アリアナ・グランデ、『マイ・エヴリシング』10周年を記念して全12曲を米ビルボードがランクづけ
「“ユアーズ・トゥルーリー”の延長線上にあるようなサウンドにはしたくなかったんです」と、アリアナ・グランデは、全米1位に輝いた2013年のデビュー・アルバムに続く新作『マイ・エヴリシング』について、米ローリング・ストーンに当時語っていた。「進化を感じられる内容にしたいし、もっと多様なサウンドを探求して、少し実験もしたいんです」。彼女が、新作でこの目標を見事に達成したと言っても過言ではないだろう。
実際、前作が巧みなボーカリストのマライア・キャリー、故ホイットニー・ヒューストン、クリスティーナ・アギレラなどの洗練されたバラードや味わい深いR&Bに根ざしていた一方で、『マイ・エヴリシング』では、痺れるようなEDMからホーンを多用したヒップホップまで幅広いジャンルに挑戦し、ラッパーのチャイルディッシュ・ガンビーノやプロデューサーのマックス・マーティン、ワン・ダイレクションのハリー・スタイルズなど、人気アーティストを多数招いた作品となった。
次世代の大物ポップスターになるというグランデの目標は見事に達成された。『マイ・エヴリシング』は初週に169,000枚という驚異的な売り上げを記録し、米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”でトップに立った。これまでに6枚のアルバムを1位に送り込んだ彼女にとって、これは2作目の快挙となった。米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”でトップ20入りしたシングルを4曲輩出し、【グラミー賞】では<最優秀ポップ・ボーカル・アルバム>にノミネートされた。さらに、かつて米ニコロデオンのドラマ『ビクトリアス』や『サム&キャット』で清純派の子役として名を馳せた彼女が、そのイメージから完全に脱却した瞬間でもあった。
米ビルボードは、『マイ・エヴリシング』の発売10周年を記念して、デラックス版に収録されたニッキー・ミナージュとジェシー・Jのコラボ「Bang Bang」を除いた、オリジナル版の12曲をランクづけした。
12. 「Intro」
アルバムの短く甘美なオープニングで、グランデは「あなたに私のすべてを捧げ、何も惜しみません、約束します」と囁く。彼女の意中の男性への愛の宣言なのか、それとも彼女がこれから続く11曲に心と魂を注ぎ込んだというファンへの約束なのか、どちらとも取れる。どちらにせよ、3度の【グラミー賞】に輝くことになるヴィクトリア・モネと共作したこの80秒の楽曲は、リスナーをアルバムの世界へ見事に誘う。もしこの曲の天に舞うようなシンセ・サウンドやキラキラとしたR&Bビートが完全なる楽曲として仕上がっていれば、「Intro」はこのランキングでもっと上位にランクインしたことだろう。
11. 「My Everything」
グランデは、録音中に泣いてしまったとされるこの曲をアルバム・タイトルに選んだ。失恋中のリスナーも、この曲を聴いたら涙を流さずにはいられないかもしれない。彼女は後悔に満ちたバラードの中で、自分の感情を余すことなく表現し、「愛の代償が痛みである」といった哲学的な一面も見せながら、「失って初めてその価値に気づく」という古い格言を認めている。アルバムの最後を感動的に締めくくるこの曲だが、それまでの収録曲のような音楽的な刺激は欠けていると言わざるを得ない。
10. 「Just a Little Bit of Your Heart」
ザ・ウォンテッドのネイサン・サイクスとコラボしたグランデは、次に2010年代初頭に活躍したイギリスのボーイズ・グループ、ワン・ダイレクションのメンバーで、後に彼女と共にポップ界の頂点に立つことになる人物とタッグを組むことにした。ハリー・スタイルズが共作した「Just A Little Bit of Your Heart」は、彼がワン・ダイレクション以外で初めてソングライターとして参加した作品となった。しかし、このありきたりなピアノ・バラードは、後に【グラミー賞】を受賞し、チャートを席巻する彼のソロ・アーティストとしての成功を予感させるものではなかった。それでも、グランデは、6マイル先のガラスをも砕きそうな勢いの力強いボーカルで曲にドラマチックさを注入しようと試みている。
