断熱等級6の145平米の家「家中の温度差ゼロ」。災害時も活きる太陽光発電・蓄電池、IoT活用のスマートハウスなど工夫も満載 大阪府・Fさん夫妻【断熱新時代・住宅実例】
2025年から断熱等級4以上が義務化される新築住宅。住宅の省エネ・脱炭素化推進のための補助金制度も拡充され、断熱性能等級6以上のハイスペックな住まいへの関心が高まっている。そこで、実際に気密性・断熱性にこだわった家を建築した大阪府北摂エリアにお住まいのFさん夫妻に、その魅力を伺った。
家づくりを検討するなかで知った最新の住まいの断熱性能
Fさんご夫妻(写真撮影/出合コウスケ)
生まれた時から団地でしか暮らしたことがなかったというFさん。
「結婚後も実家と同じ団地住まいでした。隙間風とかもありましたが、それが普通だと思って暮らしていたので、特に悩んでいたということはなかったんです。だから、断熱性能についてはあまり考えたことがなかったですね。今回、家族のライフスタイルの変化に伴って家づくりをしようということになり、はじめて住宅の性能がこんなにも進化していることを知ったくらいなんですよ」
はじめての家づくりのため、YouTubeなどで家づくりのノウハウについて情報収集するなかで、今の住宅の性能基準がどんどん上がっていることを知ったFさん。仕事の関係先から紹介してもらったいくつかの建築会社に話を聞いてみると、どこの会社も住宅性能は当たり前にこだわっていらっしゃるということもわかりました。そんななか、家づくりに向き合う姿勢にとても感銘を受けた会社との出合いがあった。その会社では『吹付け硬質ウレタンフォーム』という断熱材を採用し、断熱性能等級6を標準仕様とする高性能住宅を建てていた。
また、その品質を最大限に活かすための施工技術にもこだわっているという話が、丁寧で分かりやすかったそう。ちょうど良い土地が見つかり、一緒に見に行ってもらったところ、「その場でこんな風に建てたらどうでしょう?という間取りの提案をしていただき、とてもワクワクしました。信頼してお任せできるなと感じ、すぐに依頼を決めました」
■Fさん邸
施工費2700万円(税抜)家族構成夫52歳、妻50歳、長男15歳、長女10歳竣工年数2023年7月階数・間取り2階・4LDK+納戸建物面積145.05m2住宅性能耐震等級3、劣化対策等級3、維持管理対策等級3、断熱等性能等級6、一次エネルギー消費量等級6、住宅版BELS ★5つUA値0.39W/m2・K建築会社ユーロプランニング(大阪府茨木市)※UA値…外皮平均熱貫流率。住宅の熱の出入りのしやすさを表す。値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性、省エネ性が高い※HEAT20…「20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」のこと。住宅外皮水準のレベル別にG1~G3と設定し、提案している
(画像作成/鳥取県「とっとり健康省エネ住宅」を参照してSUUMOジャーナル編集部で作成)
内装にかけるコストを機能性のためにシフト
Fさん夫妻が家を建てる前に購入していた車はPHEV(プラグインハイブリッド車)だった。そこで建築会社から提案があったのが太陽光発電システムと蓄電池システムの設置。
「仕事の関係先から薦められて購入した車でしたが、ちょうどガソリンで動くエンジンと、電気モーターを必要に応じて使い分けるハイブリッド車だったんです。なので、太陽光発電を搭載した住まいにして、蓄電池システムも設置して、電力を効率的に使いたいなと思いました」と夫。
広がり感のあるLDK(写真撮影/出合コウスケ)
妻も「最初はガスのパワーも魅力的だし、電気と両方使えるようにしようかと考えていました。でも、太陽光発電システムを導入してはどうかとのご提案をいただき、オール電化にして日々の光熱費を抑えるというのも魅力的だなと思ったんです」
