川原毛大湯滝(湯沢市)で天然露天風呂を体験。泥湯温泉の秘湯も満喫
温泉は日本の旅の醍醐味。平日会社員旅フォトグラファーの私・hirotographerも、もちろん温泉が大好き。天下の名湯から、徒歩でしかいけない山の上の絶景湯、動物たちがいそうな野湯まで、日本全国の温泉に浸かっています。
さて、今回訪れたのは、秋田県の湯沢にある「川原毛大湯滝」。温泉が流れ込む滝は、日本全国無数にあれど、入浴を楽しめる快適な温度なのは、ここと知床にあるカムイワッカ湯の滝くらいではないでしょうか。
滝つぼがそのまま温泉になっていて、ダイナミックな入浴や写真撮影が楽しめる川原毛大湯滝。季節限定ですが、湯温、湯量、川の水量、地形、アクセス、これらすべてが完璧に揃わなくては成立しない、まさに「浴びれる大自然の奇跡」。最高の夏の思い出づくりになることをお約束します。
東京駅を出発
東京駅から北へ向かって出発!
まずは、JR東京駅から東北新幹線「こまち」で約3時間のJR大曲駅へ。
東北新幹線「こまち」はJR盛岡駅で「はやぶさ」と分離され、山間部を駆け抜けながら一路秋田方面へ。エメラルドに輝く美しい渓谷を通り抜ければ、旅への期待が高まります。
大曲駅で奥羽本線に乗り換えて約40分、JR湯沢駅へ。「JR東日本びゅうダイナミックレールパック」を利用すると、東京から湯沢駅までの列車と宿がセットでお得に予約できるのでおすすめです。
ローカル線を挟む、というのが列車旅のポイント。窓の外を見渡せば青々とした田園風景と高く広がる夏の空、ボタンを押さなきゃ開かない列車のドアや見慣れぬ駅のホーム、待合室で聞こえてくる秋田の言葉、遠く響くセミの声、どれもが旅の風情を高めてくれます。
湯沢駅から川原毛までは約30km、所要時間は車移動で50分ほど。「こまちシャトル(観光タクシー)」という予約制のチャータータクシーがあるので運転できない方でも安心して移動できます。お値段も4時間で1万円とリーズナブル。観光スポットをこころおきなく巡れます。
川原毛地獄
いざ地獄巡りへ! 川原毛地獄を進む
運転手さんの軽快なおしゃべりと心地よいハンドルさばきに揺られて、あっという間に川原毛地獄駐車場へ到着。川原毛大湯滝への道中には「川原毛地獄」という荒涼としたエリアが広がっており、この世の果てのような景色が楽しめます。
温泉の池を見下ろす地点からスタートして、川原毛大湯滝まで徒歩25分ほど遊歩道を歩きます。「温泉巡ラー」としては、温泉に浸かるまでのアクティビティも結構ポイントが高い。ひと汗かいたくらいで浸かるお湯は最高なのです。
白色化した岩石は火山活動によってできたもので、青森県の恐山、富山県の立山と並ぶ日本三大霊地の1つ。いわゆるパワースポットです。
荒涼とした地獄をどこまでもひたすら下っていくと……川原毛地蔵菩薩が。
というわけで「地獄で仏」とはまさにこのこと。
川原毛大湯滝
浴びれる大自然の奇跡! 川原毛大湯滝に到着
川原毛地蔵菩薩から先、温泉が流れる川を渡って階段状の歩道を下っていくと、そこには20メートルはあろうかという高さから落ちる温泉の滝、川原毛大湯滝が現れます。
軽く湯気が立ち、硫黄泉の香りがあたりに漂っています。滝は2股に分かれ、それぞれ滝つぼを形成していますが、左側がなんともちょうどよさそうな湯船になっています。右側はハードコアな打たせ湯。修行者向けでしょうか。
ちなみに、自分の前に打たせ湯に突撃した男性は5秒で帰ってきました。あくまでも滝として眺めるのが吉のようです。
はやる気持ちを抑えつつ、水着に着替えていざ滝つぼ(左側の!)へダイブ。ほかの方がいなければこんな楽しみ方だってできてしまいます。だって大自然の温泉だもの。
ちなみにお湯は強酸性なので目に入るとめちゃくちゃ沁みます。注意しましょう、新手の地獄です……。
エメラルドグリーンに透き通るお湯は40℃弱。適温時期は7月上旬から9月中旬ということもあり、ぬる湯が適温この上なし。酸性の温泉にしては少し珍しくすべすべ感を感じられます。
川の水が加水されているので厳密な意味での源泉かけ流しとは異なりますが、これはもはや「大自然そのものをかけ流している」といっても過言ではないダイナミックさ。
※編集部注:川原毛大湯滝を利用する際は、湯沢市のホームページにある留意事項をご確認ください。また、冬(例年11月上旬から5月上旬)は積雪のため閉鎖となります。詳しくはこちら
ほかの観光客らしき方々と、「どちらから来られたんですか?」と会話がはずみます。「地獄からやってきた」と言いそうになるのをグッとこらえて「東京です」と答えました。
ちなみに、帰路は30分ほど山道を上り続けて川原毛地獄に戻るので、道の地獄度(笑)でいうと帰路のほうが圧倒的でした。川原毛地獄駐車場で待っていてもらった、こまちシャトルの運転手さんにも「いやー、帰りの道のりは文字通り地獄のようでしたよ」などと息を切らしながらお伝えしてしまった次第です。くれぐれも歩きやすい服装と、飲み物持参で水分補給を心がけることをおすすめします。