9. 「Hands on Me feat. A$AP Ferg」
アルバムの最後から2番目に収録されている「Hands on Me」は、2000年代初頭のほぼすべてのR&Bレコードに名を刻んだダークチャイルドがプロデュースした。「Hands on Me」は、デスティニーズ・チャイルドの「Say My Name」やブランディ&モニカの「The Boy Is Mine」といった名曲には及ばず、軽快なビート、繰り返すコーラス、ゲスト・ラッパーなど、基本的に『マイ・エヴリシング』のリード・シングルの焼き直しとなっている。それでもこの曲は、ニコロデオン時代のイメージから脱却を試みるグランデに再びそのチャンスを与えている。魅惑的な口説き文句を何度か口にするグランデに対し、エイサップ・ファーグが、オール・ダーティー・バスタードが可愛く聞こえるほど欲情したライム(「Got me sweating so much we can swim on da dancefloor(ダンスフロアで泳げるくらい汗をかいた)」)を披露している。
8. 「Be My Baby feat. Cashmere Cat」
残念ながら、この曲はザ・ロネッツの名曲カバーやヴァネッサ・パラディにインスパイアされたモータウン風のナンバーではない。むしろグランデが幼少期に聞いていたであろう軽快なR&Bへの回帰だ。この曲には、アシャンティやエイメリーなど、2000年代初頭に一世風靡した苗字がないディーバたちの影響が色濃く見られる。スリンキーなベッドルーム・ジャムで、グランデは再び約束を交わすかのような言葉を投げかけている(「私と本音で付き合えば、正直になれば/欲しいものは何でも手に入る」)。堅実な収録曲だが、グランデとプロデューサーのカシミア・キャットが最高の相性を見せたのは、後者による2015年のシングル「Adore」だろう。
7. 「Why Try」
ベニー・ブランコとライアン・テダーという2010年代最大のヒットメーカーによって共作された「Why Try」は、当然シングルとしてリリースされると思われた。しかし、ワンリパブリックのフロントマンであるテダーは、再びビヨンセの「Halo」やケリー・クラークソンの「Already Gone」と同じような大げさなアレンジを施すなど、名ソングライターが関わっているにもかかわらず、実際には期待を裏切る形となった。それでもグランデはこの恋がれたパワー・バラードを力いっぱいに歌い上げ、その声を極限まで押し上げている。それもコーラスの「今、私たちは、どっちの声が大きいか確かめるために叫んでいる」という部分でだ。
6. 「Best Mistake feat. Big Sean」
『マイ・エヴリシング』のリード・シングル「Problem」においてビッグ・ショーンの貢献は、まるでASMRのような甘い囁き声のバックグラウンド・ボーカルにとどまった。実際、彼は正式にクレジットすらされていない。しかし、彼はグランデのデビュー作と2ndアルバムを繋ぐ架け橋となる「Best Mistake」でその存在感を示した。2人の関係が仕事仲間から恋人に進展したという噂を裏付けるかのように、ビッグ・ショーンは、ロマンチックな(「まるで家系図のように、俺たちが広がっていく夢を見た」)からばかばかしいもの(「どうすれば新鮮な気持ちでい続けられるか、それをどうやって保てるか」)まで、復縁を懇願するさまざまなフレーズを連発する。グランデがそれに対し、「うん」と受け入れているように聞こえるのは、彼の魅力的なアプローチが功を奏したからだろう。
5. 「Break Your Heart Right Back feat. Childish Gambino」
不貞行為をしたパートナーを憎む典型的なアンセムとは異なり、この曲では、グランデのボーイフレンドが(なんと!)別の男性と浮気していたことが発覚した瞬間が描かれている。チャイルディッシュ・ガンビーノがアルバムの人気ヒップホップ・アーティストのラインナップに加わり、復讐するためのリバウンド相手として立候補している。「あいつがやったことはヒドイけど、奴がすぐに君の元に戻ってくる方法を知ってる……」という提案は、グランデもどうやら拒否できなかったようだ。ダイアナ・ロスの「I’m Coming Out」をサンプリングした部分は少々ベタかもしれないが、恋人の裏切りというテーマにひねりを加えたこの曲は、アルバムの非シングル曲としては最高傑作だ。