Fさんが暮らす北摂エリアでは2018年に大規模な地震があり、ライフラインが一時停止した地区もあった。大雨や竜巻など思いもよらない災害が、いつどこで起こってもおかしくない昨今、そうしたことも性能の高い住まいを考える背景にあったのだろうか。
「私たちが住んでいた団地の被害はほぼなかったのですが、太陽光発電や蓄電池の提案を受けて、省エネや災害対策など将来的なことを見据えることの大切さは考えさせられました。後から手を加えられる内装にコストをかけることよりも、最初の段階でしっかりと考えておかなくてはいけない住まいの基本的な機能や性能にコストをかけるほうが、将来的に有意義だと感じました」
太陽光発電装置を搭載したF邸(写真撮影/出合コウスケ)
こうした経緯から、Fさんは断熱等性能等級6が標準仕様なうえに、さらに太陽光発電と蓄電池を搭載した省エネ効果の高い住宅を建てることになったという。
駐車スペースに設置したV2H蓄電システム。昼間に太陽光発電でつくった電気を電気自動車の大型バッテリーに貯め、夜間には住まいで使用。効率的にエネルギーを活用でき、電気代も節約できる(写真撮影/出合コウスケ)
導入に際しての懸念点は初期費用の問題だったが、国や行政の補助金が使えるケースもある。
「太陽光発電装置や蓄電池の設置には少し初期投資がかかりますが、省エネ性能の高い住まいには補助金制度がいくつかあります。我が家は国のこどもエコ住まい支援事業(※)の補助金と行政のエコハウス補助金を利用しています。太陽光発電装置をつけたおかげで、光熱費は大体1ヶ月に3000~4000円程度です。自家消費が中心で、たまに買電もしますが、9000円くらいの売電収入がある月もあって、かなりの節約になっていますね」
太陽光発電装置や蓄電池は設置後のメンテナンスが必要になるというが、15年の保証期間もあり、安心して設置することができたという。
※受付を終了しており、現在は「子育てエコホーム支援事業」が申請を受け付け中
キッチンとリビングの窓際の温度差はほとんどナシ
キッチンのグレードを上げたり、洗面台を大きいサイズにしたりと、標準仕様にプラスαしたい箇所がいくつかあったそうだが、それよりも住宅そのものの性能にコストをかけたほうがいいんじゃないかと考え方を変えたFさん夫妻。
「標準仕様でも十分な設備が備わっていましたし、使い勝手に全く問題ありません。シンプルなもののほうがお掃除やお手入れもラクでいいですね。それよりも、朝起きた時に寒さを感じなかったり、キッチンにいても、リビングにいても、寝室にいても、ほとんど温度差を感じることなく過ごせる快適さにとても驚いています」
キッチンの床下にある第1種換気装置。給気と排気の両方を機械ファンで行い、空気環境を確実にコントロール(写真撮影/出合コウスケ)
当初は平屋を建てたいと考えていたそうで、F邸の間取りはとてもオリジナリティーが高く独創的だ。
「ずっと団地住まいでワンフロアで完結する生活でしたから、2階って必要かな?という思いがあったんです。なので、できれば平屋に住みたいなと思っていたのですが、本が大好きでたくさんの蔵書をどう収納するかが課題でした。そこで提案いただいたのが、ロフトと2階の納戸です。階段を2つ設けるという斬新なアイデアで、平屋のように1階で完結する暮らし+開放感のある吹き抜け、そしてたっぷりの収納スペースを設けた住まいを実現できました」
「機密性がとても高いので、鍵が閉まっているのかと思うくらい玄関ドアが重く感じる時があります」とFさん(写真撮影/出合コウスケ)
「普段はリビングのドアを開けっぱなしで生活していますが、冬も寒さを感じることなく、住まい全体がほぼ一定の温度に保たれています。玄関のスペースを挟んで寝室がありますが、冬でも朝起きた時に寒さを感じなくて、毎日快適な目覚めです。実家が木造の一戸建てなのですが、朝はとても寒くって、服をたくさん着込まないといけなかったのですが、この家は一年中薄着で過ごせます。温度・湿度計をキッチンとリビングのテレビボードに置いているのですが、ほとんど温度差はありません。リビングの大きな窓はLow-E複層ガラスで高性能な樹脂窓になっています。窓辺はとても日当たりが良いのですが、暑くなってきた最近でも奥のキッチンと1℃くらいの変化しかないのがすごいですよね」(妻)
