『名前のない仕事』刊行 日本で「Youtube文化」を広げた鎌田和樹さん UUUMを立ち上げた先駆者の新刊

『名前のない仕事』刊行 日本で「Youtube文化」を広げた鎌田和樹さん UUUMを立ち上げた先駆者の新刊
視線の「真っすぐさ」が印象的だった。

「タトゥーかっこいいですね」

カメラマンの菊池茂夫さんが鎌田さんを撮影中、表情を崩して尋ねた姿が印象的でした(菊池さんはタトゥー大好きで自らも多数入れている)。異質なものに興味がある人。タトゥーに気付く鎌田さん。その視点の広さは著書『名前のない仕事』(ダイヤモンド社)を読んでいても感じられました。

ネット業界には、あまり足を踏み入れていない僕ですが、「鎌田和樹さん」という名前は耳に入っていました。HIKAKIN氏と共にUUUMを立ち上げた人。それまで「どうやって使いこなせばいいのだろう」と思われていたYoutubeというツールを「こうすれば良いだよ」と示した人。僕にとってはそんなイメージでした。

本書『名前のない仕事』は「鎌田和樹さん」という経営者の自伝です。「Youtube=UUUM=鎌田さん」というネット業界での最先端の人というイメージもさることながら、「極めて人間ぽい人」という読後感を抱きました。

本書にも鮮明に書かれてある光通信時代の話に、まずは目が行きます。19歳から仕事を始めた鎌田さんにとって、光通信での体験は誇らしかったと語ります。

『光通信のことを悪くおっしゃる方もいらっしゃったのでしょうけれど、僕が初めて入った会社ですし、誇りに思っています。ネットで悪く書かれることが嫌だったので、自分でまとめていきたい、と思いました。もともといた会社ですが、他社のことなのでnoteを書く時には事前に光通信にチェックしてもらっていたんです。光通信がNOと言うものは1つもなかったんです。それで、あるとき、光通信の役員と話していたら「noteは面白いから毎週読んでいるよ」って言ってくれまして。最初のほうで、「あの山の向こうまで走ってこい」みたいなくだりがあるんですけど、「その山の向こうまで走ってくるシステム作ったの俺だよ」みたいな人と会ったんです(笑)。だから繰り返し、いい時間をいい会社で僕は過ごさせてもらったことに誇りを持っているんです。

社会人としてのイロハが何もわからなかった。パソコンの電源の点け方もわからなかった僕にとって、光通信なしに今の僕はいないというのがホントに言えることです。UUUMで最初にやったことも、HIKAKINのマネジメントも光通信でやっていた総務業務みたいなことなんですよ。総務というと電球交換でしょとか、テレビドラマの『ショムニ』のイメージとかいろいろありますけど、僕が光通信の総務の時は1万人以上の社員に対して(総務が)5人ぐらいしかいなくて、こんなにやりがいのある仕事を未成年のときからやらせてもらった会社って……。今はそういう体験ってどこの会社もさせてくれないと思うんです。だからすごく良いタイミングで最高の会社に入ったし、僕は英才教育を受けたと思っているから、だから今の僕があると思っています』

前半のクダリでの光通信での体験談は非常に興味深いものでした。僕が新卒で入った会社は、上司が体育会系の権化のような人で「営業は冬でもコートを着るな。お客さんに気合を見せるんだ」的な事を言う人でした(僕はじめは編集部ではなく広告営業部でした)。その人は某大学の応援部だったと称していたのを覚えています。理不尽だとは思いましたが今思えば「アレも経験」と思えるようになっています。自分を重ねて共感するところ然りでした。

光通信を経て鎌田さんはHIKAKIN氏と出会い、UUUMを立ち上げ順風満帆に来ているように感じますが、岐路というものがあるとすればどこだったのでしょうか。

『今回、帯を孫泰蔵さんとHIKAKINに書いてもらったんですけど、このふたりとの出会いっていうのが岐路と言えるかもしれません。上場するタイミングも岐路だったのかもしれません。そして数々の色んなイベントがありましたけど、光通信を辞めてから泰蔵さんから「起業したら?」って言われたことは大きかったですね。でもとりあえず会社を作っただけですから、そこから2年近くがむしゃらに、ニートみたいなことを繰り返しながらですけど、が久々に出会ったHIKAKINがいた訳です。当時はYouTuberじゃなくてYouTubeスターという言葉があって、これが日本にも来るよって2012年ぐらいに言われていました。HIKAKINから「困っていることがあって」「そんなことで困ってるのか、じゃあ僕が手伝ってやる」って話をして、また泰蔵さんに報告しに行きました。「僕はやりたいことがあります。こういう人たちがいるんですけど、こういうふうに会社を作って……」と。

