映画『99%、いつも曇り』瑚海みどり監督インタビュー「わたしたちは、晴れた時に生きていて良かったと喜びを味わうために生きている」
俳優・声優として活躍する瑚海(さんごうみ)みどり監督の初長編映画、『99%、いつも曇り』が、9月25日にテアトル梅田、9月27日〜10月3日シアター演屋、9月28日〜10月4日シネマスコーレで上映されます。
アスペルガー傾向(発達障害グレーゾーン)にあることに悩みを持つ女性が、流産した経験もあって子作りに前向きになれないこと、自分自身の性質・傾向にも悩み、社会との関わり方や働き方をまだ見つけられず、次第に夫とすれ違ってしまう葛藤をリアルに描いた必見の人間ドラマです。
瑚海監督自身も感じてきた「発達障害」という言葉の違和感や、他者と共に生きることのメッセージを、自身のキャリアと本作品を通してすべての女性へ生き方の新しい視点を届ける110分間。主人公・楠木一葉役も演じた瑚海監督にお話をうかがいました。
■公式サイト:https://35filmsparks.com
「よくしゃべるので、周囲に『アスペルガーじゃないの!?』と言われたことがあるんです」という瑚海監督。「気になって調べていくと、同じように悩んでいる方々がとても多かったんですね。ならば、その悩みを共有したいと思ったんです。隣の芝生は青く見えると言うけれど、苦しみを分かち合えるなら」と本作を制作した理由を明かします。
映画は完成後、すでに昨年の東京国際映画祭から約1年弱、関東関西の映画館で転々と上映され続け 好評を得た。たとえば「女性の場合、赤ちゃんのことで悩んでいる人はたくさんいるので、そこは強く描きたかったところです」と瑚海監督。「子どもを作らないというネガティブな考えをポジティブに選択した人たちはたくさんいるはずなのに、それを取り上げている映画はほぼない。その人たちには事情があり、それをポジティブに選択したのであれば認められるべきだと思うんです」。映画で声を挙げ、形にしていかなければという使命感があったと言います。
そしてきれいごとではない、主人公がもたらすリアルな描写の数々も目を引く本作。映画化にあたっては瑚海監督の実体験を踏まえつつ、YouTubeなどで発達障害関連の動画も無数に観たと言います。「リアルを描くにはリアルに触れるしかない」と関連するサポートセンターへ取材に出かけると、そこでは「きれいごとにしないでほしい」と言われたと言います。
「こういう題材を描くと、美しいものとして描かれがちなんです。頑張っている美談みたいな。そういう美しい話にはしないでほしいと」。周囲のサポートは想像以上に大変であり、「なので(主人公の)旦那さんのサポートの苦労もバランスよく描きました」と明かした瑚海監督。「一葉がワーッ! となると、旦那さんは大変なわけですよ。だから彼女がやらかした後、いろいろなものが散乱している状態になります。決して彼女だけが悩んでいるわけではない、まわりの人たちも大変なんだと」。なるほど劇中には、一葉たちを取り囲むようにたくさんの人間が登場しています。
気を引くタイトルの意味は、「言い換えれば1パーセントの晴れのために」という想いを込めていると語る瑚海監督。「発達障害とか関係なく、誰だって人生、晴れだけの時はそんなにないわけです。むしろ少ないかも知れない。でもその少ない瞬間に晴れた時、生きていて良かったなと喜びを味わうために我々は生きているのではなかろうかと」。映画『99%、いつも曇り』は、今を生きる人々に幅広く共感を呼びそうな一作と言えそうです。
■ストーリー
母親の一周忌で叔父に言われた「子供はもう作らないのか」の一言に大きく揺れる楠木一葉(45)。生理も来なくなって子供は作れないと言い放つ一葉の目には、夫の大地(50)が子供を欲しがっている姿が映る。流産した経験もあり子作りに前向きになれない一葉は、自分がアスペルガー傾向にあることに悩みを持っていた。養子を取ることを薦められるも、次第にズレていく一葉と大地。
・テアトル梅田(大阪)
・シネマスコーレ(名古屋)
・シアターエンヤ(佐賀)
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(執筆者: ときたたかし)
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