世界の名建築を訪ねて。集合住宅建築の名手、世界的な建築家ジーン・ギャングの作品「ホイト11(Hoyt)」/ニューヨーク
世界中の建築を訪問してきた建築ジャーナリスト淵上正幸が、世界最先端の建築を紹介する連載21回目。今回は、集合住宅建築の名手である、世界的な女性建築家ジーン・ギャングが手掛けた、アメリカ・ニューヨーク市のブルックリンにある集合住宅「ホイト11(Hoyt)」を紹介する。
波打つファサードをもつブルックリン界隈の花形建築
アメリカのニューヨークというと、多くの人はマンハッタンを想起するが、実はニューヨーク市はもっと広く5つの行政区からなっており、そのひとつがブルックリンだ。ブルックリンの位置はロング・アイランド島の西端にあり、かつ自由の女神の右側方向でイースト・リバーの河口に面している。
(C)Binyan Studios
もともとは市民生活や商業施設の中心地であったブルックリンのダウンタウンは、過去20年間に住民が40%以上も急速に増加したために、市民が集える居心地のいいアウトドア・スペースが相対的に減少してしまったのだ。以前はパーキング・ガレージであった1ブロック分の敷地全てを緑の台地に変えたが、それは第5番目のファサードと呼ばれた。その敷地に建った波打つファサードの集合住宅タワーが「ホイト11」である。
敷地はストリートを往来する人々からは見えるものの、敷地におけるアウトドア環境はサスティナビリティの高い状況にあるが、ガーデンや木陰、あるいはアメニティーにおいては、近隣住民と出会い話し合う憩いの場所ともなっている。
集合住宅建築の名手、世界的な女性建築家ジーン・ギャング
今やザハ・ハディド亡き後、女性建築家として世界的に名を馳せているのがシカゴ出身のジーン・ギャングだ。彼女は集合住宅建築デザインの名手で、特に微に入り細を穿ったファサード・デザインは定評がある。彼女が得意とする集合住宅タワーの魅力ある表情は、従来の四角四面の堅いデザインでなく、界隈に刺激を与え住民に喜ばれる素晴らしさがあるのだ。
「ホイト11」は特徴あるファサードからも分かるように、意表を突くように外壁が突き出ているのがユニークだ。その分広がりのあるリビング・スペースができている。内部の窓際には造り付けのシートがデザインされ、高さ約240cmの窓からは、近隣景観やウォーターフロント、加えて自由の女神までが眺望できるというパノラミックな楽しみがある。また造形的な建物の突き出た部分も、住人は内部からも見ることができる。
(C)JESSE DAVID HARRIS
「ホイト11」には多種にわたる人々が住んでいるため、190以上のフロア・プランが用意されている。57階建て高さ191mの建物はプレキャスト・コンクリートで建設されており、波打つファサードの住戸はプレファブ化され、現場でしかるべき位置に組み立てられた。タワーのコンパクトな建築面積や敷地の低さによって、溢れんばかりの自然光が緑の敷地やストリートに対して注がれている。
窓際ベンチでマンハッタンの景観を楽しめる
住戸のインテリアは、先述のように大きな開口部沿いに窓際ベンチが設えられており、住民はそこに腰掛け、ワイドなマンハッタンの景観が手に取るようにエンジョイできる仕組みになっている。アメニティーとしては、大きなインドア・プールをはじめ、フィットネス・フロア、ゲーム・ルーム、ミュージック・ルームなどが完備されている。
(C)Binyan Studios
(C)CSM0947
本連載では、ジーン・ギャングを一躍世界的に知らしめた「アクア・タワー」をはじめ、傾斜したガラス開口部をもつ「ソリスティス・オン・ザ・パーク」、ランダムな外観形態をもつ「MIRA集合住宅」、華麗なファサードをもつ「100 Above The Park」など、彼女のユニークな作品を紹介してきた。今回紹介する「ホイト11」は前述した作品と同じように特徴あるファサードだが、高さが200m近くある波打つスリムな外観は、ブルックリン界隈の花形建築と言っても過言ではなさそうだ。なお建物名の「ホイト11」はホイト通り11番地に由来している。
~まだ見ぬ暮らしをみつけよう~。 SUUMOジャーナルは、住まい・暮らしに関する記事&ニュースサイトです。家を買う・借りる・リフォームに関する最新トレンドや、生活を快適にするコツ、調査・ランキング情報、住まい実例、これからの暮らしのヒントなどをお届けします。
ウェブサイト: http://suumo.jp/journal/
TwitterID: suumo_journal
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。