「ネスレ日本」のWEB戦略とは?「各ブランドサイトやECチャネルも含め、検索の効果の最大化を」

コーヒー、乳製品、チョコレートなど様々な製品を販売しているネスレ日本。そのサイト運営にはグローバル企業ならではのこだわりが込められていました。
ネスレ日本の各サイトの横断的なサポートを担い、効果的かつ効率的なWebサイトを制作している、陣内洋人さん(デジタル&Eコマース本部 デジタルCX開発部 WEB&Searchユニット)にお話を伺いました。

◆ネスレ日本での陣内さんの業務内容を教えてください。
ネスレ日本全体のSearchを含めたWEB戦略の策定・実行をリードしています。「ネスカフェ」「キットカット」などのブランドサイトにとどまらず、自社通販の「ネスレ通販」やECモールの「Amazon」「楽天」などの主要ECチャネルも含めた包括的なSearch戦略を構築し、各チャネルでの集客最大化を推進しています。
また、データドリブンなアプローチを基盤に、ユーザビリティの高いWEBサイトの構築を推進し、ブランドのエンゲージメント向上とコンバージョン最適化に貢献しています。さらに、制作の標準化やワークフローの最適化を進めることで、効率性を高めながら、一貫性のあるブランド体験を提供しています。
◆陣内さんが携わったプロジェクトが、どの様に良い効果を生んだのか。事案を含めて教えていただけますか。
最も印象的だったプロジェクトは、WEBサイトのマイグレーションです。オンプレミスからクラウドへの移行を進める中で、単なるサーバの移管にとどまらず、WEBガバナンスの強化にも取り組みました。具体的には、トラフィックが極端に少ないWEBページが多数存在していたため、それらを整理・削除し、全体のサイト構造を最適化しました。また、制作会社が分散していたことで管理コストが増大していたため、制作会社の統合を進め、よりスムーズなWEB運用を実現する環境を整えました。結果的に、WEB全体の運用負荷を抑えつつ、ユーザビリティの向上にもつながる大きなプロジェクトとなりました。
このプロジェクトは、わずか11か月という短期間でほぼすべてのWEBサイトを移管しなければならないという非常にタイトなスケジュールのもとで進行しました。そのため、ITチームとWEBサイトのオーナーである事業部の間に立ち、調整役として動き続けることが求められました。スムーズな意思決定を促すために、ステークホルダーとの密なコミュニケーションを重視し、全体の進行スピードを落とさないよう尽力しました。その結果、マイグレーションは無事期間内に完了し、それだけでなく、ユーザーの滞在時間が増加するなどのポジティブな効果が生まれました。また、CMSの活用により制作効率が向上し、コンテンツ運用がよりスムーズになるという副次的なメリットも得られました。
現在は、このマイグレーションを土台に、さらなるSearch最適化に取り組んでいるところです。Searchについてはまだ改善の余地が大きく、現在進行形で課題解決を進めています。今後の展開にぜひご期待ください。
◆ユーザーやお客様からの反応で嬉しかったものはどんなことですか?
これはユーザーの声ではなく、社内の反応ですが、非常に嬉しかった出来事の一つです。
マイグレーションプロジェクトの完了後、WEBサイトのさらなる最適化に向けた機運が高まり、新たなプロジェクトが立ち上がりました。その流れの中で、チームメンバーとともに、WEBサイト制作やSEOの一部オペレーションをフィリピン・マニラのチームへ移管し、大幅なコスト最適化を実現したことで、社内から大きな評価を受けました。
この成功事例を契機に、他のブランドサイトでもマニラチームの活用が進み、より最適なWEB環境を構築するための大規模なプロジェクトへと発展しています。
まさに「仕事が仕事を呼ぶ」好循環が生まれ、事業全体のスケールアップに貢献できていると実感しています。こうした取り組みが次の新たな挑戦へとつながり、さらに価値のある成果を生み出していくことを、とても嬉しく思っています。
◆エンタメ業界から転職されたそうですが、違う業種での経験が活きている部分はありますか?
エンタメ業界では、デジタルマーケティングの戦略立案から戦術実行までを包括的に担当していたため、その経験は間違いなく現在の業務に活かされています。また、アプリゲームの運営を通じて、MAUなどの指標を日々分析しながら企画を考える習慣が身につき、データドリブンなアプローチを実践的に学べたことも大きな財産です。
さらに、小規模な組織で プロデューサー、デザイナー、エンジニア、プランナーなど多職種と密に連携しながら業務を進めてきた経験があるため、WEBやアプリの開発・運営におけるプロセスや実務の本質を理解することができました。
こうした 多様な経験が「connecting the dots」となり、現在のWEBとSearchの戦略立案・実行にダイレクトに活かされています。より効果的な施策を推進できているのは、このバックグラウンドがあるからこそだと感じています。
◆今後のネスレ日本をどう盛り上げていきたいか。
これまで、オウンドメディアのポテンシャルを十分に引き出しきれていない領域が多く存在していました。しかし、今後のデジタルマーケティングにおいては、オウンドメディアの活用を強化し、ファーストパーティデータを獲得・活用していくことが競争優位性を高める鍵となります。その実現には、WEBとSearchの領域をさらに進化させ、データドリブンなアプローチを強化することが不可欠だと考えています。
今後は、単なるトラフィック獲得やSEOにとどまらず、ユーザー体験を軸とした質の高いWEBサイトの構築に注力し、ユーザーにとって「価値のある接点」を提供できるデジタルエコシステムを確立していきたいと考えています。さらに、ネスレはグローバルカンパニーであり、世界には素晴らしいアセットやベストプラクティスが蓄積されています。これらを積極的に活用しながら、ローカル市場に最適化した戦略を展開することで、より大きな成果を生み出していきます。
また、生成AIの台頭により、デジタルマーケティングそのものの在り方が大きく変わる可能性があります。この変化をリスクとしてではなく、新たなチャンスと捉え、積極的に適応することで、より革新的なWEBとSearchの戦略を展開していきたいと考えています。
◆陣内さんがお好きなネスレ商品を教えてください!
ありきたりかもしれませんが、「ネスカフェ ゴールドブレンド」と「キットカット」ですね。チョコとコーヒーの組み合わせは、リフレッシュにも最適で、多忙な毎日を乗り切るための欠かせないパートナーになっています。

ネスレ日本
https://www.nestle.co.jp [リンク]

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