泥湯温泉 奥山旅館 1日目
泥湯温泉 奥山旅館へ
今回宿泊するのは、川原毛地獄駐車場からこまちシャトルで10分ほど下ったところにある「泥湯温泉 奥山旅館」。
泥湯温泉は、なんと江戸時代から続く歴史ある温泉。周囲を囲む山の斜面からはもうもうと硫黄の煙が立ち込めており、奥山旅館ともう1軒の旅館があるだけの小さな集落は非日常感たっぷりで、まさに秘境の温泉宿です。
奥山旅館は現在5代目で、建物は火災による焼失によって2019年に建て直されたもの。国定公園の敷地内ということもあり、黒を基調とした外観になっています。なかに入ると茅葺の香りに包まれ、内装にも木のぬくもりが感じられるつくり。
盛夏の時期でしたが16時を過ぎたあたりから次第に気温は下がっていき、日が落ちるころには20℃ほどに。
落ち着いた色合いの部屋には、湯沢市にある家具工房「秋田木工」の曲木(まげき)家具が配置されています。夕食まで何もせず、窓から聞こえてくる川のせせらぎとセミの鳴き声に耳を傾けながらサイダーを片手に少しまどろむ、そんな心地よく贅沢な時間を過ごしました。
日が暮れると夕食です。夕食後は、秘湯感たっぷりの温泉で今日の疲れを癒やそうと思います。
泥湯温泉 奥山旅館の夕食
秋田の味覚を満喫
「料理は独学なので簡単なものをお出ししています」とおっしゃっていた代表兼料理担当の奥山晃弘さん。
しかし、騙されてはいけません。どれも想像を遥かに超えたおいしさです。抜粋してお伝えさせていただくと、
かぼちゃの茶碗蒸しはトロトロ状。すり流しと茶碗蒸しの間くらいの食感で、かぼちゃの甘みが一層引き立っています。火入れに職人芸を感じる一皿です。
稲庭「生」うどんは、そのモッチリとしたコシに驚きます。ミョウガのシャキシャキとした食感とのコントラストが最高。乾麺ののど越しも好きですが、これはこのまま自宅に持って帰りたいおいしさです。
極めつきは、メインの「皆瀬牛」。99%が秋田県内で消費されるという幻の黒毛和牛です。「希少とはいえ、黒毛和牛だったらどこでも食べられるでしょ?」と最初は思っていましたが、一口頬張って懺悔しました。
噛んだ瞬間から口の中でとろけ始める……にもかかわらず脂の重さをまるで感じることなく、サラッと流れていき、最後は赤身の旨みへとシームレスにつながっていく異次元体験。カルビがそろそろキツイお年頃だというのにあっという間に完食。感動です。
泥湯温泉 奥山旅館の源泉・風呂
3つの源泉と自然のつくり上げる泥湯温泉の魅力!
お腹を満たしたところで、満を持して温泉の時間です。奥山旅館では3つの源泉を引いていて、どれもかけ流し。
・新湯(単純泉):別棟にある男性/女性専用大露天風呂
・天狗の湯(単純硫黄温泉):男性/女性専用内風呂と混浴露天風呂
・川の湯(単純硫黄温泉・硫化水素型):女性専用露天風呂
メンテナンスの関係で今回入浴できたのは「天狗の湯」の風呂だけでしたが、触覚・視覚・嗅覚・聴覚・味覚すべてを使って味わうのが温泉の醍醐味。浴場の外にも漂う硫黄の香りに期待が高まります。
天狗の湯は、少し黄色がかった乳白色の濁り湯。成分表を見ると鉄分が少し多めに溶け込んでいるからでしょうか。湯船の底には析出物がたまり、成分の濃さを感じさせます。
露天へ出ると白熱灯の温かみのある雰囲気の中で川のせせらぎや虫の音が聞こえ、41℃の適温のなか、ゆったりと心地よい入浴が楽しめました。
みなさんにお勧めしたいのが、別棟にある「新湯」の大露天風呂での星見風呂。
今回は入浴叶わず撮影だけとなりましたが、無限とも思える星の数……この満天の星を眺めながら、かけ流しの温泉に入るのは格別でしょう。
泥湯温泉 奥山旅館 2日目
泥湯温泉をぶらぶら散策
翌日は、これまたおいしい朝ごはんと、再度お湯をいただいてチェックアウト。帰りの時間まで、宿の周辺を散策して過ごします。
朝食も秋田の食材が中心。米粉パンなどもあってパン派も満足!
山間にたたずむ泥湯温泉の集落。秋は紅葉で絶景に変わります。
泥湯温泉から湯沢駅までは、直通のこまちシャトル(乗合タクシー/予約制・片道2,000円)もあるので、帰りはこちらを利用して湯沢駅へ。天国と地獄を行ったり来たりするような振れ幅の大きい、最高の1泊2日となりました。
東京駅に到着
掲載情報は2024年11月14日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
旅するメディア「びゅうたび」は、ライターが現地を取材し、どんな旅をしたのかをモデルコースとともにお届け。個性たっぷりのライター陣が、独自の視点で書く新鮮な情報を、臨場感たっぷりにご紹介します。
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。