劇場アニメ『ベルサイユのばら』吉村愛監督インタビュー「美しい絵と大河ドラマの様なストーリーが魅力的」
革命期のフランスで懸命に生きる人々の、愛と人生を鮮やかに描いた池田理代子の代表作「ベルサイユのばら」。1972年より「週刊マーガレット」(集英社)にて連載され、現在累計発行部数は2000万部を突破。連載中から読者の熱狂的な支持を集めた漫画は、宝塚歌劇団による舞台化やTVアニメ化と、数々の方面でも社会現象を巻き起こし、少女漫画界に金字塔を打ち立てました。
不朽の名作が1月31日(金)、ついに完全新作での劇場アニメ公開!連載開始から50年以上の時を経てなお、全く色あせない「ベルサイユのばら」の世界。そしてオスカル達の生き様。その物語が、新たな劇場版となって幕を開ける――。本作を手がけた吉村愛監督にお話を伺いました!
――本作とても楽しく拝見させていただきました!吉村監督はもともと「ベルサイユのばら」の大ファンとのことですが、お好きになったきっかけはどんなことなのでしょうか?
親戚のお姉ちゃんの本棚に原作漫画があって読んだのがきっかけなのですが、私の出身が大阪で、宝塚歌劇団の演目をBSでTV放送している様な環境でした。実際に行って「ベルサイユのばら」の演目を観たことをきっかけに本格的にファンになっていって、そこから再度原作を読み始めたという贅沢な入り口だったんです。
宝塚版は美しいルックスが魅力的で、ストーリー自体も素晴らしくて惹きつけられて。皆さんもそうだと思うのですが、歴史もしっかりと描かれていて、大河ドラマの様なストーリーがとにかく魅力的だと思います。
――おっしゃるとおり、私も原作を読む前は少女コミックのイメージが強かったのですが、本格的な戦いも描かれていますし、かなり熱いストーリーですよね。
凄いですよね。本作の制作にあたってフランスの歴史をもう一度学び直したのですが、フランス革命前夜までは知っているけれど、その後のことはよく分かっていなかったなと気付きました。「ベルサイユのばら」で描かれているのは、(マリー・)アントワネットが嫁いでくるところから、革命に突入していくという所までで。アントワネットの人生をもう一度読み直した時に、実際のフランスの歴史と「ベルサイユのばら」で描かれていることにあまり差異が無い所もすごいな、池田先生は素晴らしいなと思いました。
オスカルは架空の人物で実際の歴史には出てきませんが、いる様な気がするほどのリアリティを感じて。「ただ単純に一般の兵士だったから描かれていないだけでしょ?」みたいな印象を持てるぐらいよく出来ていて驚きます。
――日本人がこれだけアントワネットのことを知っているというのも確実に「ベルサイユのばら」の影響ですよね。
こんなにアントワネットのことが好きなのは日本人くらいではないかと言われているそうです(笑)。史実では圧倒的にワガママで悪女の様に描かれているのですが、読んでいると「そこの裏に実はこういうことがあったんじゃないか?」と思わせるくらいのキャラクター描写力を感じるんですよね。どのキャラクターもそうですが、アントワネットの描き方は特に精巧だなあと思います。
――確かに、パリ五輪開会式でのアントワネットの演出もビックリでしたものね(笑)。
あの時は、まだ本作を作っている最中だったのでとてもビックリしました。「私たちの愛するアントワネットが!」と思いました(笑)。
――それはビックリしますよね…!(笑)本作はとても素晴らしいアニメーションとストーリーで、たくさんの時間をかけられたかと思います。
一番最初に企画が始まった頃からすると9年ほど経っているらしいです。コロナ禍もあり制作が思う様に進まず大変な思いをしました。コロナ禍前に脚本作業は終了していたのですが、スタッフがなかなか集まらず結局自分でほとんど全ての絵コンテを書かなきゃいけないことになり苦しかった時期もありました。元々は色々な方が異なる手法でこの作品を表現する、そんな方向性を想定していたので。後はロケハンに行けなかったことも大きかったですね。フランスへのロケハンの日程を調整している時にロックダウンがはじまって、現地に行けないまま作り始めるという。なので、Googleマップのストリートビューで様々な角度から建物を研究したり、フランスに行った方のブログの写真を参考にさせてもらったりもしました。
――確かにアニメーションって平面ではないですものね。建物にしても色々な角度から見る必要があったわけですね。
ここを見たいのに、こっちの角度が無い!みたいなもどかしさもありつつも、Googleマップ、YouTube、旅行ブログがなければ完成しなかったと思います。YouTubeは写真では分からない建物のサイズ感や奥行きを教えてくれたのですごく助かりました。今は、スタッフみんなと「来年答え合わせに行こうね」と話しています。
――ぜひ皆さんで行っていただきたいです。本編はもちろんオープニングの映像が本当に素晴らしくて、花々に自分が包まれる様な感覚になりました!
とにかくオープニングはバラたっぷりで華やかにしたいなと思っていました。原作の表紙にも必ず花が描かれていて、それがとても綺麗なんですよね。本編のストーリーではフランスという国のことや戦争のことが骨太でしっかり描かれているので、オープニングはとにかく華やかに、そして、印象的な池田先生の絵を全部いれようと思いました。ギャラリーの様な感覚で楽しんでいただきたいという気持ちもあり、フレームの様な装飾もいれています。私自身がそうですが、原作ファンの方には必ず思い入れのある絵があると思いますので、出来るだけオープニングに入れたいと思って試行錯誤していました。時間はかかりましたけれど、綺麗でカッコ良いキャラクターたち、熱いストーリーを描けたと思いますので、多くの方に劇場で楽しんでいただきたいです。
――今日は素敵なお話をどうもありがとうございました!
劇場アニメ『ベルサイユのばら』
1月31日(金)全国ロードショー
原作:池田理代子
監督:吉村愛
脚本:金春智子
キャラクターデザイン:岡真里子
音楽プロデューサー:澤野弘之
音楽:澤野弘之、KOHTA YAMAMOTO
アニメーション制作:MAPPA
製作:劇場アニメベルサイユのばら製作委員会
配給:TOHO NEXT、エイベックス・ピクチャーズ
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ:沢城みゆき
マリー・アントワネット:平野綾
アンドレ・グランディエ:豊永利行
ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン:加藤和樹 ほか
ナレーション:黒木瞳
主題歌:絢香『Versailles – ベルサイユ – 』
(C)池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会
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