一緒に探す手伝いができたら良いなというのが正直な想いです。

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