車いすメジャーなど、取り組みが次々と形に。高齢者、外国人など、住まいの支援が必要な人への支援をムーブメントに「100mo!(ひゃくも)」第2回イベント開催!

車いすメジャーなど、取り組みが次々と形に。高齢者、外国人など、住まいの支援が必要な人への支援をムーブメントに「100mo!(ひゃくも)」第2回イベント開催!

高齢者、外国人、障がい者、LGBTQ+、ひとり親世帯、低所得者など、住まい探しに困難を抱える人の問題に向き合うことを目指すSUUMO(リクルート)の取り組みが「100mo!(ひゃくも)」です。
2024年10月10日には、賃貸住宅に関わる人や住まいの支援に取り組む人たちの表彰と情報交換を目的とした第2回目のイベントを開催しました。当日の様子とともに新たに形になった取り組みを紹介します。

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2回目の開催、車いすメジャーなどの取り組みが形に

「100mo!」では「あなたも。私も。みんなも。百人百通りの住まいとの出会いを♪」をコンセプトに掲げ、高齢者、外国人、障がい者、低所得者、LGBTQ+、ひとり親世帯など、住まい探しに困難を抱える人の課題に向き合うことを目指しています。SUUMO(リクルート)が2021年に立ち上げたプロジェクトです。

前回の第1回に続き、第2回となった今回のイベントに参加したのは、前回同様、不動産会社や不動産オーナー、居住支援法人の職員など、賃貸住宅に関わる人や住まいの支援に取り組む人たち。イベント冒頭では、課題感を参加者と改めて共有しながら、これまでの成果として新たに形となりつつあるプロジェクトを紹介しました。

2021年から「あなたも。私も。みんなも。百人百通りの住まいとの出会いを♪」をコンセプトに取り組んでいるSUUMOの「100mo!」プロジェクト(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

2021年から「あなたも。私も。みんなも。百人百通りの住まいとの出会いを♪」をコンセプトに取り組んでいるSUUMOの「100mo!」プロジェクト(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

その一つが「車いすマット」と「車いすメジャー」の開発です。日本には約200万人もの車いす利用者がいますが、SUUMOをはじめとする不動産検索サイトで物件を検索しても、実際に内見するまで車いすで生活できる部屋かどうかがわからない、という問題がありました。この問題を解決するため、物件情報に掲載する画像を撮影する際、車いすの絵が描かれた「車いすマット」や通路や出入り口の幅がわかる「車いすメジャー」を置いて撮影するのです。この開発やテストにはSUUMOに物件情報を掲載する100社以上が協力し、より良いものにするために現在も試作を重ねています。

「車いすマット」の使用例。“80cm”は、車いすの横幅より少し広い、車いすが通れるサイズ。マットを置くことで、ひと目で物件写真から車いす利用者が生活できる物件かどうかを判別できるようにした(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

「車いすマット」の使用例。“80cm”は、車いすの横幅より少し広い、車いすが通れるサイズ。マットを置くことで、ひと目で物件写真から車いす利用者が生活できる物件かどうかを判別できるようにした(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

「車いすメジャー」の使用例。「車いすマット」よりもコンパクトで持ち運びしやすい(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

「車いすメジャー」の使用例。「車いすマット」よりもコンパクトで持ち運びしやすい(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

イベントでは「車いすマット」や「車いすメジャー」の実物を展示、配布した(写真撮影/唐松奈津子)

イベントでは「車いすマット」や「車いすメジャー」の実物を展示、配布した(写真撮影/唐松奈津子)

ほかにも、不動産会社をはじめとする住まい探しを仲介・支援する立場の人に向けて、住まい探しに困難を抱える人たちに対する理解を深めるウェビナー(動画の配信)や、『SUUMOジャーナル』で住まいの支援に取り組む人たちの想いやノウハウを紹介する特集連載「百人百通りの住まい探し」についても紹介しました。

外国人、高齢者への取り組みで受賞した3社の「乗り越え力」

イベントの前半でメインとなるのが、住まい探しに困難を抱える人たちに対し、積極的に取り組む企業の表彰です。今年は、低所得者の賃貸住宅への入居を支援するハウジングプラザ、外国人向けにさまざまなサービスを提供する日本エイジェント、賃貸オーナーが空室を活用して住まいの支援(居住支援)に取り組む岡野
不動産の3社が受賞しました。

