<ライブレポート>藤井 風、“Feelin’ Good”な気持ちが世界を変えると証明した幸福感満載の日産スタジアム公演2日目

<ライブレポート>藤井 風、“Feelin’ Good”な気持ちが世界を変えると証明した幸福感満載の日産スタジアム公演2日目

 藤井 風が8月24日、25日に神奈川・日産スタジアムにてワンマンライブ【Fujii Kaze Stadium Live “Feelin’ Good” [Nissan Stadium]】を行った。2日間で14万人を動員し、24日に行われたYouTubeでの生配信では同時接続282,000人を記録するなど大盛況となった今回のスタジアムライブ。本稿では25日の模様をレポートする。

 1年半ぶりのスタジアムライブは、藤井 風というアーティストの魅力をさまざまな角度から余さず見せるようなステージだった。類まれなるミュージシャンシップ、気取らず自然体の佇まい、エンターテイナーとしての存在感とスター性、そして何より音楽そのものが持つ大きな包容力。そういうものを7万人が体感するような場だった。目を見張るような演出もたくさんあった。

 まず驚いたのは登場だ。なんの予告もなく、スタンド席の通路にふらっと現れ、お客さんの隣の席に座って笑顔を見せる。その姿がビジョンに映し出され、どよめきと歓声が巻き起こる。そこから階段を降り、観客の至近距離を歩いて、アリーナ中央の芝生に置かれたグランドピアノへ。オーディエンスに見守られて「Summer Grace(原曲:grace)」の息を呑むようなピアノ演奏を披露し、芝生の上に寝転がる。3年前に同じ日産スタジアムで行われた無観客ライブ【Fujii Kaze “Free” Live 2021 at NISSAN stadium】を思い起こさせるようなオープニングだ。それにしても、ここまで距離の近いスタジアムライブの登場風景、他に見たことがない。

 ステージセットも豪華でユニークなものだった。舞台には草木が生い茂り、下手に丘があってそこにバンドメンバーが立つ。中央には階段と橋、上手にガレージ倉庫のような木造の小屋があり、その奥からダンサーたちが登場する。荒野や田舎の風景を思わせるような舞台だ。背後には巨大なビジョンがそびえたち、時間の経過と共に昼から夜へと移り変わっていく都会の空の光景を映し出す。

 ステージに移動した藤井はダンサーと共に「Feelin’ Go(o)d」を披露し、リラックスしたムードで「花」を歌うと、「マジで“Feelin’ Good”で楽しんで帰ってください。どこにおっても見てます。どこにおっても感じてます」と観客に語りかける。「これは僕のコンサートではありません。これはみんなのコンサートです」と、ハミングのメロディーを歌うよう促す。スタジアムに7万人の歌声が響くと、それにあわせたピアノのイントロから「ガーデン」をプレイした。

 「みんなが抱えているモヤモヤした気持ちとかネガティブな感情を全部日産スタジアムの空に飛ばしてほしい」と語り、「特にない」は観客の手拍子やスナップと共に歌う。「さよならべいべ」では、自らヘッドセットマイクをつけ、セットにあった自転車に乗ってステージを降りる。アリーナの外周をぐるりと自転車を漕いで回りながら歌う模様がビジョンに映し出される。序盤に印象的だったのは、ステージと客席の距離がとても近く、隔てるものが何もないように感じられるような演出の数々。スタジアムライブとは思えないほどのアットホームでリラックスしたムードで、会場を一つにするようなパフォーマンスだった。

 インタールードを経て、紺色シャツとワイドパンツに衣装をチェンジした藤井 風が再びステージに登場する。そこからの流れで見せてくれたのは藤井 風のエンターテイナーとしての圧倒的な存在感だった。ヘッドセットマイクをつけ、ダンサーたちと一糸乱れぬ切れ味のあるダンスを披露しながら「きらり」を歌う。続く「キリがないから」のパフォーマンスも、夕陽をバックにステージから炎が噴き上がりショルダーキーボードを抱えて歌った「燃えよ」も、藤井 風のあふれるスター性を感じさせる。

