映画『わたしの頭はいつもうるさい』監督・脚本・プロデューサー・主演 宮森玲実インタビュー「生きていればなんだって出来るんだぞ」

監督·脚本·プロデューサー·主演を務める宮森玲実による渾身の一作『わたしの頭はいつもうるさい』が5月16日より公開となります。
【ストーリー】25歳の“のぞみ”は小説家を目指し上京したが鳴かず飛ばず。 そんな時に18歳の“ノゾミ”から問い詰められる。 「ちゃんとやったか? 有言実行、東京でパァーっとひと花咲かせたか?」 18歳の自分と対峙していく中で25歳は向き合わなかった様々な事柄に気がついていく。
藤原季節や武田梨奈が審査員を務めた第18回田辺·弁慶映画祭にて俳優賞を獲得した本作。コンプソンズを中心に小劇場での出演のほか近年では自ら映像作品の演出も手掛けるなど幅広く活動する細井じゅん、田辺·弁慶映画祭にてグランプリを含む史上初の最多5冠を獲得した『おろかもの』などの笠松七海が、それぞれ高校時代から20代にかけての主人公を支える役どころを生き生きと表現。さらに『嵐電』をはじめ監督としても活躍する鈴木卓爾、「渡る世間は鬼ばかり」などで知られる藤田朋子など多彩なキャストが脇を固めています。
変わりたいのに変われないもどかしい人生に抗う物語。初監督作品がいよいよ公開となる宮森玲実さんにお話を伺いました。
――本作とても楽しく拝見させていただきました。本作で映画作りが初めてということですが、とても素敵な映画になっていますよね。
ありがとうございます!作ろうと思ってみるもんだな、と思っています。役者を始めてからフリーランスの期間が長くて、今もフリーランスでやっているんですけど、「どうやったら売れるんだ」ということをずっと考えていて、役者の仲間や先輩と話すこともよくありました。20代前半の頃には「じゃあ自分で作品を作ればいいじゃないか」と言われる方もいらっしゃって。その方は脚本家さんだったんですけど、「もし自分が役者だったら、自分が出る作品を作るね」とおっしゃっていて、そんな簡単に言ってんじゃないよって思いながら(笑)聞いていたんです。
当時の私には作るということがすごく大きなハードルに思えていたのですが、その後も役者を続けていく中で、もっとお芝居がしたいのに、出られる機会が自分の思うほどには至ってないというか、少ないなと思うことが重なっていて。“表現したい”フラストレーションは徐々に徐々に溜まっていって、そんな中でコロナ禍になり仕事が止まったり、オーディションが激減していきました。そんな時に「映画を作ろうよ」と声をかけてくれる仲間がいて、具体的に作品作りを始めることになりました。
――ハードルを越えられたわけですね。
秋葉美希という役者仲間なのですが、お互いに補完し合いながら作ることを模索することが出来て。声をかけてくれて本当に良かったなと思っています。プロデュースであったり、そういった関わり方なら出来るかなと思いながら、自分が作品を作り上げるというか、監督することは避けていたんですよね。でもこの先役者を続けるのにも一度監督することが必要なんじゃないかと思って。逃げ続けていたけれど、やらざるを得ないところまで気持ちがやっと高まったので、じゃあ作ろうって。最初は短編の予定だったのに長編になってしまったんですが。
――本作では、プロデューサー・脚本・監督・主演を務められていますけれど、とにかくやることが多くて大変だったのではないでしょうか。
撮る前の準備期間では、客観性を持てるかが不安だったんですけど、切り替えは自分が思っているよりもしっかりと出来ました。助監督さんを含めスタッフのみんな、役者の皆さんにも画作りなどは相談しながら。「これいるかな?」「いらないんじゃない?」「でも、こうしたほうが」みたいな感じで、チェックしながら現場で進めていくことも多くて。周りにがサポートしてくれるとはいえ、自分の作品を作っていく以上、自信を持たなくてはいけないというタイミングも多くて、それは難しかったです。文字通り、周りのスタッフに支えてもらいながらの作品作りになりました。
――キャスト陣もとても素敵でしたが、こちらも宮森さんの理想のキャスティングだったのでしょうか。
私が元々拝見していて、一方的に知っていた俳優さんたちにお願いしている場合が多いです。笠松七海さん、細井じゅんさん、私の幼馴染3人組は、全員が同じ様な芝居するタイプでもダメだし、色の違う3人にしたかったので、そこはすごく考えました。
私は映画のスタッフもやっているのですが、以前私がスタッフとして関わった作品に藤田朋子さんがいらっしゃって、その時の振る舞いというか、姿勢が本当に素敵だなと思っていて。いつか一緒に作品をご一緒出来たら良いなと思っていました。本作を作ることになって、ダメ元でというか、私が藤田さんとご一緒したいと思った経緯をお伝えして、どうしても出て欲しいですと依頼して。快く受けていただきました。お母さん役として、頼り切ることの出来る存在というか、委ねられる方がいいなと思っていて、藤田さんの存在がとてもありがたかったです。

