環境省が「デコ活」に向けた実証事業の記者発表会を開催、株式会社LooopとNature株式会社からプレゼン

『環境省「デコ活」 昼の余剰電力需要創出に向けた実証事業 記者発表会』が3月18日、都内にて開催された。環境省から「デコ活」および「昼の電力需要創出実証事業」の紹介が行われ、株式会社LooopとNature株式会社から官民連携により行動変容・ライフスタイル転換を促進するための取り組みの報告が行われた。
「脱炭素運動」の愛称として使われる「デコ活」とは二酸化炭素(CO2)を減らす脱炭素(Decarbonization)とエコ(Eco)を組み合わせて作られた言葉。
環境省は国民・消費者目線で脱炭素につながる豊かな暮らしへの仕掛けと課題を衣食住・職・移動・買物の領域において明らかにし官民連携により行動変容・ライフスタイル転換を促進するための「くらしの10年ロードマップ」を令和6年に作成。この日の発表会は「くらしの10年ロードマップ」の中の「課題解消に向けた主な対策」のひとつ「データ活用した行動見える化、ディマンドレスポンス、住民・従業員へのインセンティブ拡大」の一環として開催された。

発表会ではまず環境省 地球環境局デコ活応援隊の島田智寛隊長(脱炭素ライフスタイル推進室室長)から「くらしの10年ロードマップ」の概要が説明された。続けて太陽光などの再生可能エネルギーの導入量が増加することで春・秋を中心とした需要が少ない時期に晴天等により再生可能エネルギーの発電出力が大きくなる場合は供給量を超える余剰電力が発生する可能性があり、その余剰電力を有効活用するために電気の使用時間を昼にシフトする「上げDR」(昼の電力需要創出)が有効であることが紹介された。
島田隊長は「脱炭素の暮らしを考えたときに『では昼に電力を利用する時間帯を持っていこう』というメッセージがまだまだ広く世の中に伝わっていません。そのメッセージを使えながら消費者側の行動変容とそれに対応する技術やシステムのインフラを整えていかなければいけないという思いでおります。消費者の脱炭素な暮らしをテーマにしている『デコ活』において『上げDR』をテーマにした実証事業を今年度から始めました。『上げDR』が社会に実装されるためには色々な検討すべき点がまだまだありますが、今年度の実証事業を第1歩として受け止めまして、そこから『上げDR』とその先にある脱炭素の暮らしというものを広く世の中にPRしていきたいと思っています」と、今年度から「デコ活」の一環として「上げDR」を促進するための事業をスタートさせたことと活動を広く国民に周知してもらうためにアピールしていきたい旨を語った。
島田隊長からのプレゼンに続いて、株式会社LooopとNature株式会社から「上げDR」実現に向けて実施された実証事業の成果が報告された。

電力小売事業、再エネ事業(EPC、O&M、IPP)、スマートライフ事業(家庭用太陽光・蓄電池の販売)を手掛ける株式会社Looopは3つの実証を行った(「電気代1時間無料およびネガティブプライスキャンペーン実証」、「蓄電池の市場連動制御実証」、「指ロボットによる家電の市場連動制御実証」)。
「電気代1時間無料およびネガティブプライスキャンペーン実証」ではLooopでんきの市場連動型プラン「スマートタイムONE」契約者の一部に対し実証期間において電気料金を無料または-20円/kWhのネガティブプライスで提供するキャンペーンを実施しDR量や環境意識等による行動の変化を測定。
「蓄電池の市場連動制御実証」ではユーザーが所有する家庭用蓄電池に対し太陽光自家消費と市場連動を組み合わせた充放電制御を行ない電気代削減額の検証や顧客アンケート・インタビューによる受容度等の確認を実施。
「指ロボットによる家電の市場連動制御実証」ではLooopでんきの社員である参加者が保有する3種の家電(食器洗い乾燥機、浴室乾燥機、洗濯乾燥機)に遠隔操作で「開始ボタン」などを押すことができる「指ロボット」を取り付け、市場価格が安い時間帯に家電を稼働させるように自動遠隔制御を行い、市場連動制御による電気代削減効果およびユーザビリティの検証を行った。
「電気代1時間無料およびネガティブプライスキャンペーン実証」について、戦略本部 GX推進部 エネルギーイノベーション課 野村勇登課長は「アンケート結果にもありました通り、具体的な『上げDR』の方法がわからないという意見が一定数寄せられました。『上げDR』の具体的な方法だったり参加者の生活パターンに応じたリコメンデーション(例:12時から14時の間でお湯を沸かしておけば電気代を節約できる)を実施すると一定の効果があるのではないかと考えています」などとアンケートを含む実証結果から得た手応えを言葉にした。
執行役員電力本部小川朋之本部長は、3つの実証を通してのまとめとして「いずれも一定の効果を確認できました」とし、同時に「消費者の行動変容」と「機器の自動制御」の両方でそれぞれ特有の課題が確認されたことを報告。「『消費者の行動変容』と『機器の自動制御』は一部の課題を補完し合える関係でもありますので、今後の昼の余剰電力需要創出に向けてどちらか一方ではなく、『消費者の行動変容』と『機器の自動制御』の両輪で取り組む必要があるのではないかと考えています」と語った。

スマートリモコン「Nature Remo(ネイチャーリモ)」や、次世代型HEMS「Nature Remo E(ネイチャーリモイー)」シリーズの開発・製造・販売やデマンドレスポンスサービスの開発・提供などを行うNature株式会社は、蓄電池・エコキュート・電気自動車などを所有する家庭を対象とし「機器制御グループ」と「行動変容グループ」に区分したうえで再生可能エネルギー出力制御が発生する可能性が高い、ないしは電力市場での電力量価格が低い時間帯において上げDR実施指令(電力消費の促進)を行い、「電力需要を昼にシフトすることによる消費者便益」と「消費者視点での最適な電力利用を目的とした行動変容型ディマンド・レスポンス(DR) や機器制御型DRのあり方」を検証した。
事業開発を担当する海老谷実氏は、機器の手動制御と比較して自動制御での「上げDR」では一定の効果が見られたものの自動制御を設定をすることにハードルの高さがあることや、小売電気事業者が提供できる金銭的報酬と消費者が求める金銭的報酬に乖離があることを確認できたなどと報告。「金銭的報酬に関しては(それを実現可能にする制度的な)仕組みなどを導入できれば何かしらの効果があるのではないかと考えています」といい、自動制御設定のハードルの高さについてはより簡素に登録できる設定や仕組みを整備することなどが必要ではないかと話した。
塩出晴海代表取締役は様々な課題があるものの「これからEVが増えていく中でEVの出力をいかに調整して制御していくのかということは非常に大きな課題になっていくと思います」と自身の考えを語って記者発表会は締めくくられた。
取材・文:竹内みちまろ

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