5年に一度の国交省の住生活総合調査、結果は持ち家志向や新築主義の減少顕著!

5年に一度の国交省の住生活総合調査、結果は持ち家志向や新築主義の減少顕著!

国土交通省では、5年ごとに大規模な「住生活総合調査」を実施している。このたび、2023年(令和5年)12月時点の状況を調査した速報集計が公表(詳細な結果=「確報集計」は夏頃公表予定)された。そこで今回は、この中から注目したいポイントをいくつか紹介しよう。

【今週の住活トピック】
「令和5年住生活総合調査」結果(速報集計)を公表/国土交通省

調査対象は全国で、高齢者比率が高く持ち家一戸建てが多い

まず、全国の7万2421世帯の集計をした大型調査なので、調査対象のイメージを確認しておこう。

世帯の家計を主に支える人の年齢は、比率の高い順に「75歳以上」23.8%、「65~74歳」23.5%、「40~49歳」12.6%など、高齢者が多くなっている。「30歳未満」はわずか4.5%なので、少子高齢化の日本を如実に反映している。世帯年収は、比率の高い順に「200~300万円未満」16.5%、「500~700万円未満」14.9%、「300~400万円未満」14.7%など、200~1000万円未満に多く分布している。

肝心の住宅のタイプは、持ち家72.4%:借家27.6%とおおむね7:3の割合だ。持ち家の中でも、一戸建てが60.4%なので、調査対象の多くが持ち家一戸建てということになる。マンション化が進む大都市、とりわけ都心部の属性とは大きく異なっている点に留意したい。

住宅や居住環境への不満は減少傾向減りつつあるものの、持ち家より賃貸で不満率が高い

さて、持ち家、賃貸のそれぞれに住宅と居住環境に関する総合評価(満足か不満か)を聞いたところ、以下のようになった。

■持ち家・借家別 住宅・居住環境に関する総合評価
『満足率』(=「満足」+「まあ満足」):持ち家79%、借家74%、
『不満率』(=「多少不満」+「非常に不満」):持ち家20%、借家25%

この結果は、前回(平成25年調査)からおおむね横ばいで、持ち家のほうが『満足率』がやや高く、借家のほうが『不満率』がやや高い傾向も変わらない。

持ち家と借家で満足率・不満率で差が特に大きいのは、「単独世帯(65歳以上)」と「親+子ども世帯(長子17歳以下)」だ。調査結果ではその理由がわからないが、一般的に、単身の高齢者が借りられる賃貸住宅が限られることや、子育て世帯が望む広い賃貸住宅が少ないといったことが、関係しているのかもしれない。

持ち家・借家別の総合評価

家族類型別持ち家・借家別の総合評価(出典:国土交通省「令和5年住生活総合調査の調査結果」(速報集計)のポイント」)

では、住宅の評価で『不満率』が高いのは、どういった項目だろう。

住宅の個別要素に対する不満率

住宅の個別要素に対する不満率※上位5位までを抜粋(出典:国土交通省「令和5年住生活総合調査(速報集計)報告書」)

不満率の高い順に、1位「高齢者への配慮(段差がない等)」43.4%(対前回3.8ポイント減)、2位「断熱性」41.1%(2.5ポイント増)、3位「エネルギー消費性能(光熱費の節約)」39.7%(3.4 ポイント増)、4位「地震に対する安全性」38.4%(5.2ポイント減)、5位「いたみの少なさ」37.9%(0.3ポイント増)といった結果となった。

「断熱性」と「エネルギー消費性能(光熱費の節約)」は前回調査より不満率の増加が目立つが、上位10位はおおむね不満率が前回より減少している。これは近年、安全面や暮らしやすさなどの住宅の性能が上がっているものの、政府が住宅の省エネ化に力をいれていることもあり、省エネ性の高い住宅が好まれることで不満を感じやすいといったことが背景にあると考えられる。

5年以内に住み替えたのは、ライフステージが変わったから?

次に、令和5年12月時点から最近5年間に住み替えた人を対象に、その理由を聞いた結果を見ていこう。
多い順に、「世帯からの独立(結婚、離婚、単身赴任などを含む)」13.2%、「転勤や退職(定年などを含む)」 6.9%、「就職や転職」が 6.5%となった。住まいの移転を伴うライスステージの変化によるものが上位を占めた。

ただし、持ち家に住み替えた人に限ると、「自宅を所有するため」18.2%、「子どもの誕生・成長・通学」 8.9%など、単なるライフステージの変化ではなく、所有や広さなどを求めるといった理由が上位になるのが特徴だ。

最近5年間に実施した住み替え等の理由

最近5年間に実施した住み替え等の理由※上位5位までを抜粋(出典:国土交通省「令和5年住生活総合調査(速報集計)報告書」)

では、今後は住み替える場合に、持ち家と借家のどちらを選ぶのだろうか?
現在持ち家の世帯では、「持ち家への住み替え」(59%)が、現在借家の世帯では「借家への住み替え」(49%)が最も多くなった。ただし、調査ごとの推移を見ると、いずれも「持ち家への住み替え」意向が減少し、「借家への住み替え」意向が増加している。これは、近年、住宅価格が上昇していることの影響があるのかもしれない。

今後の居住形態に関する意向

今後の居住形態に関する意向(出典:国土交通省「令和5年住生活総合調査の調査結果」(速報集計)のポイント」)

今後持ち家に住み替えるなら、やっぱり新築?

それでは、持ち家に住み替える場合に、新築と既存(中古)のどちらを選ぶのだろうか?
現在持ち家の世帯も借家の世帯も、「新築住宅」の選択意向が強いが、経年変化を見ると、「新築住宅」と「どちらでもない」が減少し、「既存住宅」が増える傾向にある。

持ち家への住み替え後の居住形態(新築住宅・中古住宅別)

持ち家への住み替え後の居住形態(新築住宅・既存住宅別)(出典:国土交通省「令和5年住生活総合調査の調査結果」(速報集計)のポイント」)

新築より数の多い既存住宅のほうが、探しやすいということかもしれない。「既存住宅を購入する際の選択条件では、2位の「希望する広さや間取りであること」の16.9%に大きな差をつけて、「希望する立地にあること」(55.7%)が1位になった。希望する立地で見つかるなら、既存住宅で良いということだろうか。

さて、「住生活総合調査」は5年ごとに調査を実施しているので、次の実施は2028年(令和10年)になる。5年間で人々の住宅への意識も変わるし、近年はそのスピードが加速している気がする。持ち家や新築への意向が弱まるなか、住宅業界自体も変化が求められている。

●関連サイト
国土交通省「令和5年住生活総合調査」結果(速報集計)を公表
令和5年住生活総合調査(速報集計)結果の概要のポイント
令和5年住生活総合調査(速報集計)報告書

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