間質性肺炎への有効性が期待され注目を集めている「糖鎖」―最新の糖鎖研究に関するメディア発表会レポート
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2023年に歌手の八代亜紀さんが亡くなった病気として注目を集めている「間質性肺炎」。年間2.2万人以上が死亡しており、国内での死亡者数は年々増加傾向にある。厚生労働省のデータによれば、2022年度には日本人の死因11位となっており、身近になりつつある病気だ。
治療法が確立されていない間質性肺炎だが、「第4の医療革命」と言われている糖鎖での治療に注目が集まっている。それを受けて「糖鎖情報館」が主催する糖鎖の間質性肺炎への有効性に関するメディア発表会が、10月15日に開催された。
メディア発表会はNPO法人 予防医学・代替医療振興協会(P&A)事務局長 中山清美氏の挨拶からスタート。近年、がんや糖尿病などの生活習慣病および全身性疾患などの難病が増えている中、過剰投薬の弊害など従来の対処療法の限界が見えてきたと指摘。「最近では予防医学を基礎とした補完代替療法を取り入れる医療機関が多く見られるようになってきた。当協会では補完代替療法の学術的根拠の立証に向けて、臨床試験データの収集・分析やクリニックと提携して代替療法の実践に努めている。一般の方々にも予防知識を知っていただきたく、メディア発表会の機会を設けることとなった」と協会の歩みやメディア発表会開催のきっかけが語られた。
続いて医療法人一友会ナチュラルクリニック代替医療カウンセラー 鈴木奈津子氏が登壇。糖鎖の歴史はまだまだ新しく、1963年に「神経細胞間のコミュニケーションの発見」という研究でノーベル医学賞を受賞したのを皮切りに、2002年まで糖鎖に関連した10件の研究がノーベル賞を受賞している。「糖鎖は『細胞のアンテナ』と言われており、細胞同士のコミュニケーションを担っている物質だ。糖鎖を介して細菌やウィルスの情報が免疫細胞に共有され、異物の攻撃につながる。私たちの健康を維持する鍵を握っているのが糖鎖だ」と説明する。
日経サイエンスの2006年5月号にウィルスや細菌を攻撃する働きを持つNK(ナチュラルキラー)細胞に対して、抗体産生に関わるB細胞が糖鎖を介して意思疎通を取っている様子が掲載された。なんと、NK細胞が健康な細胞を攻撃しようとした際、B細胞が攻撃しないように伝えているのだという。もし糖鎖が体の中に不足して細胞同士の意思疎通が滞ってしまうと、自己免疫疾患のように健康な細胞を次々に攻撃してしまうことになる。そうならないために糖鎖が細胞同士の情報伝達を担い、私たちの健康を守ってくれているのだという。
しかし、現代人において健康維持に深く関わっている糖鎖は40%も不足しているのだと鈴木氏は警鐘を鳴らす。「活性酸素の増加や紫外線、アルコールの多量摂取などで糖鎖は減少してしまう。糖鎖が不足することによって、認知機能の低下や自己免疫疾患の発症、代謝異常のような数多くのネガティブな影響が見られる。これらの症状を改善する物質として糖鎖を構成する8種類の混合物に注目が集まっており、間質性肺炎治療の有効性に関する研究が進んでいる」と説明した。
その研究を進めているのが国立大学所属の宇都義浩教授。第76回日本生物工学会にて『リポソーム化糖混合物による間質性肺炎の炎症抑制効果』という表題で発表を行い、大きな話題を呼んだ。研究を始めた経緯として宇都教授は「リポソーム化した糖混合物を摂取した方の中に間質性肺炎の患者がいて、複数例で症状の改善が見られたと報告があがったため研究を始めた」という。間質性肺炎とは、肺の間質と呼ばれる部分を中心に炎症が起こり、炎症によって肺胞の壁が硬くなる(線維化)ことで酸素を取り込みづらくなる病気だ。この肺の線維化に、免疫細胞であるマクロファージが関与していることが最近の研究で明らかになった。
マクロファージは全身に存在する白血球の一種で、炎症性サイトカインの産生や異物の除去の役割を担っている。ウィルスや細菌が体内に入り込んだ際にはM1マクロファージが異物を食べ、2度目の侵入時に免疫系が活性化しやすくなるよう働きかける。一方で修復期にはM2マクロファージが作用し、損傷した細胞を修復していく。宇都教授は「M1とM2のバランスで免疫系をコントロールしているのだが、間質性肺炎においてはM2マクロファージが過剰に産生され、肺胞内の修復が進み過ぎてしまうと肺の線維化につながってしまう」のだという。このような免疫系に対して、8種類の糖混合物とリポソームで包んだ糖混合物がどのように作用するか研究を行った。
細胞系を用いた試験にてリポソームで包んだ糖混合物を投与したところ、M2マクロファージをM1マクロファージに変化させる効果が得られたという。また宇都教授は「マウスでの試験では、糖混合物に毒性がないことを証明できただけでなく、肺の間質している箇所が正常な状態に改善する結果が得られた。さらに、間質性肺炎の診断の評価として用いるサーファクタントプロテインD(SP-D)の血中濃度を調べたところ、糖混合物の投与後には数値が低下する傾向が見られた」と説明した。
フロアからの質問に対して宇都教授は「8種類の糖鎖全てが含まれていないと十分な効果は得られない。一方で混合比率を変えることで得られる効果が変わる可能性は十分にあるだろう。今回、肺の炎症疾患である間質性肺炎の炎症抑制効果が得られたことで、がんや認知症、糖尿病などに対しても研究が進められている。間質性肺炎患者に対する臨床研究の時期は未定だが、肺に悩みを抱える予防段階の方への試験は前向きに検討していきたい」とのこと。
リポソーム化糖混合物は通販でサプリメントとしても購入できる。私たちの健康を維持する上で、糖鎖はなくてはならない存在であることはお分かりいただけたであろう。「糖鎖情報館」では引き続き糖鎖に関する情報を発信していくため、気になる方はチェックしてみてほしい。
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