――素晴らしいお芝居を見せてくださいましたが、俳優として対峙して、学んだ部分はどんなことですか?
藤田さんの出ているドラマや映画はもちろん拝見していましたけど、現場での臨機応変さ、瞬発力には刺激を受けましたし、あとはすごく華がある方だなと。それでいて、朝食のシーンでは、生活感を作られているなという印象があって、こういう役作りの仕方もあるんだという学びがありました。小さな、小さなチームなので現場で追いついてないところも多々あったと思うんですね。藤田さんが普段経験されている作品の規模と違うので。「なんでも言ってください、違和感があったら教えてください」と伝えて、色々意見も言ってくださりましたし、セッティング待機中に私の所まできてお話してくれたり、たくさん支えていただきました。
――今、朝食のシーンと生活感のお話しも出ましたが、生活シーンのリアリティが本当に良かったです。
ありがとうございます、良かったです。ロケ地も“死んでない家”というか、生活した証が残っている場所を選んでいました。喫茶店の店主役で鈴木卓爾さんに出演していただいたのですが、「映画のは温度というか湿度も大事だよ」と教えていただいて。小さな映画なので、細部にこだわりたいと思っていても、時間が無いし進めなきゃという気持ちが先走ることも多くて。でもそんな時に「コーヒーから湯気が出ていなくて良いの?」とか気付いたことを言ってくださったり、「監督なんだから言いたいこと言っていいんだよ」と言われたことも大きかったです。
そこから、朝食のスープは熱々で出そうとか、こだわることが出来て。最初はスープを写さなければ良いか、とか思っていたのですが、藤田さんが「私が母親だったら、この冷めたスープは朝食には出さないかな」と言ってくれて。スタッフとは「朝食は任せますって言ったじゃないですか」とちょっと傍でケンカしたり(笑)しつつ、そう言った細かい所までこだわれて良かったなと思っています。(劇中の)セーラー服姿で食材を買いに行ったりとか、本当にバタバタでしたけれどやって良かったです。
――1本の映画として完成した時はどんなお気持ちでしたか?
まず「ぴあフィルムフェスティバル」の提出期限を目標に作っていたのですが、選考に残らなくてすごく悔しくて。作り上げた時に作り手は作品に対して自信満々でいい、と思っていて、「この映画は(選考を)通るでしょ!」と思っていたし、今も思っているのですが、通らなかったので、もっと出来ることがあるんじゃないかと思いながら何回も見直して。 はい。それで最後の走るシーンを書き足しました。最終的に「完成した」と思えたのは「田辺・弁慶映画祭」で、大きなスクリーンで観てもらった時です。観てもらえるまでは、どこか完成じゃないなみたいな気持ちがあって、大きなスクリーンでたくさんの方と一緒に観てこそ映画の素晴らしさがあるなと思っているので、その空気を実際に感じられて、映画館って最高だなと思いました。一番後ろの席で観ていたのですが、始まって3秒くらいで号泣してました。

――いよいよ5月16日から公開となり、さらに多くの方が作品をご覧になりますね。
本当に楽しみで、嬉しいですね。実際その日を迎えたら、私がどういうテンションでいるかは今は分からないですけれど。はじまりは自分のための映画ですけれど、自分のために演じて監督したことが、誰かの何かになったらそれって本当にすごいことだなと思っていて。
――この作品は色々なことが“自分ごと”として受け止められる作品だなと思います。
主人公ののぞみは25歳で、同世代とかちょっと下の世代にも刺さると思いますし、「クォーターライフクライシス」を乗り越えてきた方にも「こういう時期あったな」と思い出せる作品として触れていただけたらありがたいです。
私の人生の中でも、すごく沈んだこともいっぱいありますし、寝てるだけで何も出来ないという時もありますけれど、生きるためには動いていかなきゃって。やりたいことがなくても良くて、でもどうせ生きるなら、楽しい方がいいじゃないですか。行動しないと変わらないんだなって、今回映画を作ったことで気付かされましたし、そんな情熱を作品に込められたかなと思います。「生きていればなんだって出来るんだぞ」と思える作品になったら嬉しいです。
――今日は素敵なお話をありがとうございました!

撮影:オサダコウジ
テアトル新宿 初日舞台挨拶決定💫
🗓️5/16㊎ 20:40〜回 上映後登壇者
宮森玲実(主演・脚本・監督)
細井じゅん、笠松七海、藤田朋子(以上出演)
MC:松崎まこと(映画活動家/放送作家)@nenbutsunomatsu2日前よりチケット発売開始!
劇場でお待ちしてます🏃♀️#わたいつhttps://t.co/xTHsPtUHa5 pic.twitter.com/0P905TAACB— 映画『わたしの頭はいつもうるさい』@5月テアトル新宿上映 (@watashino18_25) May 9, 2025

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