ハウジングプラザが本店・支店を置く東京都世田谷区では、高齢単身者が増加しており、生活保護受給者が多いという課題を抱えています。区からの「生活困窮者に部屋を紹介してほしい」という相談をきっかけに2021年8月に福祉事業部を設置し、各店に支援に取り組む担当者を配置。同年12月からは家賃保証会社と業務提携して生活保護受給者対象の家賃保証プランを提供開始するなど仕組み化することで、住まいに困る人とオーナーの双方に寄り添っています。

ハウジングプラザ エリアマネージャーの山﨑優(やまざき・ゆう)さん(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

ハウジングプラザ エリアマネージャーの山﨑優(やまざき・ゆう)さん(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

ハウジングプラザでは、福祉事業部を設立して対応するとともに、生活保護受給者への取り組みを売上につなげること、オーナーの安心感を醸成することに注力してきた(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

ハウジングプラザでは、福祉事業部を設立して対応するとともに、生活保護受給者への取り組みを売上につなげること、オーナーの安心感を醸成することに注力してきた(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

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世田谷区でも高齢者世帯増の波。区と地元の不動産会社が手を組み、安否確認、緊急搬送サービスなど入居後も切れ目ない支援に奔走

愛媛県松山市に本社を置く日本エイジェントは、代表である乃万春樹(のま・はるき)さんが、外国人の住宅確保の難しさに直面した原体験をもとに、外国人向けのさまざまなサービスを提供するようになりました。多言語対応ができるスタッフの採用やオーナー・管理会社向けのセミナー開催、外国人向けに5カ国語に対応して物件情報を紹介するサイト「wagaya japan」を運営するなど、そのサポートは枚挙にいとまがありません。

日本エイジェント 代表取締役社長の乃万春樹さん(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

日本エイジェント 代表取締役社長の乃万春樹さん(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

オーナーや管理会社の「外国人」に対する漠然とした不安を細分化し、外国人入居受け入れのメリットを訴求しながら7言語対応可能なスタッフの雇用、多言語の資料作成、事前説明などを重ねて不安を払拭することに注力(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

オーナーや管理会社の「外国人」に対する漠然とした不安を細分化し、外国人入居受け入れのメリットを訴求しながら7言語対応可能なスタッフの雇用、多言語の資料作成、事前説明などを重ねて不安を払拭することに注力(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

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岡野不動産では、賃貸物件のオーナーである岡野傑(おかの・すぐる)さんが自身の所有物件で2回続けて高齢者の孤立死を経験したり、大学院で学ぶ中で「空き家問題と住まいに困る人の問題を組み合わせて解決できないか」と空き物件を無料で貸し出すところから支援の取り組みが始まりました。フードバンクや居住支援を行う市民団体や行政、赤い羽根共同募金など、さまざまな組織と連携して支援を行っています。

岡野不動産合同会社 代表社員の岡野傑さん(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

岡野不動産合同会社 代表社員の岡野傑さん(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

岡野さんは空き物件の一部を無料または定額でNPOなどの市民団体に貸し、フードバンクや赤い羽根共同募金、行政などとも連携しながら住まいに困っている人たちを支援している(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

岡野さんは空き物件の一部を無料または定額でNPOなどの市民団体に貸し、フードバンクや赤い羽根共同募金、行政などとも連携しながら住まいに困っている人たちを支援している(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

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集客手法や行政との連携ノウハウが盛りだくさんのトークセッション

後半は、表彰された3社のトークセッションから始まりました。「取り組みのきっかけ」「ビジネスとして成立しているか」「まずは何から始めればよいか」という率直な質問にそれぞれの経験を凝縮したエピソードとノウハウが語られます。

「生活保護を受ける方を含め、会社として入居を断らないことを信条にして物件紹介を続けたところ、『ハウジングプラザいいよ』と区に進言してくれる人がいた。生活保護を受給する人が入居する場合には9割以上、代理納付制度(※)を活用しており、この制度が活用できれば家賃滞納などのリスクはほぼないため、まずは各自治体の制度を確認してほしい」(ハウジングプラザ 山﨑さん)