今はUUUMという名前になっていますけど、当時ONSALEという商号変更する前の会社を作りました。「彼らのサポートをしてみたいんです」っていうのを泰蔵さんに話したんですね。泰蔵さんは良いと思うとも悪いと思うとも、ビジネスに対して背中を押すとかはしなかったですけれど、チャレンジすることに対してすごく押してくれました。岐路と言われたら、今の僕があるのはもちろん光通信とUUUMがあったからというのは間違いないし、そのUUUMというものを作るきっかけになってくれた二人の出会いが岐路なのかもしれないですね』

というコメントのように、本書では人との出会いが大事であるというメッセージが込められているように受け取れました。ここも共感するところです。

『この著書につながるところですね。それが仕事なのかと言われたら、まさしく「名前のない仕事」なのかもしれないです。皆さん(記者たち)もこうやって仕事として来て頂くこともあれば、仕事か分からないけれど、夜、誰かとご飯を食べたり、色んなことでつながっていくと思います。僕の仕事の仕方も、それが仕事なのか遊びなのか、何の時間なのかはあまり気にしてないですけれど、色んな人や出来事に出会って、結果そこからUUUMという会社もできましたし。僕のビジネスライフスタイルも全部そこにつながっていると思います。そういう意味では卒業してからもいろんな人とご飯を食べたり、ゴルフさせて頂いたり、いろんな人といろんな場所に行かせてもらったり、やっていることは変わていないんですね。UUUMという会社があったときは、UUUMに寄せていくということをさせてもらって。今は無理しないで、色んなことを待っている感じかもしれないですね』

本書から読み取れる事は、鎌田さんは「お金より面白いか」で動く。そして義理や人情を大切にする人のように思えます。

『利益を追求する事と、世界観を作ったり、新しいものを創造することって似てるようで道中が違ったりしていますよね。それがもしかしたら上場みたいなイベントになると、新しい価値観で世の中を変えて、かつエクイティみたいなものが一瞬交わると思うのですけど、それがずっと横並びで進んで行くかといったら違うと思います。今、僕は儲かるよりも楽しいことや新しいことのほうが惹かれるというか、この歳(40歳)になったけど……。みなさん(各社記者)のほうが年上なので言い方がアレかもしれないですけど、僕でもまだ新しいことを学べるっていうのはすごくうれしいことだし、なるべくそういうところに身を置きたいと思ってるので。そういうことがあればチャレンジしたいかもしれないですね。

色んな「名前のない仕事」があると思うのですけど、何か職業を言われたら「それってこういうことやるんでしょ?」みたいなことが連想されていくのかも知れなくて、もちろんそれが楽しいと思うこともあるかも知れないですけど、YouTuberとかUUUMとかは全く何もないところから始めたので、そういう意味ではまだないものなのか。あるかもしれないけどまったく新しいやり方なのかビジネスの仕方なのか。そういうのにチャレンジしてみたい気持ちのほうが強いんでしょうね』

本書『名前のない仕事』とはそのタイトルが意味するように、「やっていた事に名前がついてきた」のだと感じました。

因みに経営者というものは「人間力」が問われる仕事だと、月刊『選択』在籍時代に口を酸っぱくして言われたのを思い出しました。当時の上司(オーナー)が「経営書とは人を書いているんだ」と言っていました。鎌田さんの人柄に触れる事は数十分でしたが、質問者へ向ける視線の真っすぐさと、時折見せる笑顔が印象的な「迫力ある経営者」というイメージでした。『名前のない仕事』は、経営書という側面だけでなく、「鎌田和樹」という人を知る読み物としても非常に興味深くい作品になっていました。(文@久田将義 写真@菊池茂夫)

 

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