誹謗中傷は“社会の現代病”!最新実態調査の結果と向き合い方や対処方法を専門家に聞く
芸能人や政治家、スポーツ選手などの著名人だけではなく、学校や職場をはじめ個人の身近な人間関係などにおいてもインターネットやSNS上での誹謗中傷が社会問題となっている昨今。
そんな誹謗中傷という問題への向き合い方や解決の糸口を探ることを目的に、全国の生活者3,800名を対象とした「誹謗中傷における被害者・加害者・第三者の実態調査」を実施したのが人と社会のために問いを探究する、リサーチとプランニングの会社であるQO株式会社。
その調査結果の発表と、誹謗中傷への適切な予防や対処方法を専門家から聞く『「社会において慢性化する誹謗中傷」との向き合い方を調査結果から紐解く』と題した報道関係者向けのオンラインセミナーが2024年12月2日に開催されました。
誹謗中傷に麻痺している世の中と適切な対処がなされていない現状が浮き彫りに
セミナーの前半では、社会課題に光を当てる『Social Issue Lab』(通称 SIL)が実施した今回の実態調査の結果がQO株式会社 代表取締役社長 兼 SIL所長の恒藤優さんより発表されました。SILは、調査の力で社会の声なき声を拾い、社会課題を知るきっかけを届ける研究機関。QOが培ってきたリサーチの技術や知見を社会に届けることを目指して2023年より活動を開始、2024年10月17日から「誹謗中傷」をプロジェクトテーマとして本格的に研究活動をはじめ、調査レポートやソーシャルレターを発信しています。
調査結果からは、誹謗中傷は慢性化し、いわば“社会の現代病”となっており、良くないこととわかっていながらも生活者は麻痺して慣れてしまっているということが浮き彫りになってきたそうです。
また普通の人が日常の中で突如強い言葉で強烈に巻き込まれる「事故」のような側面もあることもわかってきました。ネット上の誹謗中傷経験は、当事者(加害者 2.8%・被害者 9.7%)になったことがある人は少数である一方、多くの人が第三者(37.6%)として見聞きした経験があり、ごく少数の人から多くの人が関係するものになっていくことが判明。
第三者視点から見ると、誹謗中傷を見聞きした際に、「面倒くさそうなので関わりたくないと思った」「無視するのがいいと思った」といった回答が目立ち、世の中全体として「誹謗中傷は取り合わなければ問題にならないこと」と感じる生活者の深層心理もうかがえる結果に。
誹謗中傷を受けた時に被害者側は「絡まれて面倒くさく感じた」「誹謗中傷されても無視すればいいと思った」といった回答が上位にあがる一方で、「受け流すことができず、しばらくの間ひきずった」といった回答も多いこと。
さらに誹謗中傷を受けた際に助けになったことや気持ちが救われたことは「特にない」が最も多い回答となり、被害者への助けが足りていない現状が明らかになったそうです。
また誹謗中傷された時の行動は無視や回避が多く対処している人は少数派で、それには「どう対処していていくべきかわからない」という人が多く存在することが関係しているのではないかということでした。
「誹謗中傷されても仕方ない」や「無視すればいい」といった空気感ではなく、誹謗中傷が恐ろしい行為であり、絶対にしてはならないという意識が広がり、強まっていくこと。そして、わたしたち一人一人にできることとして、”助け”が不足している被害者に対してできる寄り添いや、支持を言葉にすることから考えていきたい。」と恒藤さんは訴えます。
誹謗中傷はごく一部の人が行っているという実態
後半では、社会情報学などを専門とする国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授の山口 真一さんより、ネット上の誹謗中傷の実態と適切な予防・対処方法についての講演がありました。ネットやSNSの普及により、人類総メディア時代となっている今、誹謗中傷問題は著名人、YouTuber、ジャーナリストをはじめ、一般の人にまで及び、誰もが自由に発信できる世の中でありながら、表現の萎縮が起こることがあると山口さんが指摘。
誹謗中傷被害の実態としては青少年で顕著に問題となっており、特にXなどネット上の見ず知らずの人からの被害が多いそう。
しかし、炎上1件にTwitterでネガティブな書き込みをしている人は、ネットユーザの約40万人に1人(0.00025%)に過ぎなかったというデータがあり、ネット上ではごく少数のさらにごく一部が世論を作っている実態があるそう。極端な意見が目立ちやすいというネット上の特性があり、これを理解しておくことが重要だといいます。
誹謗中傷被害の予防策として、不特定多数が存在するネット上では、自撮りや恋人・パートナーとの投稿、政治的な話題などの発信をする際は注意深く行うこと、攻撃的な投稿をしていると自分も攻撃を受けることがあるため、攻撃的にならないことを提案。
また対処方法としては、1人で抱え込まないこと、削除依頼をすること、相談窓口や弁護士に相談することが良いそうです。
さらに加害者とならないために、情報の偏りを知る・自分の「正義感」に敏感になる・自分を客観的に見る・情報から一度距離をとってみる・他者を尊重するの5つを挙げ、「極端な人」にならないことが大切だと伝えました。
被害者に寄り添うための特設サイト公開中
QO株式会社は今回の調査結果を受け、誹謗中傷をされた人に寄り添うための取り組みとして、歌人・木下龍也さんによる「心のお守り」となる短歌を集めた「誹謗中傷にお守りを。」特設サイトを公開しています。
傷ついた心に寄り添い、少しでも癒しや励ましを届けることを目指した短歌が並び、気になったものはSNSでシェアすることもできます。
今後も誹謗中傷を少しでも減らすための解決の糸口につながるアクションの企画や実施に取り組んでいくそうです。
良くないこととわかっていながらも、積極的に対処することなく、麻痺してしまっている現状がある誹謗中傷。
いつどこで誰が巻き込まれてしまうかわからない、身近に関わる社会問題として、一人一人がしっかりとした軸を持って考えていく必要がありそうです。
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