4. 「Break Free feat. Zedd」
多くのR&Bアーティストが、2010年代初頭のEDMブームに抗えなかったように、グランデもその波に乗った。しかし、他のR&Bアーティスト仲間とは異なり、グランデはこの波から自身の評判を傷つけることなく見事に生還した。実際、「Break Free」は、【ユーロビジョン】のヒット曲とグロリア・ゲイナーの自己肯定感を高める名曲「I Will Survive」の中間に位置するような、当時最も成功したクロスオーバーのひとつとなった。グランデが、『バーバレラ』風のヒロインに扮し、怪しげな宇宙人やロボットを倒す、ばかばかしいとわかっていながらも楽しいミュージック・ビデオは、その芸術的なキャンプさをさらに強調している。ゼッドに合流した直後、「今はただ踊りたいだけ」とグランデは宣言しているが、その思いはリスナーも同じだろう。
3. 「Problem feat. Iggy Azalea」
グランデのキャリアを一変させた楽曲であり、彼女が元ニコロデオン・スターから本格的なポップ・スーパースターへと転身を遂げるのに一役買った。かつてキャット・バレンタインとして知られていた彼女は、この魅力的な別れの曲をアルバムから外すところだったが、最終的には「自分は何を考えていたんだろう?」と賢明に思い直した。ジェイソン・デルーロの「Trumpets」やフィフス・ハーモニーの「Worth It」など、当時トレンドだったブラス・サウンドを用いた、サックスの音色が効いた自立した女性の賛歌は、グランデに自身初のHot 100首位をもたらすところだったが、フィーチャリングに迎えたイギー・アゼリアによる別のヒット曲「Fancy」によって阻まれた。イギーの軽妙なリリック、ビッグ・ショーンの隠れた貢献、そしてジェイ・Zの楽曲への明らかなリファレンスが、マックス・マーティンのポップ・センスと完璧に調和している。
2. 「Love Me Harder feat. The Weeknd」
2014年当時、子供向けテレビ・ドラマの元スターと、薬物をテーマにしたR&Bミックステープで知られていた男性が、ポップ界のドリーム・チームになるとは誰も思わなかった。しかし、グランデとザ・ウィークエンドの異なる世界は、奇跡的にそして見事に融合された。マックス・マーティンを迎えてチャートを席巻する1年前に、ポップ界に足を踏み入れたザ・ウィークエンドは、賢明にいかがわしさを抑えながらも、依然として遊び人的な魅力を発揮している。一方、グランデはこれで親しみやすい女の子のイメージを完全に払拭し、ベッドルームでの要求について繰り返し歌い上げた。もしザ・ウィークエンドが「Love Me Harder」をスタート地点にしていたなら、米HBOのドラマ『THE IDOL/ジ・アイドル』はあれほど惨事にはならなかったかもしれない。
1. 「One Last Time」
この『マイ・エヴリシング』の傑出した曲は、マンチェスター・アリーナでのテロ事件の犠牲者を支援するためのチャリティ・シングルとして再リリースされたことにより、さらなる感動を与えることとなった。彼女のキャリアにおいて、なぜこの曲が癒しの象徴となったのかは容易に理解できるだろう。グランデの最も控えめながらも感情的に響くボーカル・パフォーマンスとなっているからだ。デヴィッド・ゲッタという、繊細なサウンドとはややかけ離れたEDMの大御所が参加しているにもかかわらず、その愛の訴えには美しい哀愁が漂っている。きらめくシンセ・サウンドとアクロバティックなパーカッションが陶酔的なクレッシェンドへと高まるにつれて、希望の光も感じられる。これこそが、グランデのキャリアの中で最も魅惑的な瞬間であり続けている。
Text: Jon O’Brien
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