30分かけてジワジワ揚げるトンカツ屋がマジ凄かった件 / 店主「他店は傷害罪です」

伝説、いや、神話級のトンカツ屋『平兵衛』(東京都台東区上野6-7-13)の存在をご存じだろうか。トンカツマニアならば知らない人はいないほど有名な店であり「客を選ぶ」という点でもトップクラスの難易度。もう食べられなくなってしまったが、今も心に残る凄い店である。

トンカツは30分かけてジワジワ揚げる『平兵衛』

どうしてこの『平兵衛』が神話級の存在なのか? それは、ここのトンカツは30分かけてジワジワ揚げるため、オーダーから食べ終えるまで、約1時間ほどの時間を要するから。そして店主が「当店以外のとんかつ屋は傷害罪」と断言しているから!

その味は極めて独特で、人によっては「トンカツではない」という人もいるほど、トンカツには見えないトンカツが目の前にやってくる。ちなみにトンカツ定食の価格は2300円。

看板や冊子で「当店以外のとんかつ屋は傷害罪」と断言

やっぱり強烈なのが、店主が他のトンカツ屋に対して、看板や冊子で「当店以外のとんかつ屋は傷害罪」と断言している点だ。

<店主の自論 / 他のトンカツ屋が傷害罪なわけ>
1. 揚げ油を使いすぎて廃油を作り出して地球環境を破壊している
2. 揚げ油を使いすぎて不経済なことをしている
3. ひたすらコストをかけてわざわざまずくしている
4. 旨みを蒸発させて真っ黒に変色し劣化しきった油を染み込ませている
5. 廃油公害をまきちらし、旨味を全て油の中に捨てている
6. お客の健康を考えず黒く変色した油で揚げているので傷害罪である
7. ちゃんと平兵衛の調理法でトンカツを作れば世界の飢餓が救済される
8. 保健所の基準をクリアしていないので廃業せざるをえない
※あくまで店主の自論

店主は店員の年配女性にとても厳しい。ちょっとかわいそうになるくらい厳しい。その年配女性は、店主の母親とも奥さんもいわれているが……。

店主 油もってこい。
女性 はい……。
店主 なにやってんだコノヤロー!! 1ケースもってこなくていいんだよ!!
女性 ……。
店主 チッ!!

「揚げる」というより「油で煮ている」という感じ!?

この店のトンカツは極めて独特だ。すでに述べたように、30分かけて超低温の油でジワジワと揚げる。正直「揚げる」というより「油で煮ている」という感じ!?

ちなみに、店主はトンカツを揚げているとき、ずっと独り言を話している。おそらくだが、トンカツに一気入魂しているのだろう。

店主 なに!! ……あいつかァ~!!
店主 そうかァ~!!
店主 シュシュッ!! そうくるかァ~!!
店主 チッ!!
店主 ヌオッ!?
店主 OK!!
店主 フィッ!!
店主 シュッ!!
店主 ヌュッ!!
店主 フシュ!!
店主 イッ!!
店主 ……OK!!

とにかくジッと30分待ち、目の前にやってきたトンカツ。……だが、ビジュアルがトンカツに見えない。

クリーム色をしたトンカツ

クリーム色をした衣はとても繊細できめ細かい。ザラザラというより、サラサラとしている表面。箸でつまんで断面を見てみると、しっかり火が通って純白に。

低温でも30分も煮れ、いや、揚げれば、しっかり中心まで火が通るようだ。

「トンカツではなくこういう料理」だと思って食べれば悪くはない?

箸でつまむと、衣がぽろぽろと崩れ落ちる。衣が落ちた豚肉は、トンカツというより煮豚。食べる。おぉ! なかなか、思っていたよりもウマイ。

カリカリサクサクで「ジューシー」と「クリスピー」が混在するトンカツをイメージして食べると別物に感じるが、「トンカツではなくこういう料理」だと思って食べれば悪くはない?

衣はかなりシットリしてて、かなり油を吸い込んでおり、人によっては苦手な食感やテイストかもしれないが、トンカツではなく別の料理だと思えば、きっと大丈夫。油分をライスと味噌汁によって打ち消しながら食べるといい。

ウマイかどうかは賛否両論のトンカツではあった

2024年現在、すでに『平兵衛』は閉店しており、一部のトンカツマニアのブログやクチコミサイトでしか、そのトンカツの姿を見ることはできない。

ウマイかどうかは賛否両論のトンカツではあったが、とても貴重で希少なトンカツだっただけに、この味が受け継がれずに閉店したことは、とても残念である。店主さんありがとう。

(執筆者: クドウ秘境メシ)

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