<ライブレポート>裏切りのフミティ将軍、暗殺されたM王――Galileo Galileiが音楽×演劇を組み合わせた【Tour M】

 10月25日、Galileo Galileiが【Galileo Galilei Tour 2024 Tour M】のツアーファイナルとなる東京公演をZepp Hanedaで開催した。『MANSTER』と『MANTRAL』という2枚のフルアルバムを同時にリリースして驚かせたGalileo Galileiだが、今回のツアーではさらなるサプライズが待っていて、なんと演劇とライブを融合させたステージを展開。入場時に配られたチラシには「戦乱の世を平定し、北海大陸を統一した英雄、M王。その名声は国中に轟いていた。ある日、狩りに出たM王は……」と物語の背景となるあらすじが書かれていて、舞台上にはレッドカーペットに玉座や絵画、ディナーテーブルなどがあり、ここが宮中だということが伝わってくる。

 開演時刻が近づくと、プレリュードとしてM王(尾崎雄貴)とフミティ将軍(岩井郁人)の会話が流れ出し、その後にカズケウス殿下(尾崎和樹)とオチャ大臣(岡崎真輝)も交えた演劇パートがスタート。フミティ将軍とカズケウス殿下の裏切りにより、M王が暗殺されると、その葬儀で“吟遊詩人の楽隊”であるGalileo Galileiが追悼の意を込めた演奏として「KING M」を披露する(ここに至るまですでに20分以上)。「極東の国ジパングからやってまいりました、楽隊Galileo Galileiと申します。今日はよろしくお願いします」という挨拶に大きな拍手と歓声が送られた。

 アンコールでの尾崎雄貴のMCによると、アルバムの制作中にはすでにこの演劇を交えたライブを構想していたそうで、「KING M」はもちろん、ほかのいくつかの曲も演劇のシーンに合うようなサウンドが意識されていたという。流石に台詞は事前に録音されたもので、本番は当て振りだったわけだが、古くはザ・フー『トミー』から最近ではデヴィッド・バーン『アメリカン・ユートピア』まで、音楽と演劇の組み合わせには長い歴史があり、言ってみれば今回のツアーはそのGalileo Galilei版だ。

 「2枚のフルアルバムを同時リリース」もそうであるように、「面白そうだと思ったら何でもやってみよう」というこの自由な精神性は今のGalileo Galileiを象徴するものであり、それができる環境は彼らがこれまでの歩みで掴み取ったものだとも言えるだろう。また、各メンバーの演技は思わずクスッと笑ってしまうようなものだし、設定も突飛なものではあるのだが、登場人物それぞれに表と裏の顔があり、「一人の人間の中に存在する様々な感情と性質」を表現した『MANSTER』と『MANTRAL』のテーマ性とリンクした物語には引き込まれる部分も確かにあった。

 ライブ自体は大きく二部構成になっていて、サポートのDAIKIも含むツインギターでマイ・ブラッディ・ヴァレンタインのような轟音のシューゲイズ・サウンドを鳴らした「MANTRAL」で始まった第一部は、『MANTRAL』からの楽曲を中心に進行。『MANTRAL』はオーガニックな印象の楽曲が多く収録され、「1, 2, 3, 4!」の合図から高らかにソロを響かせた「リトライ」をはじめ、「若者たち」や「あそぼ」など、サポートの大久保淳也によるサックスの存在感が抜群だ。ピンボーカルの曲が増えた尾崎雄貴は熱量の高いパフォーマンスを見せ、その姿は曲調も含めてThe 1975のマシュー・ヒーリーにも通じるもの。ビートルズ「All You Need Is Love」のオマージュを含んだ「カルテ」や、オアシス「Champagne Supernova」にも似た雰囲気を持つ「UFO」も演奏され、「ギターバッグ」で締めくくられた第一部は、イギリス寄りの音楽性だったと言ってもいいかもしれない。

 ここから再び演劇パートが始まり、錬金術師の顔を持つオチャ大臣の謀略によってM王が魔王として復活すると、ゴリゴリのベースラインで始まる「MANSTER」からの第二部は、M王をボーカルに『MANSTER』の楽曲中心で進行。スクラッチを交えたミクスチャー・ロックな「CHILD LOCK」はレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンやリンプ・ビズキット、サビで岩井が文字通りクルクルと回転するのがユーモラスなダンストラック「SPIN!」はポーター・ロビンソンと、第一部との対比で言えば第二部はややアメリカ寄りか。

 ブレイクビーツにフルートが絡む「ロリポップ」、ラララの大合唱に包まれた「ファンタジスト」などを続け、第二部では唯一『MANTRAL』から演奏された「オフィーリア」(M王が恋に落ちるオチャ大臣の妹の名前がオフィーリア)を経て、最後にシアトリカルな赤い照明の中でインダストリアル感のある「ヴァルハラ」が届けられると、M王の高笑いとともに第二部が終了。なお、M王には「アンコールが嫌い」という設定があり、オーディエンスによる「アンコール!」の声と手拍子で魔王は無事封印され、M王とフミティ将軍による仲直りのハグで大団円となりました。めでたしめでたし。

 実際のアンコールでは、M王の肖像を囲んだ最新のアー写と同じ白い衣装で登場し、「本当のGalileo Galileiがアンコールにお応えして登場したので、ここからはGalileo Galileiの十八番の曲で攻めていきたいと思います」と話して、「恋の寿命」と「バナナフィッシュの浜辺と黒い虹」を演奏。さらに尾崎雄貴が演劇をやった理由として、「ガリレオの曲を書くときに、自分の身に起こったリアルな出来事や感情をそのまま書いちゃうと、ただの便所の落書き、もしくは自分のポエムになっちゃうんです。でも、僕はそれをファンタジーとして、物語だったり、自分と別の考えを持った人物だったりに書き換えて表現してきたと思っていて、今回ガリレオの今までの人間関係だったりを、ドキュメンタリーでも深く触れなかったところも含めて、ファンタジーにしてみたらどうだろうと話をして、劇をやろうってなったんです」と話し、今回のツアーではこの日限りの演奏となった「色彩」を披露。最後には「僕らが結成した秘密結社のテーマソング」である「やさしいせかい.com」が演奏されて、二度とない(かもしれない)特別なツアーが幕を閉じた。

Text:金子厚武

◎公演情報
【Billboard Live presents Galileo Galilei「メリー!メリー!GG」】
2024年12月4日(水)
神奈川・ビルボードライブ横浜
1stステージ 開場17:00 開演18:00
2ndステージ 開場20:00 開演21:00

◎公演情報
【Galileo Galilei “あおにもどる”】
2025年3月15日(土)
東京ガーデンシアター

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