進む賃金のデジタル払い!賃金支払いの5原則と賃金デジタル払いとの関係は?
2024年12月13日、株式会社リクルートMUFGビジネスが賃金のデジタル払いが認められる、資金移動業者として厚生労働大臣の指定を受けました。2024年8月9日に指定を受けたPayPay株式会社に続いて2社目となり、今後、増えていくことが予想されます。
実は、賃金のデジタル払いを認めて良いか議論された背景には労働者保護を目的とする労働基準法の存在があります。賃金のデジタル払いは、労働基準法24条の賃金支払いの5原則との関係が問題になるのです。この原則をおさえて頂くと、「賃金のデジタル払い」の本質をご理解いただけると思いますので、今回は、賃金支払いの5原則と賃金のデジタル払いの関係を掘り下げて解説します。
■賃金支払いの5原則
賃金支払いの5原則とは以下になります。
➀通貨払いの原則:賃金は通貨で支払われなければなりません。
➁直接払いの原則:賃金は、労働者本人に直接支払われなければなりません。
➂全額払いの原則:賃金は全額を支払わなければなりません。
➃毎月1回以上払いの原則:賃金は毎月少なくても1回は支払わなければなりません。
➄一定期日払いの原則:賃金は、毎月、一定期日に支払わなければなりません。
■賃金支払いの5原則が求められる理由
これらの原則は全て労働者保護のために定められています。通貨払いの原則は、現物給与を禁止しているのです。現物給与は価格が明瞭ではなく現金化にも不便だからです。直接払いの原則は中間搾取が行われることがないようにするためです。また、様々な理由をつけて労働者に賃金の一部を支払わないことはあってはならないことです。賃金の一部を支払わないことで労働者の足留めを防ぐ趣旨もあり、全額払いの原則が定められています。あまりに賃金の支払いの期間が長いと生活上の不安が生じますので、毎月1回以上の賃金の支払いが必要ですし、支払日が決まっていないと生活の設計も立たないことから一定期日の支払いが必要となっています。
■賃金支払の5原則の例外
以上のように、賃金支払いの5原則は全て労働者の保護を目的としているので、例外が認められています。「全額払いの原則」を貫けば、会社は社会保険料等を控除して労働者へ支払うことができなくなります。夏冬年2回の賞与も「毎月1回以上の原則」に反することになってしまいます。「一定期日払いの原則」を貫けば、臨時の賃金さえ支払えなくなります。これらは不合理です。労働者の保護を目的とした労働基準法の趣旨にも反することになりかねません。
そして、給与の銀行振込も、通貨で直接労働者に支払うわけではないため、賃金支払いの5原則には反しますが、労働基準法24条の「厚生労働省令で定める賃金について確実な支払いの方法」として例外的に認められています。
銀行振込に加え、資金移動業者への賃金支払いも、労働基準法24条の枠組みの中で新たに認められたのです。キャッシュレス決済の普及と多様なニーズに対応するため、厳格な要件のもとで新たな支払方法が認められるのは、時代の流れと言えるでしょう。
今回の記事でご説明した賃金支払いの5原則と例外は、会社の就業規則の賃金の章(又は賃金規程)に取扱いが定められていると思います。ご確認してみて下さい。
■まとめ
今回は、賃金のデジタル払いの背景にある考え方について触れました。労働基準法は働く上での法律であるので、時代とともに変化していきます。しかし、決して変わらないことがあります。それは、労働者を保護する趣旨の法律であるという点です。全ての法律には制定された目的(立法趣旨)があります。法律が絡むニュースは法律の立法趣旨を念頭においていただくと、より理解が深まるのではないでしょうか?

最新の気になる時事問題を独自の視点で徹底解説するWEBメディア「JIJICO」。各分野の専門家が、時事問題について解説したり、暮らしに役立つお役立ち情報を発信していきます。
ウェブサイト: https://mbp-japan.com/jijico/
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。