『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』アクション監督・谷垣健治インタビュー「“理屈に合った誇張”を目指しました」

香港で広東語映画作品として歴代No.1の動員数を記録(※2024年9月現在)し、アカデミー賞香港代表にも選出された超話題作『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』が1月17日より公開中です。

ルイス・クーを主演に迎え、香港映画界のレジェンド、サモ・ハンほか、アーロン・クォック、リッチー・レンなど豪華俳優陣に加え、レイモンド・ラム、テレンス・ラウ、トニー・ウー、ジャーマン・チョン、フィリップ・ン等若手実力派がアクション・シーンを更に盛り上げる本作。『るろうに剣心』の谷垣健治さん仕込みの痛快アクションシーンがとにかく最高!なのです。

【アクションメイキング映像】https://youtu.be/2nnVe2IHguo

谷垣さんにアクションへのこだわりや撮影の思い出についてお話を伺いました。

――本作とても楽しく拝見させていただきました!参加の経緯はどの様なものだったのでしょうか。

本作にはプロデューサーが何人かいるのですが、現場のプロデューサーのパン・ヨクラムとは『ドラゴン危機一発’97』という映画からずっと知り合いで、今回声がかかりました。彼女は『イップマン』シリーズとか様々なアクション映画に携わっていますが、『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』が小説原作の漫画化作品ということもあって、「るろうに剣心」シリーズなどをやってる僕に合うと思ったのではないかと思います。

――「こんなアクションをお願いします」といったオーダーはあったのでしょうか?

最初は韓国映画っぽいリアルで暴力的な感じを望むのかなと想像してました。何しろソイ・チェン監督ですから(笑)。ところが割と誇張して構わないということだったので、それだったらいろいろ遊べるなと思いました。ただ、誇張するといっても空中を浮遊するアクションなどは僕は大嫌いだから、そこは「理屈に合った誇張」を目指しました。人間ができないことをやってるわけじゃない、だけど普通の人間には到底出来ないこと、というラインですね。スタイリッシュなものよりも、熱量のあるものの方が観客の印象には残ると思うので。

――おっしゃるとおり重力を感じさせるというか、実際の壁や家具を利用していくアクションも迫力満点でしたね。

力点と支点と作用点があるとすると、そこの力点は絶対に存在する形で作りたいなと思います。派手にドーンと飛ぶ時には、必ず足でのカットもシーンにいれないと、映像で観た時に急にふわっと飛んでしまう様になってしまう。

――なるほど。本作を拝見していて「なんて悪いんだ!」という戦い方も話題になっていますが、善悪でのアクションの違いを考えたり、区別したりすることはありますか?

変わらないですね。役者も芝居する時に、「悪く演じよう」と思うのではなく、自分なりの整理とか理屈を見つけて演じていると同じだと思います。ただ、そのキャラクターを立たせるためのポーズを作るとか、みんなに覚えてもらえるシンボリックなものをつけようという工夫はできる限りしようと心がけています。昔のアクション映画にはよくありましたが、1キャラクターに1つアクションや武術のスタイルがあるほうが作りやすいですよね。本作での若い世代の俳優たちはストリートファイトというか、ヤンキーアクションだったのですが、戦いが進んでいくにつれて特徴的な武器を使わせるとか、1キャラクター一武器みたいな感じで考えてはいました。

信一だったらバタフライナイフを持っていたり、ロッグワンは生きるための戦いなので、耳を噛んだり、バールを自分で溶接してカスタマイズして戦ったり。ジャーマン(セイジャイ役)は元々アクションが出来るので彼の体自体が武器という。蹴りって実はすごく難しいのだけれど蹴りが出来ることがすごいです。 アクション映画界隈では近接格闘技が近年流行っていますけれど、あれは1日2日練習したら、何となく形になるということも大きいと思います。蹴り技はそうは行きませんからね。そうやって、それぞれの戦いの特徴を分けています。
よく「アクション練習」って言いますけれど、数ヶ月、数十回の練習でできることなんてたかが知れてます。ですから、その時間を使ってそれぞれの俳優が得意なことを見つけ、それを伸ばしてあげる時間ということです。
そしてそれぞれのキャラ設定に準じつつも、彼ら自身の得意なことをできるだけ生かしたアクションを作れればと思っています。

――俳優さんの動きを見て、すぐにプランは決まったのですか?