「妻は暑いのが苦手で、私は寒いのが苦手。お互いに快適に過ごせる寝室環境なのがありがたいですね。調湿効果も高くて湿度も大体50~60%くらいを保っています。今日は雨上がりで68%ありますけどね。団地住まいの時は結露がすごかったので、エコカラットや珪藻土の使用も検討していたのですが、全く必要なかったです。これも高性能な断熱材と考え抜かれた設計仕様との相乗効果がもたらしてくれた結果だと思います」(夫)
気密性と断熱性、そして換気は切っても切れない関係性。すべての要素がしっかりと計算された住まいだからこそ、快適な環境が実現できている。
固定概念にとらわれない斬新なエアコンの設置場所
F邸のエアコンの取り付け位置には驚かされた。リビングの階段下のデッドスペースを活用し、とても低い位置に設置されている。この位置でも問題なく吹き抜けのある広い空間を快適な環境に保てるのだろうか。とても気になったので伺ってみた。
開放感のある大きな吹き抜けがあり、大きな窓を設けた日当たりの良いF邸だが、写真左にあるエアコン1台で室内の温度はほぼ均一に保たれているそう(写真撮影/出合コウスケ)
「これはね、吹き抜けの高い位置に設置するとお手入れが大変でしょ?なので、お手入れしやすい位置に設置できないかと、設計士さんに相談したんです。そしたら、メーカーさんにも確認していただいて、我が家の場合は低い位置でも問題なく空気を効率的に循環させることができるという回答があったそうで、この位置に設置することになりました。いつでもさっと拭き掃除ができる位置に取り付けることができて助かりました。デザインもおしゃれでとても気に入っているんです」
低い位置にあるからこそ、敢えてパネルはメタリックなカラーを選択したそう。F邸のモダンでスタイリッシュな空間にも自然に溶け込んでいる。
外出先からスマホアプリで家電操作できるスマートハウス
キッチンに設置されたデジタルモニタも気になったポイント。太陽光発電と蓄電池の発電量や電気の使用量が一目でわかるものだそう。スマホのアプリと連動で外出先からでも住まいの状況が見られる。また、F邸はloTを活用したスマートハウスなので、お風呂を沸かしたり、エアコンのタイマーを入れたりといった操作もスマホからできる。
「発電効果がパッとみてわかるのが楽しくって、毎日パネルをチェックしちゃいますね。スマホと連動したアプリも使いやすくって、外出先からエアコンを操作したり、お風呂の給湯スイッチを入れたりできるのは、本当に助かっています。家族でお出掛けして疲れて家に帰ってきても、さっとお風呂に入れたり、家の中が快適な温度になっていると、疲れも吹き飛びますよ」
発電状況や電気の使用量などを確認できる太陽光発電モニタを操作する Fさん(写真撮影/出合コウスケ)
「家を建てる前に太陽光発電の効果のシミュレーションや、断熱性能のデータなども見て、とてもいいなと感じましたが、実際の快適さをイメージするのはなかなか難しい部分もありました。でも、完成した家に住んでみて、これほど快適なのか!とびっくりしています。住宅性能にコストをかける選択をして本当に良かったと思っています」
近年、エネルギー価格は上昇傾向にあること、地球規模の異常気象に対し脱炭素社会の実現が求められていることなどから、その使用を抑える必要性が高まっている。F邸のように太陽光発電と両方を備えた住まいなら、初期コストは多少かかっても、長い目で見れば、光熱費削減効果は大きく、停電などの場合の心強さもメリットとしては大きいといえるだろう。
●取材協力
ユーロプランニング
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