2024年9月に、醸造科がある東京農業大学 世田谷キャンパスで朝日屋酒店が主催する「Professional Sake College 2024」が開催されました。毎年全国から約90の蔵元が一堂に会するお酒の品評会。他に酒販店関係者、飲食店関係者、そして私のようなメディア関係者など約200人が集結します。
約200人のお酒の専門家が集まった「Professional Sake College 2024」
まずは「93銘柄の日本酒のブラインドテイスティングと投票」からスタート。1蔵1酒、すでに市販されている自信作を出品し、ラベルを隠した状態で試飲会場にずらりと並べられています。スポイトで自分のコップに試飲のお酒を少し入れて、1種ずつ味を吟味して手元のシートに点数を記入していきます。
ラベルが隠されたボトル93本を一斉にテイスティング
まずは香りを確認、次に口に含んで味わいの広がりや刺激、酸味などを確認。集中して試飲していくと、日本酒にはいろいろな味わいがあり、それぞれの特徴が際立っていることが改めてよく分かります。
私の”推し酒”!「白露垂珠」の蔵人に偶然出会う🖤
途中で何回か休憩しながら採点に挑んでいると、私の大好きな日本酒「白露垂珠」(はくろすいしゅ、竹の露酒造場:山形県鶴岡市羽黒町)の女将こと相沢こづえさんがいらっしゃるではありませんか!感激のあまりすぐにお声がけしてしまいました。
真剣に吟味して採点されていた竹の露酒造場の相沢こづえさん
「白露垂珠」を初めて味わった時の感動は今でも鮮明に思い出せます。最初の一口目から目を見開くおいしさ、飲み進めるとやわらかな旨みが優雅に包み込んでとっても幸せ。のどの奥のあたりでお酒がスッと自分の体と一体化したような、本当においしいお酒はこんなにも自分になじむのだと不思議な感覚を覚えたものです。
その後、改めて調べて分かったのですが、竹の露酒造場の「大吟醸 白露垂珠 はくろすいしゅ 出羽燦々」は全国新酒鑑評会において2003年から6年連続で金賞を受賞し、このうち2001年から10年間設営された第1部(地方産米部門)において5年連続金賞受賞。その記録は「日本最高記録」となっていたことも知りました。さすが実力派のお酒、それ以来、私は大ファンなのです。
VIDEO
こちらの動画でも説明されていますが、竹の露酒造場は原料米を地場産米にこだわった酒造りを伝統としています。「亀ノ尾」「京ノ華」はもとより、「美山錦」「出羽燦々」「出羽の里」「出羽きらり」「改良信交」、そして山形を代表する「雪女神」など地元・庄内在来酒米を100%使用している酒蔵です。
そして蔵内の深層地下300mの水晶地層帯から湧き上がる「月山深層無菌高水素シリカ波動超軟水」を使用して、「一升枡麹蓋法」という独自の製法でとびきり美味しい日本酒を醸しているのだそう。(この辺りの細かい製法はぜひ今度取材してみたいところ。興味津々!)
今回は「純米吟醸 白露垂珠 美山錦55」を出品してみたと話す相沢さん
相沢さんの話では、昨年は「純米大吟醸 はくろすいしゅ 出羽燦々33“ウルトラダイアモンド”」を出品して、見事カテゴリー別上位に食い込んだということ。
「今年は美山錦55を出してみました。自分が一番好きなお酒なのですが、世の中のトレンドなどもある中、世間的にはどのように評価されるか、試してみたかったからです」と相沢さん。期待が高まります。
この品評会では酒の専門家がブラインド・テイスティングで採点するだけでなく、東京農業大学の研究室にて成分分析もしてくれ、その結果も公開されるのです。酒蔵は自分が出品した酒の詳細がデータ化されて把握できるのはもちろん、自分が高評価をつけた他社の酒の数字データを把握できたり、品評会で上位に入賞した酒の数字データを確認することで、最近の流行りをキャッチできたりもするのです。
自分の感性を信じつつ、分析データで検証。真剣な酒蔵たち
その後は、東京農業大学の数岡孝幸教授による酒講義が行われました。普段は見慣れない酒の甘辛度と濃淡度の分析図や、アミノ酸などのさまざまな成分の分析結果なども表示され、「おいしいのにはちゃんと訳がある」のだなぁ~と納得。興味深い「ワイン酵母」のお話などもうかがえました。
講義の後の表彰式では、いよいよ結果が発表!3つのグループのトップとなる金賞酒が発表されました。
それぞれのグループで金賞酒に輝いた3酒
金賞酒・低精白グループ(1位)
「千葉県・小泉酒造・東魁盛 特別純米」(写真左)
金賞酒・高精白グループ(1位)
「秋田県・両関酒造・両関 純米吟醸 無濾過」(写真中)
金賞酒・生もと系グループ(1位)
「福島県・(名)大木代吉本店・自然郷BIO 特別純米」(写真右)
左から小泉酒造(千葉)、両関酒造(秋田)、(名)大木代吉本店(福島)
そして酒販店グランプリ(酒屋評価1位)と蔵元グランプリ(酒造関係者1位)には、「秋田県・両関酒造・両関 純米吟醸 無濾過」が選ばれ、日本酒大賞(総合1位)も受賞されました。最後の懇親会では全種類のお酒の成分分析値が公開され、それらを見ながら再きき酒を行い、納得しながら心ゆくまで味わえました。
さて、今年の品評会では残念ながら入賞はしなかった竹の露酒造場さんですが、その後、様々なコンテストで続々と受賞されています。9月にはイタリアで開催された「ミラノ サケ チャレンジ2024」(Milano Sake challenge)の酒テイスティング部門にて、「雪女神50 BUONO」(純米大吟醸はくろすいしゅBUONO)が最高賞のプラチナ賞を受賞されました。
イタリアでも大人気の「白露垂珠」。 左下が竹の露酒造場の代表で製造責任者の相沢政男さん
さらに10月には「全国熱燗コンテスト2024」(主催:全国燗酒コンテスト実行委員会 後援:日本酒造組合中央会)で、「はくろすいしゅ 無濾過純米 円熟 藍」がプレミアム熱燗部門の最高金賞を獲得されました。先日の品評会で真剣な表情でテイスティングされていた相沢さんのことを思い出すと胸が熱くなります。本当におめでとうございます!
竹の露酒造場の魅力的なお酒。 右が熱燗コンテストで最高金賞を受賞した白露垂珠の「円熟 藍」
≪筆者プロフィール≫
▪滝口智子
国際きき酒師&サケエキスパート
飲食ライター歴20年の食いしん坊バンザイ!記者&PRプランナー。
日本酒やワインなどもこよなく愛す。