【インタビュー】奥山和由監督、「この映画があることで魂が救われたと思ってくれる方がいればそれでいい」
中村文則氏の原作を瀧内公美主演で映画化した『奇麗な、悪』が公開になった。メガホンを握った監督は、プロデューサーとして数々の日本映画の名作を放ってきた奥山和由だ。「いつもの奥山作品とは違い、上品な作品になりました(笑)」と語る奥山監督に、作品に込めた想いを確かめた。

ーー監督作『奇麗な、悪』公開を迎えましたが、心境はいかがでしょうか。
いつもの奥山作品とは違い、上品な作品になりました(笑)。何百、何千と映画を観ている方々の中には、この映画が響いてくれる人たちが多少なりともいるだろうという期待はしています。観てくださる方たちの絶対数よりは、自分にとってはこの映画があることで魂が救われたと思ってくれる方がいれば僕はそれでいいかなと。

ーー中村文則氏の原作に惹かれていることのほかに、今回の映画化にはよりパーソナルな想いもあるそうですね。
映画監督はAIがするようになるという意見もあるなか、そもそもそれって情報の集積に過ぎないわけですよね。でも映画には人間の不条理を描くジャンルがあり、それらが僕は好きで育ってきた。だから自分でも撮りたいと思ってはいたものの、アニメーションじゃないとお金が集まらないという現実もあるわけですよね。そんな時代なのですが、今回好きに撮っていいという方たちの支援を得て、撮れることになったわけです。
なのでやりたいことをやらせてもらえたので、とても幸運だったと思っています。その上でヒットさせよう、目立といういう欲望が消え失せてしまったところが困ったなと(苦笑)。自分の体に沁みついているとにかく宣伝しないとというプロデューサー気質みたいなものが発揮されないまま、ここまで来たなあという感じです。

ーー先ほど上品な奥山作品と言われていましたが、主人公の独白をワンカットで撮るなど実験性も高い作品でした。これまでのプロデュース作品からの作風の変化についてはいかがでしょうか。
昔はどうしてそんなにギラギラしているのかと言われていましたが、毀誉褒貶、激しかった時期も(この映画のように)似たようなことを考えていたような気がします。
くたびれ果てて歳を取ったからこういう映画を撮っているつもりはないけれど、気が付いたら70歳に自分がなっていて、70歳でこういう映画に辿りついたんだな。こういう映画を作ってしまったんだなと。もしかしたら劇場でかけても、誰も来てくれないかも知れないと(苦笑)、実際、主演をお願いした瀧内公美さんともそういう話をしたほどなんですよ。

ーーひとりで話し続ける瀧内公美さんの表現力も素晴らしかったです。
この映画の企画中、瀧内さんにお声がけをした直後くらいにある映画を観まして、その中で30分間のひとり芝居があったのですが、これがのけぞるくらい面白くなかった。でも、『奇麗な、悪』で本読みをやってみたら、素晴らしかった。生々しさ感のサジ加減が、とてもいい線をいっていた。要はわたしの人生振り返れば、ひどい以外の何者でもないと。僕は中村文則さんの言葉が好きなのですが、その言葉を言っている瞬間よりも、次の言葉を言うまでの行間のリアリティがあってよいなと思ったんです。

ーー映画を楽しみにしている方にメッセージをお願いいたします。
映画の宣伝も今までたくさんして来ましたので、この『奇麗な、悪』は、10人、100人楽しめる映画ではないから難しいなと思っています。それでもどん底の人生であれ、最高の人生であれ、前を向く、光を見る気分にこの映画を観れば無条件になれる、どういうシチュエーションであろうがあの口笛を聴くと前を向く気になれる映画が出来ないかなと思っていたので、そのつもりで作りました。みなさんがどう受け止めるか、楽しみにしています。
公開中
(C) 2024 チームオクヤマ
テアトル新宿にて奥山和由監督の舞台挨拶開催予定です。
【日時】
3月9日(日)
12:30上映回 上映終了後
【登壇者】
奥山和由監督
【劇場】
テアトル新宿
劇場HP: https://ttcg.jp/theatre_shinjuku/
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