 続けては、階段をのぼって小屋の屋根の上にそなえつけられたグランドピアノの前に座り、「デビュー前と何も変わらない気持ちで、一生懸命歌わせていただきます」と「風よ」を弾き語る。デビューしてからバンドでは一度もやっていなかった曲とのことだ。先程までの派手にショーアップされたパフォーマンスとは一転、ピアノと共に胸に響く歌声を響かせる。藤井 風の原点にある魅力を見せる展開だ。次もバンドでは初の披露だという「ロンリーラプソディ」。心地よい空気が広がるなか、曲中では「みんな一緒に息しよう、いいことだけ吸って、いらんもん全部吐き出して」と話す。

 さらには湘南乃風の「恋時雨」をピアノ弾き語りでカバーし、続けて「死ぬのがいいわ」を歌い上げる。真っ赤なライトに照らされ、ステージ中央に座り込んでまっすぐ前を見据えながら力強く歌ったこの曲は、この日のステージでもひとつのクライマックスとなっていた。

 ダンサーたちのパフォーマンスをフィーチャーしたインタールードを挟んで、再び衣装をチェンジしてスーツを身にまとった藤井 風は、サックスを吹きながらステージに登場する。「Workin’ Hard」をヘヴィなビートに乗せて歌い上げると、グルーヴィーなギターカッティングから「damn」へ。この日のライブではさまざまな楽曲に音源とは違うオリジナルのアレンジが施されていたのだが、特に強く印象に残ったのは続く「旅路」だった。この曲は疾走感あふれる8ビートのパンクロックへと大胆にモデルチェンジ。TAIKING(Gt)がアグレッシヴなギターサウンドを鳴らし、衝動に満ちたエモーションを生み出していた。

 優しい歌声が響きスマホライトがスタジアムに煌めいた「満ちてゆく」、ダンサーたちと肩を組んで揺れながら軽やかに歌った「青春病」を経て、ライブはいよいよ終盤。「最後にステージを共にしている仲間を紹介させてください」とバンドメンバーとダンサーたちを一人ひとり紹介して歌った「何なんw」では大合唱が巻き起こり、会場はあたたかい幸福感に包まれる。歌い終え、大きな拍手を受けた藤井は「全ては心からスタートするから。あんたがFeelin’ Goodな気持ちでいてくれることは、あんたの周りの全ての世界を変えてくれると思うので。これからも力を合わせてポジティブに頑張っていきましょう」と語った。

 そして「次の曲やらんとさ、ワシらの夏、終わらんくね?」と告げ、ラストは「まつり」。ダンサーたち、そしてオーディエンスが両手を揺らして楽しそうに踊り、高揚感あふれるハッピーでチアフルなムードにスタジアムが包まれる。最後にはド派手な花火が打ち上がり、歌い終えた藤井 風はもう一度自転車に乗ってアリーナ外周をぐるりと一周。すべての演奏を終えると、深々と頭を下げ、去っていった。

 お客さんはみなきっと幸福な余韻と共に帰途に着いただろう。約2時間のステージにはスペシャルな瞬間がたくさんあったが、それらの全てが「Feelin’ Good」というシンプルで強いメッセージ性へと結びついていたのも、とても印象的だった。

 なお、本スタジアム公演のセットリストはプレイリストとして配信中だ。

Text by 柴那典
Photos by 上山陽介

◎セットリスト
【Fujii Kaze Stadium Live “Feelin’ Good” [Nissan Stadium]】
1. Summer Grace
2. Feelin’ Go(o)d
3. 花
4. ガーデン
5. 特にない
6. さよならべいべ
7. きらり
8. キリがないから
9. 燃えよ
10. 風よ
12. ロンリーラプソティ
12. 死ぬのがいいわ
13. Workin’ Hard
14. damn
15. 旅路
16. 満ちてゆく
17. 青春病
18. 何なんw
19. まつり

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