※代理納付制度:自治体が生活保護受給者の家賃などの支払いを、管理会社やオーナーなどに直接納付する制度

「取り組みのきっかけ」を皮切りに、「ビジネスとして成立しているか」「まずは何から始めればよいか」など、多くの人が知りたいテーマについて余すことなく話が展開された(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

「取り組みのきっかけ」を皮切りに、「ビジネスとして成立しているか」「まずは何から始めればよいか」など、多くの人が知りたいテーマについて余すことなく話が展開された(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

「愛媛から東京に進出した際、外国籍の方が複数の会社に賃貸物件の紹介を断られて当社にいらしたが、物件を管理する会社に問い合わせても十中八九は断れる状況で、困難さを痛感した。しかしいまはAIはじめデジタル技術で言葉の問題を解決できたり、専用の家賃保証プランやコールセンター業務を担う会社があるなど、既に全て自分たちでやる必要はない状態になり、対応のハードルが下がっている」(日本エイジェント 乃万さん)

「賃貸物件のオーナーの集まりではお金の話ばかりだが、大学院に行くと社会貢献の意識の高い人が多く、フードバンクを視察した際に困っている人がこんなにいるんだ、とカルチャーショックを受けた。空いている物件は放っておいても収入ゼロなので、それなら無料や低額で使ってもらった方が空室率は下がり、金融機関の評価は上がり、自分の知見や経験値も上がる。何より楽しくやりがいがある」(岡野不動産 岡野さん)

セッション後、3人には参加者からの質問が相次ぎ、「低所得者で生活保護を受給していない人、外国人で低所得の人などにはどう対応しているのか」「生活保護を受給して入居していた人が亡くなったらその後の対応はどうしているのか」といった深い質問や「大学院での楽しみ方は」と明るい質問まで、充実した盛り上がりを見せました。

トークセッション最後の質疑応答では質問が相次いだ。和やかに笑いも交えながら回答する登壇者の3人(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

トークセッション最後の質疑応答では質問が相次いだ。和やかに笑いも交えながら回答する登壇者の3人(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

国の新制度開始へ向けた情報提供に「もっと聞きたかった!」の声

後半の2パート目はゲストである国土交通省 住宅局 安心居住推進課 課長の津曲共和(つまがり・ともかず)さんと、NPO法人抱樸の理事長であり、全国居住支援法人協議会 共同代表副会長である奥田知志(おくだ・ともし)さんによる講演がありました。

国土交通省の津曲さんからは2025年10月に施行となる住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の改定(改正住宅セーフティネット法)についての説明がありました。大きなポイントとしては「1.大家と要配慮者の双方が安心して利用できる市場環境の整備(相続や残置物処理、家賃滞納のリスク回避策)」「2.居住支援法人(※)等が入居中サポートを行う賃貸住宅の供給促進(居住サポート住宅の創設)」「3.住宅施策と福祉施策が連携した地域の居住体制の強化(市区町村により居住支援協議会設置を努力義務化)」など。

※居住支援法人:住宅セーフティネット法に基づき、住宅の確保に配慮が必要な人が賃貸住宅にスムーズに入居できるよう、居住支援を行う法人として各都道府県をはじめとする自治体が指定する団体等

2025年10月に改正、施行される住宅セーフティネット法の目玉の一つ「居住サポート住宅」は、見守りなどをセットにし、必要に応じて居住支援などが福祉サービスにつなぐ住まい(資料/国土交通省)

2025年10月に改正、施行される住宅セーフティネット法の目玉の一つ「居住サポート住宅」は、見守りなどをセットにし、必要に応じて居住支援などが福祉サービスにつなぐ住まい(資料/国土交通省)

また、2024年度より募集を開始する「みんなが安心して住まいを提供できる環境整備モデル事業」についても紹介。これは、居住支援法人、家賃債務保証会社、保険会社、オーナーなどが連携して居住サポート住宅などを提供し、オーナーの不安感を軽減する先導的な取り組みに対して1事業あたり年間300万円を最大3年間支援をするものです。

津曲さんからは「『みんなが安心して住まいを提供できる環境整備モデル事業』では、相当数のモデル事業を認可していきたいと考えているので、ぜひ応募してほしい」という熱い呼びかけがなされました。

