映画『MaXXXine マキシーン』リアルな特殊造形の魅⼒とは? LA在住アーティスト 吉沢コーダイさんインタビュー

A24 の最⼤ヒットシリーズ『X エックス』『Pearl パール』に続く三部作の完結編、『MaXXXine マキシーン』(6⽉6⽇公開)。舞台は、惨劇の舞台となったテキサスの農場から⼀転、CG が主流となる以前の1985年のハリウッドへと移ります。
当時のリアルな空気感を追求するため、ハリウッド⼤通りを4⽇間封鎖して撮影が⾏われたことでも注⽬を集めていますが、本作の⾒どころは何といっても、70年代、80年代のホラー映画をこよなくリスペクトするタイ・ウェスト監督による、特殊造形や特殊メイクを駆使して作り上げられたゴア描写の数々。

この度『MaXXXine マキシーン』に登場する多くの特殊造形や特殊メイクを⼿がけたスタジオFractured FX を拠点に、LAで特殊造形アーティストとしてハリウッドで活躍する吉沢コーダイさんに特別オンラインインタビューを敢⾏! 映画『MaXXXine マキシーン』の⾒どころや、最新の特殊造形物の制作事情のなどについて伺いました。
――『MaXXXine マキシーン』で特に注⽬してほしい特殊造形のポイントを、教えてください。
吉沢:僕が担当した、⼗字架が登場するシーンですね。メイキング動画でもそのシーンに関わったキャストの⽅が「⼀番カッコいい死に⽅だった」と話してくださっていて。すごく嬉しそうに語られていたのが印象的でしたし、⾃分としてもかなり⾒せ場だと思っています。
――ゴア描写に⽋かせない素材《⾎糊》にも、やはり進化があるのでしょうか︖
吉沢:同僚に聞いてみたのですが、昔の⾎糊は結構シミがつきやすくて、使った後の掃除も⼤変だったそうです。でも、最近の素材はシミがつきにくく、進化、改善されています。しかも、昔はスタジオで、コーンシロップと⾷品着⾊料を使って、⼿作りしていたようなのですが、最近は材料店で良質なものが⼿に⼊るようになりました。
――特殊造形ならではのテクニックについても教えてください。
吉沢:例えば、⼈の腕が切られるシーンなどでは、筋⾁や脂肪もすべてシリコンで作っています。特殊造形の肝は、そういった⼈体テクスチャーの再現ですね。シリコンの〈A〉と〈B〉の液体を混ぜると柔らかいゴムのようになるんですが、それを固まる前にサランラップなどで包んで引っ張ったりしてシワをつけることで、筋繊維のような質感が出せるんです。脂肪の場合は、⻩⾊いシリコンを注射器に⼊れて、固まる前に少し突くことで、脂肪のセルライトのようなリアルな質感になります。
――特殊造形の世界で、シリコンはいつ頃からメジャーな材料になってきたのでしょうか︖
吉沢:90年代から広まった印象です。80 年代は、ラテックスとかフォームラテックスと⾔われる<ゴム>系の素材がメインで使われていたのですが、シリコンは透明性も⾼くて、本当に<⼈肌>みたいな感じを再現できる。特殊メイクでも、傷があるところなどシリコンで作ると、⼈の肌とその境⽬が分からなくなるくらいに再現できてしまいます。シリコンに特化したテクニシャンとかもいるほどで、今はもう⽋かせない素材ですね。

――吉沢さんが「特殊造形」の変化が技術的に変わったと思われたタイミングは、どこだと思われますか︖
吉沢:『遊星からの物体X』(1982 年)でしょうか。エイリアンが正体を表して、変形するシーンとか、CG を使わずに、実写で全部できてしまった。その特殊効果を担当したのが、当時22才だったロブ・ボッティン。その時は特殊メイクが⻩⾦期で、特殊造形や特殊メイクアーティストは、みんなロックスターみたいな感じで。昔の本とか、動画を⾒ると、ファッションなど⾒た⽬が、パンクロッカーのようで。髪型もすごく尖っていて、レザージャケットを着て作業する。⻩⾦期は本当に「かっこいい職業」で、みんなから憧れられる存在だったんだろうなと。あとは『狼男アメリカン』(1981 年)のオオカミ男への変⾝するシーンもそうですね。引退されていますが、リック・ベイカーさんという特殊造形の世界ではレジェンドであるアーティストによって作られた変⾝シーンは、今でも同業者の中で語り継がれていますし、最近のプロジェクトでも当時(80 年代)の映画を「あの映画のようなシーンにしたいなみたい」な話題が結構出ます。
――まさにマキシーンの⽣きる1980年代のハリウッドですね。
吉沢:そうですね。80年代はCGも何もなかったので、全部「実写」で表現するしかなかった。リアリズムの追求も、みんながやったことないことを頑張って表現しようとしていたんだと思います。『遊星からの物体X』も『狼男アメリカン』も、知恵を振り絞って、やっ
たことのないようなことをやろうとしていた時代だったからこそ⽣まれたと思います。だからこそ、CG に慣れた現代の観客にとっても、新鮮に映ると思うんです。『MaXXXine マキシーン』も、当時のハリウッドの街並みやゴア描写含めて、CG を極⼒使わず、実写で表現しています。だからこそ⽣まれるリアリティもぜひ楽しんで頂きたいです。
吉沢コーダイ プロフィール:LA在住の特殊造形アーティスト。ホラー、SF ジャンルの作品に多数参加。代表作は『アクアマン1&2』『インシディアス2〜5』『アナベル死霊博物館』『MaXXXine マキシーン』など
SNS:X@kodaiy61

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イメント『MaXXXine マキシーン』は6.6(⾦)より全国公開。

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