すぐには固まらないですよ! こういう方向かな?というのを試しながら本番ギリギリまでずっと模索している感じです。特に本作はしっかりした脚本が無かったので。エンディングのアクションを撮ってる時に最後王九をどうやって倒すかをみんなで相談してましたからね(笑)。そこでテレンス(・ラウ)が言ったアイデアを聞いて、僕と監督が「それ面白いかも」と思い、それを膨らまして現在の形になりました。

――そうやって現場で臨機応変に作っていきながらも、まとまったストーリーになっているのがすごいですね。

結果オーライとしか言いようがない(笑)。

――スタッフ、キャストの皆さんに共通認識があるからこそフレキシブルに作っていけるのですね。

そうですね。普段はモニター前に監督がいて、僕がいて、俳優陣も自分の出番じゃない時も現場にいるから会話が多いですよね。そこの会話から新たなものが取り入れられたり、日々状況は変化していくので、アクション映画のエンディングは本当に最後に撮ることが多いです。
ところで冒頭のバスのシーンは、一時期トラックの中で戦うという案もあったんですよ。バスだと「途中で停留所になぜ止まらないの?ずっと走ったままだとおかしくないか?」という疑問がスタッフから出て、ならばトラックの中で戦ったらどうかという意見が出ました。でも理屈としては合ってるかも知れないけど、そんな面白くも何ともない。最終的には監督がバスで行こうとなったからあのシーンが生まれたわけですが、物事を全部理性で考えてしまったら映画がたちまちつまらなくなる、といういい例だと思います。

――そうだったのですね。バスのシーンを見ることが出来て本当に良かったです!

1980年代の冷房のついていない「熱狗(ホットドッグ)」という愛称のバスで、今は現存していないのですが、コレクションで持っている人がいたので、その方に借りたんですね。ネーザンロードという、日本で言えば表参道みたいな道で撮影したんですが、コロナ禍だった2021年の撮影で人が歩いていなかったこともあり、スムーズに撮影することができました。バスを貸してくれた方は僕たちに壊されないかハラハラして見ていたと思いますけれどね(笑)。

――本作は若いスタッフさんも参加されていたということですが、谷垣さんに憧れている方もたくさんいらっしゃったのではないでしょうか。

いやいやいや、そんなことないですよ。でも香港映画界に紛れ込んでから30年以上経って、今でもこうして僕を必要としてくれるのはありがたいことだと思います。本作の様に香港でしか撮れないアクションもありますし、日本でしか撮れないアクションもある。それぞれの魅力を活かした作品作りを大切にしたいといつも思っています。

――今日は素敵なお話をありがとうございました!

▲谷垣さんに写真&香港の劇場特典やグッズ達を見せていただきました!バス欲しい!

<ストーリー>
九龍城砦(きゅうりゅうじょうさい)――かつて無数の黒社会が野望を燃やし、覇権を争っていた。
80年代、香港へ密入国した若者、陳洛軍(チャン・ロッグワン)は、黒社会の掟に逆らったことで組織に追われ、運命に導かれるように九龍城砦へ逃げ込む。そこで住民たちに受け入れられ、絆を深めながら仲間と出会い、友情を育んでいく。やがて、九龍城砦を巻き込んだ争いが激化する中、陳洛軍たちはそれぞれの信念を胸に、命を懸けた最後の戦いに挑む――。

監督:ソイ・チェン アクション 監督:谷垣健治 音楽:川井憲次
出演:ルイス・クー、レイモンド・ラム、テレンス・ラウ、フィリップ・ン、トニー・ウー、ジャーマン・チョン、リッチー・レン、
ケニー・ウォン、サモ・ハン、アーロン・クォック
2024年/香港/125分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/原題:九龍城寨之圍城/PG12 配給:クロックワークス
公式HP https://klockworx.com/movies/twilightwarriors/  X:@totwjp
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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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