国土交通省 住宅局 安心居住推進課 課長の津曲共和さん(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

国土交通省 住宅局 安心居住推進課 課長の津曲共和さん(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

抱樸の奥田さんはこれまでの社会保障制度が大前提としてきた「家族機能」の崩壊を指摘。家族がこれまで担ってきた高齢者や障がい者などの異変に気づく「気づき」の機能と、状況に応じて必要な制度につなげる「つなぎ」の機能がこれからの地域社会に求められていることを訴えました。国交省の津曲さんから紹介された2025年度10月施行の住宅セーフティネット法改正について改めてその実効性を強調。「転居費用の支援」がなされることや「断らない家賃債務補償」など、今後の住まいの支援へ向けて国の制度がより整備されていくことに期待を示しました。

NPO法人抱樸の理事長、全国居住支援法人協議会 共同代表副会長の奥田知志さん(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

NPO法人抱樸の理事長、全国居住支援法人協議会 共同代表副会長の奥田知志さん(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

「明るく軽やかに」支援の輪を広げるために

参加した人たちからは「住宅提供だけではなく、サポートや見守りも必要なことを確認した。居住支援に大家として取り組みたい」というオーナーや、「高齢者や外国籍の方へ向けた取り組みを始めたところで、先駆者の方の取り組みやノウハウを知ることができた」という不動産会社など、嬉しい声がありました。

一方、「住宅確保要配慮者の受け入れを積極的に明示した住宅の消費者側からの反応など具体的な数字を知りたい。経済合理性、人員配置、フィーや効率上げるためにどうしているかなどをさらに聞きたかった」(元業界団体関係者)、「集客をどう工夫しているかの話も、もっと聞きたかった」(不動産会社)といった今後への期待も。

会の終わり、リクルート 賃貸Division Vice President 100mo!責任者の中村明(なかむら・あきら)が次のように締めくくりました。
「社会課題への取り組みの話をすると、重くなったり、暗くなったりすることが多いが、非常に明るく楽しい話が聞けた。前向きな気持ちで軽やかに明るく向かっていくことが大切。この分野にはまだプレイヤーが決して多くなく『ビジネスとして成り立たないのでは』と二の足を踏んでいる会社も多い。明るく未来を見据えて乗り換えた会社を紹介することで、そのノウハウを取り入れていただければ。今日は身近なお話も多く、ちょっとした工夫で乗り越えられるのだと感じていただけたのではないか。これからもこのような情報交換、発信により、住まいの支援をムーブメントにしていきたい」(リクルート中村)

リクルート 賃貸Division Vice President 100mo!責任者の中村明(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

リクルート 賃貸Division Vice President 100mo!責任者の中村明(画像/SUUMO「100mo!」プロジェクト)

会場入口に掲示されたメッセージボードには参加者から「日本の取り組みを世界基準に!」「業界のために頑張ります」といった未来へ向けた意気込みが綴られた(写真撮影/唐松奈津子)

会場入口に掲示されたメッセージボードには参加者から「日本の取り組みを世界基準に!」「業界のために頑張ります」といった未来へ向けた意気込みが綴られた(写真撮影/唐松奈津子)

「住まいに困る人への支援はお金にならない」という声も多く、まだまだビジネスとしてどう成り立たせるか、が課題となる場面もあります。

一方で、先駆者である山﨑さんの「お部屋が見つかるまで辛抱強く対応することは、薄利でも最終的に紹介や評判がついてくる」、乃万さんの「今後は対応できないことがリスクになっていく」や「社会性を重視する時代になる中で、会社がどういう価値提供しているかは、社員の採用や会社の雰囲気が良くなることにもつながる」、岡野さんの「空き家が増加する社会でオーナーが利益を確保するには空室率を下げるのが至上命題。生き残るには、どうすべきかを考えることが必要」という言葉の通り、社会問題に取り組むことこそが、ビジネスの源泉であるとも言えます。

このイベントをきっかけに、住まいの支援に注目が集まり、チャレンジする人が増え、明るく楽しく、社会問題に取り組むきっかけとなることを心より願います。

●取材協力
・株式会社ハウジングプラザ
・株式会社日本エイジェント
・岡野不動産合同会社
・国土交通省
・全国居住支援法人協議会
・認定NPO法人抱樸

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